eぶらあぼ 2015.10月号
199/253

210CDCDCDCDブルックナー:交響曲第8番 他/チェリビダッケ&シュトゥットガルト放送響イタリア歌曲集~ ARIE ANTICHE ITALIANE/波多野睦美アレス・ワルツァー!ヒンターフーバー プレイズ ワルツFairest Isle 美しき島~イギリスの歌パーセルとブリテン~/村井香子ブルックナー:交響曲第8番(ノーヴァク版)シューベルト:交響曲第5番セルジュ・チェリビダッケ(指揮)シュトゥットガルト放送交響楽団カッチーニ:アマリッリ/チェスティ:あのひとに/モンテヴェルディ:アリアンナの嘆き/A.スカルラッティ:すみれ/ヘンデル:泣かせてください 他波多野睦美(メゾソプラノ)西山まりえ(バロック・ハープ,チェンバロ,ヴァージナル)懸田貴嗣(バロック・チェロ)&バロック弦楽アンサンブルシューベルト:「17のレントラー」より、「12のドイツ舞曲」より/チェルニー:シューベルトの「悲しみのワルツ」による変奏曲/J.シュトラウスⅡ:新ピッツィカート・ポルカ、仲良しのワルツ、皇帝円舞曲/ラヴェル:ラ・ヴァルス/シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 他クリストファー・ヒンターフーバー(ピアノ)パーセル:美しき島、美しい若者よ、薔薇の花よりも甘く、夕べの讃歌/ブリテン:歌曲集「この島で」より、グリーンスリーヴズ、サリー・ガーデンズ 他村井香子(ソプラノ)竹内太郎(バロック・ギター、リュート)平尾雅子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)今川裕代(ピアノ)収録:1976.11,1979.10、シュトゥットガルト(ライヴ)TOWER RECORDS/ユニバーサルミュージックPROC-1755/6(2枚組) ¥1800+税ダウランド アンド カンパニイMHS-004 ¥2800+税カメラータ・トウキョウCMCD-28325 ¥2800+税コジマ録音ALCD-7188 ¥2800+税チェリビダッケといえば、ミュンヘン・フィルとの巨大で圧倒的なブルックナー演奏によって一部で神格化されるなど、20世紀の巨匠指揮者のなかでも特殊なカリスマ的存在。しかし、1970年代に親密な関係を築いたシュトゥットガルトでの“ブル8”は、演奏時間は80分強ながら、後のミュンヘン時代より約20分(!)も短く、音楽が前向きに流れ、歌心と覇気に満ちている。儀式的な威容は後年の演奏が優るものの、当盤では充実した響きで作品自体のすばらしさを満喫でき、なにより指揮者の熱い感情が伝わってきて魅力的。もちろんクライマックスでは壮絶な迫力も充分。一聴の価値ある名演だ。(林 昌英)声楽学習者の必修課題であり、誰もがきっと耳にしたことのあるイタリア古典歌曲集。「歌曲」というものの実はほとんどが17〜18世紀のオペラ・アリアで、編纂された時代(20世紀初頭)を反映してロマン派風のピアノ伴奏が施されたもの。ここでは原典や筆写譜を用い、それを作曲当時の姿に戻してくれた。聴き馴染んだ曲たちが清廉な素顔を見せているかのよう。すると、たとえばピアノ伴奏では埋もれてしまうようなほんのちょっとしたニュアンスを仕掛けるだけで、音楽は実に豊かに表情を変える。華美な化粧を落としてみれば、歌自体がこんなにも雄弁だったのだ。(宮本 明)ウィーンの人々を熱狂させたワルツ——その生成・栄華・追懐を描いたピアノ曲を一堂に並べたユニークなアルバムが生まれた。オーストリアのピアニスト、ヒンターフーバーによる「アレス・ワルツァー!」(皆様、ワルツを!)だ。シューベルトのレントラーやドイツ舞曲の小品に始まり、華麗なるチェルニーの変奏曲、J.シュトラウスⅡのワルツのシュールホーフやグリュンフェルトらによるピアノ編曲版、シューマンやラヴェルらがウィーンの外から描いた作品まで。光と影を宿したウィーンの舞曲の世界を、ヒンターフーバーが明敏なピアニズムで描き出す。(飯田有抄)17世紀のパーセルと、その再評価にも大きな役割を果たした20世紀のブリテン。イギリスを代表する2人の作曲家の歌曲を併置した、ユニークなアルバム。主にイギリスの古楽畑で活躍して来た村井の歌声は、たおやかで透明感に満ちる一方、決して芯を失うことがない。そして、何よりも言葉を丁重に扱い、歌い回しひとつから、包含する意味合いや背景が浮き彫りに。古楽とモダン、双方の共演者も好演。時代ごとの様式感はきっちり押さえつつ、300年の時を隔てた作品が違和感なく連なり、やがて共鳴し、ブリテン編曲のパーセルの歌曲で見事に重なり合う。構成もまた、巧みだ。(寺西 肇)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です