eぶらあぼ 2015.10月号
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212SACDCDCDCDテレマン:無伴奏オーボエのための12の幻想曲/インデアミューレ「功芳の第九」2015ライヴ!/宇野功芳&大阪交響楽団CONFESSION 斉木由美 作品集パレストリーナ Vol.6 ミサ・ロム・アルメ/クリストファーズ&ザ・シックスティーンテレマン:無伴奏オーボエのための12の幻想曲 TWV40:2~13トーマス・インデアミューレ(オーボエ)ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」宇野功芳(指揮)丸山晃子(ソプラノ)八木寿子(アルト)馬場清孝(テノール)藤村匡人(バリトン)大阪交響楽団神戸市混声合唱団斉木由美:嘆きは踊りに変わる、歓 JOY、モルフォゲネシスⅡ、弦楽三重奏曲、キリエ-b、コンフェッション多久潤一朗(フルート)鈴木生子(クラリネット)松本卓以(チェロ) 宮田まゆみ(笙)大須賀かおり、山田武彦(以上ピアノ) 他パレストリーナ:「ソロモンの雅歌」より第16番~第18番、ミサ・ロム・アルメ 他ハリー・クリストファーズ(指揮)ザ・シックスティーンカメラータ・トウキョウCMCD-28324 ¥2800+税収録:2015.7/4、いずみホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00576 ¥3200+税収録:2010.8/28、サントリーホール(小)(ライヴ) 他コジマ録音ALCD-105 ¥2800+税東京エムプラスPCOR-16133 ¥2857+税本来はフルートのために書かれた、テレマンの無伴奏ファンタジーに、当代一流のオーボエの名手が挑んだ。この作品は、ただ漫然と音符を並べるだけでは全く音楽にならないが、名手は拍節の与え方やフレージングなど、きっちり角を押さえてゆく。だからこそ、特に長めの音符や息の長いフレーズでの揺らぎなど、しなやかさが逆に際立つ。さらに、まろみを帯びたピリオド楽器ではなく、凛としたモダンの音色は、特にテレマンの書法の構築美を前面に押し出す。やがて作品がバロックという枠組みから解き放たれ、時に現代作品を聴いているかのような、不思議な感覚にも捉われる。(寺西 肇)23年ぶり2度目となる宇野功芳の「第九」録音。ソリストは神戸市混声合唱団のメンバーが起用されている。「功芳の第九」とくれば、聴き手は“普通ではない”演奏を想像する。今回も確かにそうだ。明確に刻まれる冒頭をはじめとする「第1楽章の造形」や「各楽章の終結」はとりわけ独創的。テンポの大胆な変化も耳を奪うし、終楽章では第3楽章の回想が弦に改変されてもいる。だが説得力は非常に高く、中でも慈しむように奏でられる場面の美しさが胸に沁みる。この点は木管やホルンをはじめ大阪交響楽団の功績も大きい。少しでも興味ある方はぜひご一聴を。(柴田克彦)斉木由美、初の作品集。2005年に芥川作曲賞を受賞しているこの中堅の異才は、当CDを聴けばすぐ体感できるだろう。極めて豊かな音彩をイメージ豊かに、かつ立体的に空間に放出することのできる人だと思う。作曲者自身はライナーで各楽曲の着想、タイトルの由来を解説しているのだが、それは尊重しつつも、それにとらわれ過ぎることなく、その音空間に身を委ね、遊びたい。モーツァルトの「不協和音」を一瞬想起させる冒頭から、フルートとクラリネットが不意打ち的に特殊奏法で絡んでくる「嘆きは踊りに変わる」の面白さ。「歓 JOY」の原初的な生命力の爆発。全6曲、どれもが見事。(藤原 聡)イギリス合唱界の名匠クリストファーズが、手兵ザ・シックスティーンと共に、2011年から取り組んでいる「パレストリーナ・プロジェクト」。16世紀ルネサンスのポリフォニーの大家の傑作群へ、鉄壁のハーモニーで斬り込んでゆく。その第6弾は、スペイン王フェリペ2世に献呈された5声のミサ曲「ロム・アルメ」を核に、旧約聖書の「ソロモンの雅歌」に基づくモテット集からの3曲、それに6曲のオッフェルトリウム(礼拝で歌われる奉献唱)を収録。録音ごと、さらなる高みを極めてゆく精緻さの一方、宗教作品にすら人間の喜怒哀楽を感じ取らせる、血の通った演奏が感動的だ。(寺西 肇)

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