eぶらあぼ 2015.9月号
63/207

60と、重量級のプログラムを用意しました。料理で例えるなら、目の前でシェフが料理する鉄板焼きフルコースのような…タラバガニや野菜焼きなどがあり、メインはバランスよく脂ののったステーキといったところでしょうか(笑)。多くの方の支えがあってここまでこられたという感謝を込めてお届けしたいです」 ピアニストとして歩んできた20年。その集大成を、特別なピアノとともに披露する。第2回 日本ベトナム・ピアノフェスティバル11/25(水)19:00 カワイ表参道パウゼ、11/28(土)14:00 磯子区民文化センター杉田劇場、他東北での公演あり問 アコールヴィブレ03-6909-0401樋口あゆ子日本楽壇デビュー20周年記念ピアノリサイタル2016.1/17(日)浜離宮朝日ホール(タカギクラヴィア03-3770-9611)2016.1/24(日)ヒビキミュージックサロンリーブス(06-6363-3060)2016.2/29(月)宗次ホール(052-265-1718)樋口あゆ子(ピアノ)私を支えてくれた多くの方々に感謝を込めて取材・文:高坂はる香Interview 今年、日本デビュー20周年を迎えるピアニストの樋口あゆ子。ライフワークとして社会的意義の大きなプロジェクトに携わりながら、精力的に演奏活動を続けてきた。 「まずは作品に向き合って研究し、それをステージで発表することにより、人と人とをつなぐ。私にとって演奏活動とはそういうものです」 長崎への原爆投下から25年後の8月9日生まれであることから毎年同日に行う「平和祈念コンサート」も、今年で13回目。2004年からはベトナムの枯葉剤二次・三次被害児向けのふれあいコンサートを実施するなど、その活動は多彩だ。2年前に創設された日本ベトナム・ピアノフェスティバルでは音楽監督を務める。 「第1回では、日本3ヵ所、ベトナム4ヵ所でツアーを行いました。ベトナムでは、ハノイ音楽院やベトナムの若者が普段食事をしている屋台を訪れるなど、長時間行動を共にしたことで、表面的でない交流が実現できたと思います。両国の若いピアニストが友情を育む様子を目の当たりにして、感慨深かったです」 今年11月に東京、横浜、宮城で行う第2回フェスでも、日越の若手による協奏曲の2台ピアノ演奏や、樋口自身の演奏、そして両国の“食”を楽しむレセプションが予定されている。 そして年明けの1月には、自身のデビュー20周年記念リサイタルを開催する。 「節目ということで、心から敬愛する3人の作曲家を取り上げます。冒頭のショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章のピアノ編曲版は、自宅にお客様をお招きする演奏会で必ず演奏する曲。これで心を開いていただいてから、スケルツォやバラード、そしてリストの作品によるドラマティックな世界に誘いたいと思います。第2部では、私にとって夢中にならずにいられない存在であるラフマニノフを演奏します。特にソナタ第2番は、弾くほどにユーラシア大陸の情景が目に浮かび、自分の東洋系の遺伝子と化学反応が起きるような気がするのです」 東京公演では、タカギクラヴィア所有の、ラフマニノフがカーネギーホールで弾いたスタインウェイCD368(1912年製)を使用する。 「同社が所有するホロヴィッツのCD75を聴いたことのある方もいらっしゃると思いますが、CD368のほうは、より音のバランスが良く、幅広いレパートリーに合わせて万華鏡のように変化します。今回はそんな特別なピアノを弾くのだからピアノ・エトワール・シリーズ Vol.27 ベンジャミン・グローヴナー9/5(土)15:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール問 彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939 http://www.saf.or.jp/arthallベンジャミン・グローヴナー(ピアノ)UKからの新星が魅せるピアニズム文:高坂はる香ベンジャミン・グローヴナー ©Decca/Sophie Wright  英国ピアノ界期待の星、ベンジャミン・グローヴナー。神童として早くから注目された彼は、英国王立音楽アカデミーで学び、19歳の頃BBC響との共演でBBCプロムスに初登場。今年は同音楽祭ラストナイトへの出演も決まっているそうで、この23歳の青年への注目度の高さがうかがえる。 そんなグローヴナーが2度目の来日を果たし、優れた若手をいち早く紹介する眼力に定評のある、彩の国さいたま芸術劇場『ピアノ・エトワール・シリーズ』に登場し、こだわりのプログラムを披露する。テーマは「ロマン派におけるバロック」。メンデルスゾーン「前奏曲とフーガ」より2曲、バッハ(ブゾーニ編)「シャコンヌ」や、ラヴェルの「クープランの墓」など、当時作曲家の心を捉えた“バロックを振り返る”というアイディアから生まれた作品をつなぐ。「ピアノは自分の指の下にオーケストラがあるようなもの」だと語る彼が、シャープなタッチで鳴らすクリアな音、スケールの大きな音楽性で、新旧の融合から生まれた音楽の魅力を浮き彫りにする。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です