eぶらあぼ 2015.11月号
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178SACDCDCDCDR.シュトラウス:交響詩チクルス1英雄の生涯&ドン・ファン/ヤルヴィ&N響メシアン:幼子イエスに注ぐ20のまなざし/岡本麻まこ子ジョスカン・デ・プレ:ミサ曲全集 第5集「デ・ベアータ・ヴィルジネ」/ヴォーカル・アンサンブル カペラ西川竜太の啓く現代合唱の世界/西川竜太R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、交響詩「ドン・ファン」パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)篠崎史紀(ヴァイオリン・ソロ)NHK交響楽団メシアン:幼子イエスに注ぐ20のまなざし岡本麻子(ピアノ)ジョスカン・デ・プレ:ミサ「デ・ベアータ・ヴィルジネ」(聖なる乙女のミサ)、ミサ「アヴェ・マリス・ステラ」(めでたし海の星)ヴォーカル・アンサンブル カペラ横島浩:Belle de jour 昼顔/神長貞行:DIGITAL BOX 2/福士則夫:霧とカムイ/山本裕之:失われたテキストを求めてⅠ/湯浅譲二:混声のためのプロジェクション 他西川竜太(指揮) 女声合唱団 暁男声合唱団クール・ゼフィール混声合唱団 空(くう) 他収録:2015.2/18,2/19、サントリーホール(ライヴ)ソニーミュージックSICC-19003 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7792-3(2枚組) ¥4500+税収録:2012.4、北の大地美術館レグルスCo., LtdRGCD-1037 ¥2500+税収録:2015.2/15、浜離宮朝日ホール(ライヴ)カメラータ・トウキョウCMCD-28326 ¥2800+税「N響はまさにシュトラウスに相応しい」と語るパーヴォ・ヤルヴィと同オーケストラによるR.シュトラウス・チクルス第1弾、まさに“快演”と呼ぶしかない。「ドン・ファン」では徹底して引き締まりスポーティな疾駆を見せるオーケストラの音響自体がまず驚異的で、かつてN響からこのような音を引き出した指揮者がいたかどうか。「英雄の生涯」では、“肥大した自我の表出”というこの楽曲のナルシスティックな側面は希薄だが、それに代わって、この複雑な楽曲のあらゆる細部に血を通わせて再現した、これまた稀有な演奏。あくまで機能主義的な演奏だが、ここまでやられては、ぐ・・うの音も出まい。(藤原 聡)数多くの国際コンクールで入賞を果たし、2007年のメシアン国際コンクールでは第3位を受賞している岡本麻子が、メシアンの音楽語法、彼のカトリック信仰の集大成と言える「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」を全曲収録した。彼女はメシアン国際コンクールでこの「まなざし」の演奏でベスト賞も受賞しており、どの曲を聴いてもそれを深く納得せざるを得ない。なんといっても音色が美しく、豊かな色彩を持って多彩に変化していく。複雑な音の連なりで構成された曲集にも関わらず、絶えず明確に響きの変化が聴きとれるのは、彼女の卓越した技術の成せる技であろう。(長井進之介)バス歌手の花井哲郎が音楽監督を務める声楽グループ「ヴォーカル・アンサンブル カペラ」が取り組む、フランス・ルネサンスの巨匠ジョスカン・デ・プレによるミサ曲全集録音の第5弾。今回は、異なる旋律に基づく5楽章からなる「聖なる乙女のミサ」と、共通の旋律を全楽章に配した「めでたし海の星」、対照的な構成の2曲を取り上げた。多声部における緻密かつ清澄なアンサンブルはもとより、ユニゾン部分でノン・ヴィブラートの声がぐーっと伸びてゆく感覚などは、このアンサンブルならでは。収録場所である、北の大地美術館の静謐な空間も、古楽唱法には最適の環境だ。(寺西 肇)新曲委嘱に熱心な合唱団は多いが、西川たちの活動はそれとは少し違って見える。“現代音楽も歌う”ではなく、“現代音楽が本籍地”というイメージか。合唱とは無縁だった作曲家も積極的に起用し、活動15年間で初演曲は優に100を超える。「合唱の枠組みを超えて…」と形容しがちだが、実は「枠」なんかないことをわかっているからこその実績だろう。収録曲は、声と音、言葉と音楽の関係にあらためて着目した刺激的な作品ばかりでとてもエキサイティング。今の時代、これらはもはや“超難曲”ではないだろう。みんな、もっとこういう曲を歌えばいいのに。賛嘆。(宮本 明)

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