eぶらあぼ 2015.11月号
206/223

273野間バレエ団 山本隆之版『くるみ割り人形』期待の若手とベテランがつくり出す新しいファンタジー文:上野房子びわ湖ホール/ル・ヴォルカン国立舞台/ダムタイプオフィス共同制作『STLL|高谷史郎』日本初演フランス初演を経てさらなる高みへ文:高橋森彦11/1(日)17:00 ソフィア・堺ホール問 野間バレエ団072-255-7880 http://www.noma-ballet.com2016.1/23(土)、1/24(日)各日14:00 びわ湖ホール(中)問 びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp 関西圏には、ピリリとスパイスの効いた公演を企画するバレエ団が少なくない。大阪府堺市の野間バレエ団もその一つ。1991年の創団以来、同地にバレエを根付かせるべく、初心者向けの公演から意欲的な創作バレエまで、種々の公演を実施してきた、地元愛溢れるバレエ団なのだ。 今季のハイライトとして上演するのは、年末の風物詩である『くるみ割り人形』。クリスマスの夜に少女クララが見る夢を描いたファンタジックな古典作品である。 演出・振付は、新国立劇場の開場以来のメンバーにして、野間バレエ団の常連ゲストでもある山本隆之。彼が全幕作品を手がけるのは初めてだが、数々の作品に主演し、最近は悪役や老け役など、ますます多彩な役柄を持ち役にする熟達者とあって、その経験値がどう反映されるのか、興味深い。 女性主役である金平糖の精を演じるのは、団長の野間康子と共に同団を牽 1984年に結成され、関西から世界へと飛翔したアーティスト・グループ「ダムタイプ」。その創設メンバーで、映像、照明、グラフィック・デザイン、舞台装置デザイン等を手がける高谷史郎の新作『STLL』が、2016年1月、びわ湖ホールにお目見えする。 高谷はインスタレーションを数多く発表し、著名アーティストとの協同作業を重ねるなど国際的に活躍中だ。近年はパフォーマンス作品に力を入れており、08年にドイツで世界初演された『明るい部屋』はスペインとフランス、日本ではびわ湖ホール、新国立劇場でも上演され、大きな反響を呼んだ。同作は、パフォーマーの身体と映像や音楽、照明、美術が緻密に結びついて未だ見たことのないような異空間を創造し、観る者の視聴覚をフルに刺激した。 本プロダクションは、15年2月の2週間びわ湖ホールにて実験・試演。5月引している野間景。美しいスタイルを活かして、可憐な少女から姫君まで、多様な役を踊ってきたバレリーナである。 クララ役の荒瀬結記子は、カンヌの名門ロゼラ・ハイタワー・バレエスクールに留学、神戸や大阪などのコンクールで上位入賞を果たした、期待の若手だ。のフランスでの世界初演、10月のブリュッセル(ベルギー)での再演を経て、日本初演となる。世界初演を成功裏に終えたが、ベルギーと日本での上演に向けて練り上げ、ブラッシュアップを図るという。音楽に坂本龍一が参加、女優の鶴田真由が出演するのも話題だ。 圧倒的で密度の濃いセノグラフィー(舞台美術や空間構成)と、それに負けない強度を備えたパフォーマンス。豊かな構想力と高い練度に裏打ちされた唯一無二の「高谷ワールド」を体感したい。 男性の主要パートを務めるのは、主に関西圏から参集するゲストの面々。王子役には爽やかな貴公子ダンサー、碓氷悠太を起用、クララをお菓子の国に誘う紳士ドロッセルマイヤーを山本が自ら演じるほか、後藤晴雄、恵谷彰、末原雅広等の実力派が脇を固める。野間 景Photo:Yoko Takatani山本隆之碓氷悠太

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です