eぶらあぼ 2015.9月号
61/207

58芸劇フェスティバル 東京芸術劇場開館25周年記念コンサートジョワ・ド・ヴィーヴル ── 生きる喜びアニバーサリーにふさわしい大胆で斬新なプログラム文:宮本 明芸劇フェスティバル東京芸術劇場開館25周年記念コンサートジョワ・ド・ヴィーヴル ── 生きる喜び鈴木優人(指揮/オルガン)石丸由佳(オルガン)小㞍健太(ダンス)児玉 桃(ピアノ)原田 節(オンド・マルトノ)バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱)芸劇ウインド・オーケストラ(吹奏楽)東京交響楽団(管弦楽)11/1(日)第1部 祈り 15:00第2部 希望と愛 17:30東京芸術劇場 コンサートホール※入替制・各部別料金問 東京芸術劇場ボックスオフィス  0570-010-296http://www.geigeki.jp 1990年10月30日、若杉弘指揮・東京都交響楽団による「第九」で開場した東京芸術劇場。25周年を迎えた今年、すでに6月以降の主催公演を「芸劇フェスティバル」と銘打って祝賀モードに突入しているが、秋以降も、ベルリン・ドイツ交響楽団(10/30)、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(11/12)、フランクフルト放送交響楽団(11/19)と続く「海外オーケストラシリーズ」や、野田秀樹の演出が話題の《フィガロの結婚~庭師は見た!》(10/22,10/24,10/25)など注目公演が目白押し。なかでも記念事業の中心に位置付けられているのが、開場25周年記念コンサート「ジョワ・ド・ヴィーヴル―生きる喜び」だ。 節目を記念する公演を委ねられたアーティスティック・ディレクターは、鍵盤楽器奏者、指揮者として、また作曲家やプロデューサーとしてもマルチに活躍する鈴木優人。「新しい才能をフィーチュアしたい」という劇場側の願いに合致する、現在の楽界で最重要のキーパーソンとして指名された。「曲目を考えるプロセスから楽しくてわくわくした」と語る鈴木。大胆で斬新なプログラムが決まった時点で、すでにこの起用に応えたと言えるかもしれない。 昼夜2つのコンサートからなる公演全体を貫く理念が「生きる喜び」。人々が集まり生きる活力を得る場であり、その「気」が交流する場である「劇場」を象徴したものだという。 第1部は「祈り」がテーマ。軸となるのはバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱と石丸由佳のオルガンで紡ぐ、中世から鈴木の自作まで約700年にわたる祈りの音楽の連なりだ。そこに鈴木のオルガン即興と舞踊家・小㞍健太のダンスが加わる。何かをダンスで表現するというよりも、小㞍が“祈る人”あるいは“聴く人”として、さまざまな時代の祈りの音楽を聴き続ける魂のような存在となる。 第2部では鈴木が吹奏楽とオーケストラを振る。若手プロ集団である芸劇ウインド・オーケストラが登場する前半のテーマは「希望」。吹奏楽を指揮するのはほとんど初めてという鈴木だが、実はかつてフラウト・トラヴェルソを学んだり、中学校のオーケストラでファゴットを吹いていたことがあるそう。鈴木より一世代若い奏者たちの明日への希望が「火の鳥」とともに飛翔する。 そしてお待ちかね。クライマックスは東京交響楽団とのメシアン「トゥーランガリーラ交響曲」。テーマは「愛」だ。中学時代の鈴木少年の着メロがこの曲だった(!)というぐらい、「ずっと指揮してみたいと思っていた曲」。いつになく気持ちが高まっているそう。児玉 桃(ピアノ)、原田節(オンド・マルトノ)と参加アーティストも豪華だ。 一日のコンサートの中で中世から現代までの音楽の歴史を概観でき、しかも最前線のダンス・シーンのエッセンスも加味されるのは、この劇場らしい企画。さらには、指揮者、オルガニスト、作曲家と、鈴木優人の多様な才能をじっくりと楽しめる機会でもある。これは華やかなだけの祝賀コンサートではない。この秋、最注目の公演だ。左より:石丸由佳/小㞍健太/児玉 桃 ©Marco Borggreve/原田 節 Photo:Yutaka Hamano鈴木優人 ©Marco Borggreve芸劇ウインド・オーケストラ

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です