eぶらあぼ 2015.10月号
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308『近松DANCE弐題』現代を生きるダンサーが体現する近松の世界文:小野寺悦子デボラ・コルカー・カンパニー『Belle(ベル)』気鋭の女性振付家が描く人間の二面性文:高橋森彦Aプログラム 10/9(金)~10/11(日) Bプログラム 10/16(金)~10/18(日)新国立劇場(小)問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/dance 『近松DANCE弐題』は、江戸時代に活躍した戯曲作家、近松門左衛門をテーマにした新国立劇場のコンテンポラリーダンス・シリーズ。Aプログラムでは、加賀谷香 Dance-SHAN振付『エゴイズム』を上演。2011年に初演を迎え、日本ダンスフォーラム賞を受賞するなど高い評価を集めたステージの待望の再演である。数ある近松作品のなかでも、加賀谷が着目したのは「曽根崎心中」。近藤良平、佐藤洋介、舘形比呂一、辻本知彦と、個性派揃いのキャストを相手に、ダンスとギター、語りを交えて“エロスと死”を赤裸々に映し出す。 Bプログラムには、日本舞踊の吾妻徳穂、クラシック・バレエの酒井はな、フラメンコの蘭このみと、異なるジャンルでトップを走る3名の女性ダンサーが登場。蘭このみは、近松の『冥土の飛脚』に登場する遊女・梅川を題材にした『梅川』を披露。遊女の切ない想 南米ブラジルから注目の舞踊団がやってくる! ディレクターのデボラ・コルカーは「女傑」と呼ぶにふさわしい。早くからバレエを習うが、ピアノにも才いを、ギターとカンテ、フラメンコのステップにのせ熱く訴える。酒井はなが踊る『近松リポーターズ』は、ザ・フォーサイス・ カンパニー出身の島地保武による振付。近松作品に見る人々の生き様を、酒井と島地のデュオで体現してゆく。吾妻徳穂が踊るのは、自身の振付『五障 Gosho (おさんと小春より)』 。近松の代表作『心中天の網島』の妻おさんと遊女小春の姿を借り、女性が持つとされた五つの障り(煩悩、業、生、法、所知)を演じてみせる。そこに共通して描かれるのは、近松作品に蠢く女たち。現代を生きるダンサーが、近松作品の世界観を通し、今も昔も変わることのない人間の業と普遍の愛をあらわにする。能を示し、バレーボール選手としての経歴もある変わり種だ。加えて大学で心理学を学んだ知性派でもある。コルカーが振付家として歩み始めた当初は、ショー、映画、テレビ番組、サンバなどへの振付が中心だったという。1994年にデボラ・コルカー・ダンス・カンパニーを立ち上げ、力強くも洗練されたダンスとスペクタクル性に富む演出を融合させ、欧米でも絶大な人気を誇る。 初来日は2008年の『ROTA(ルート)』。鍛えられたダンサーたちの小気味よい動きや観覧車のように回る大きな装置を用いた迫力満点のパフォーマンスに『エゴイズム』(2011)より ©鹿摩隆司10/31(土)17:00、11/1(日)15:00KAAT神奈川芸術劇場 ホール問 チケットかながわ0570-015-415http://www.kaat.jp/d/colkerおのずと引きこまれ、めくるめくような高揚感を覚えたのを忘れられない。近年は女性振付家として初めてシルク・ド・ソレイユの話題作『OVO(オーヴォ)』(09年初演)に携わるなど、卓越した構成力と多くの観客に訴える魅惑的な舞台創りを持ち味とし一層活躍の幅を広げている。 7年ぶりとなる待望の再来日で披露するのは最新作『Belle(ベル)』(14年初演)。フランス人作家ジョセフ・ケッセルの小説に基づくルイス・ブニュエル監督『昼顔』(1967年)で女優カトリーヌ・ドヌーヴが演じた売春婦セヴィリーヌ役に触発され創作したという。今回は、どんな仕掛けで我々を驚かせてくれるのだろうか。興奮を体験すべく、さあ劇場へ!

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