eぶらあぼ 2015.11月号
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180CDCDCDCD祈りのとき/藤井一男ハイドン:チェロ協奏曲第2番&ブルッフ:コル・ニドライ/水野由紀越天楽~日本のピアノ曲、信時潔の系譜/花岡千春シューマン:リーダークライス、女の愛と生涯/レシュマン&内田光子アメージング・グレイス/ヴァヴィロフ:カッチーニのアヴェ・マリア/ラフマニノフ:ヴォカリーズ/ショパン:ノクターン第2番・第21番/菅野よう子:花は咲く/J. S.バッハ:主よ人の望みの喜びよ 他藤井一男(クラリネット)藤井裕子(ピアノ)ハイドン:チェロ協奏曲第2番/ブルッフ:コル・ニドライ/カザルス:鳥の歌/ヴァヴィロフ:カッチーニのアヴェ・マリア/ピアソラ:アヴェ・マリア 他水野由紀(チェロ)飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団須関裕子(ピアノ)呉泰次郎:七つの前奏曲集/長與惠美子:琴・笛・をどり/信時潔:Vivace assai、Variationen(越天楽)/高田三郎:前奏曲集より/柏木俊夫:「芭蕉の奥の細道による気紛れなパラフレーズ」より/大中恩:「おなかのへるうた」による変奏曲花岡千春(ピアノ)シューマン:リーダークライス、女の愛と生涯ベルク:初期の7つの歌ドロテア・レシュマン(ソプラノ)内田光子(ピアノ)コジマ録音ALCD-3104 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCL-00566 ¥3000+税ベルウッド・レコードBZCS-3085  ¥2870+税収録:2015.5/2,5/5、ロンドン(ライヴ)ユニバーサル・ミュージックUCCD-1423 ¥2600+税ニューヨークに学び、第一線奏者として活躍の一方、後進の指導にも力を注ぐ藤井。先鋭的な活動を続けてきた彼が、東日本大震災をきっかけに「何ができるか」を熟考した末にたどり着いたのは「心癒される曲を、自分なりに」との結論だった。そして、「技術的に難しくないからこそ、自分の魂が込められる」と語る、ジャンルを超えた古今東西の16の名旋律をセレクト。娘でピアニストの裕子と共に、録音へ臨んだ。例えば、冒頭の「アメージング・グレイス」。クラリネットの深い音色に魂を掴まれたかと思うと、やがてピアノの音色がそっと寄り添い、大きな安らぎがもたらされる。(笹田和人)新鋭チェリストの水野由紀が早くも4枚目の新譜を発表した。飯森範親が指揮する日本センチュリー交響楽団との共演で、持ち前の端正で洗練された音楽性をオーケストラとの共演でも遺憾なく発揮している。ハイドンの軽妙さと様式美、ブルッフの哀愁感、カザルスの祈りを整然と弾き分けているのもみごとだ。アルバム後半は若き名手・須関裕子(ピアノ)とのデュオ。ヴァヴィロフとピアソラと続く終盤の2つのアヴェ・マリアは音質の良さもあり、音色のふくよかさと旋律の伸びやかさを、まるで生演奏を聴くように楽しめる。水野の近年の充実した演奏活動が窺える1枚だ。(渡辺謙太郎)「海ゆかば」の作曲者としても著名な信時潔は、芸大作曲科の創設にたずさわり、多くの優れた弟子を育てた。このアルバムは小品を連ねることで、信時の作風とその系譜をよくとらえている。信時の最初期のピアノ曲や越天楽に基づく変奏曲は正攻法のがっちりとしたスタイルを持ち、西洋音楽の伝統と日本的感性を高いレベルで融合している。門下からは高田三郎や大中恩といったメロディアスな作風で人気の作曲家が巣立っているが、いたずらにモダニズムに染まらないその姿勢は教育現場でも貫かれたのであろう。楽譜に誠実に向かった花岡千春の演奏は、彼らのまっすぐな作風への共感を伝えている。 (江藤光紀)これぞリート芸術の真髄、と言えよう。2人の名手が対峙したシューマンとベルクの佳品。彼女たちの女性としての独特の感性が息づく「女の愛と生涯」をはじめ、言葉と音楽との間に穿たれた緊密なる関係が、余すところなく表現されている。しかも、ここでの内田のピアノは決して“伴奏”ではなく、しかも、ただ美しいだけに留まらず、レシュマンの操る歌詞と共に、饒舌に感情を吐露し、情景を描いてゆく。例えば、「リーダークライス」の第8曲「異郷にて」の終結部、「彼女が世を去って久しいのに…」という言葉に続いて、内田が奏でるコード。明らかに「死」を物語っている。(寺西 肇)

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