eぶらあぼ 2015.9月号
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68映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』少年の歌への情熱と成長を描く文:東端哲也及川浩治(ピアノ)音楽への愛を多くの人と共有したい文:飯田有抄9月11日(金) TOHOシネマズシャンテ 他 全国ロードショーhttp://boysoprano.asmik-ace.co.jp 1937年設立のアメリカ少年合唱スクール(ABS)はニュージャージー州プリンストン市にある全寮制の音楽学校。世界中から集まった9~14歳の少年たちに厳しい学業と優れた合唱を指導するプログラムで知られ、国内外で年間200ものツアーを行い(定期的に来日公演も行っている)高評価を得ている。そんな実在のユニークな合唱団をモデルに「少年が大人へと成長する、そのわずか数年の間だけ輝ける」天使の歌声たちの、知られざる実状を描いたのが映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』。 複雑な家庭環境に育った問題児ステット(ギャレット・ウェアリング)が、名門校への入学をきっかけに歌への情熱を膨らませ、自ら道を切り拓き成長する物語だ。監督が『グレン・グールドをめぐる32章』や『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラールだけに、音楽映画としてのクオリティも非常に高く、ステットが類い稀 鋭敏な感性と情熱的な演奏で、ファンを魅了してやまないピアニスト・及川浩治。1995年のサントリーホールでの正式デビューから20周年を迎え、同ホールでの記念リサイタルが9月に開かれる。「山あり谷ありの20年だった」と振り返る及川。なかでも「体調を崩した2009年は、活動を休止せねばならず地獄を見た。多くの方に支えられて半年後に復活を果たすことができたことは、感謝してもしきれません」。今、自分は生かされ、弾かせてもらえる喜びに満ちている。音楽への愛をさらに多くの聴衆と共有したい、と熱い想いを伝えてくれた。 1曲目は、復活リサイタルの最後に演奏したリストの「ダンテを読んで」。「原点に立ち返る気持ち」でスタートする。ショパンの作品からはノクターンの第10番・第16番を選んだ。ノクターンは、ショパンが部屋の中で自分一人のために弾いているイメージがあるという。「一人ひとりのお客様と対話するような気持ちで弾きたいです」。及川に「ピアニストになりたい!」という憧れを与えてくれたのはラフマニノフだ。「自作自演の録音は、表現力の幅に驚かされます。彼のソナタ2番は10代で初挑戦した国際コンクールで優勝した思い出の曲です」。リスト、ショパン、ラフマニノフ。「この3人がいなければ現代のピアノ音楽の歴史はなかった」と及川は言う。彼らへの敬愛、そして自身の関わる全ての人々に感謝を込めてステージに立つ及川。その音楽にしっかりと耳を傾けたい。な美声で歌い上げるフォーレ「レクイエム」の〈ピエ・イエス〉を始め、ブリテン「キャロルの典礼」から童謡〈ほたるこい〉(日本ツアー用の曲という設定)まで、ABSの全面協力による合唱シーンが素晴らしい。特にクライマックスのヘンデル「メサイア」はコアなファンをも唸らせるはず。 少年たちを厳しくも深い愛情で導く団長役のダスティン・ホフマンを中心に、ショウ・クワイアーの世界を描いた人気TVドラマ『グリー』のケヴィン・マクヘイルらが脇を固めた© 2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.© Myles Aronowitz 2014©Yuji Hori9/20(日)14:00 サントリーホール問 チケットスペース03-3234-9999 http://www.ints.co.jp他のデビュー20周年記念公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.koji-oikawa.comキャスト陣も魅力。大人になった“天使たち”への応援歌のようなジョシュ・グローバンによるエンディング曲も感動を呼ぶ。

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