eぶらあぼ 2015.9月号
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39スーパー・ソリスト meets 新日本フィルカニサレス(フラメンコ・ギター) & 新日本フィルスーパー・ギタリストで聴く「アランフェス」文:オヤマダアツシハンヌ・リントゥ(指揮) フィンランド放送交響楽団シベリウス演奏の新しき地平文:飯尾洋一9/26(土)18:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com11/4(水)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 11/2(月)すみだトリフォニーホール(03-5608-1212)、11/3(火・祝)静岡グランシップ(中)(054-289-9000)、11/6(金)周南市文化会館(0834-22-8787)、11/8(日)ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000) フラメンコを含むラテン系のワールド・ミュージック・ファンであるなら、その名声は以前より轟いていたであろうギタリスト、フアン・マヌエル・カニサレス。名手パコ・デ・ルシアの薫陶を得てキャリアを積み、ジャンルを超越したミュージシャンたちとの共演も多い彼は、今やフラメンコの世界にとどまらないスーパー・ギタリストとして注目されている。クラシック音楽シーンにも、ラトル&ベルリン・フィルのソリストに招かれて「あれは誰だ?」と多くの人を驚かせた後、日本にもラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンのために来日。聴き慣れたロドリーゴの「アランフェス協奏曲」を、どのギタリストとも異なるタイプのアプローチで演奏し、新しい可能性を提示してくれたのだ。 9月に予定されている来日ツアーの中でも、その斬新な「アランフェス」を聴ける日がある。松尾葉子指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団が彼の フィンランドを代表する作曲家シベリウスが今年生誕150周年を迎える。日本にも愛好家の多いシベリウスだけあって、記念企画がいくつも開かれているが、なかでもその白眉となりそうなのが、ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団によるオール・シベリウス・プログラム。母国の名門オーケストラでシベリウスの代表作を聴けるのは大きな喜びだ。曲は交響詩「フィンランディア」、ヴァイオリン協奏曲(独奏:諏訪内晶子)、交響曲第2番。名曲がそろった。 フィンランド放送交響楽団は1927年の創立。2013年にハンヌ・リントゥが首席指揮者に就任した。これまでに同楽団の首席指揮者を務めたのはパーヴォ・ベルグルンド、オッコ・カム、レイフ・セーゲルスタム、ユッカ=ペッカ・サラステ、サカリ・オラモら。いずれもフィンランド出身の世界的指揮者だが、自国の指揮者だけでこれだけの名ソロをもり立て、即興性にあふれたスリリングな名演が体験できるはずだ。歌と踊りも一体化した彼のフラメンコ・カルテットも出演し、ファリャのバレエ音楽「三角帽子」をフラメンコの領域に引き込んで聴かせてくれるというプロ前が並ぶフィンランド人指揮者の層の厚さにも驚かされる。ハンヌ・リントゥもフィンランド人として、これら名指揮者の系譜に名を連ねる。 指揮者もオーケストラもシベリウスを知り尽くしている。となれば“伝統の力”で演奏は容易なものと思いがちグラムにも注目したい。さらにはコンサートの後半において、カルテットによる本格的なフラメンコのステージも。スペインの音楽に横たわる情熱、情念といった要素を体感するには最適の一夜となることだろう。だが、リントゥは「自分のシベリウスをオーケストラに受け入れてもらうのに半年かかった」とか。伝統とは過去の再生産ではなく、絶え間ない創造から生まれてくるものなのだろう。 彼らが生み出す「シベリウスの今」を聴いてみたい。新日本フィルハーモニー交響楽団 ©K.Miuraカニサレス ©AMANCIO GUILLEN諏訪内晶子 ©TAKAKI KUMADAハンヌ・リントゥ ©Kaapo Kamu hr

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