eぶらあぼ 2015.9月号
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252 横浜公演は、旧マイカル本牧という元ゴージャス施設のリノベーション空間で行われる。場所の強さに負けない肉厚のダンスを堪能してほしい。2016.1/30(土)17:00 ロームシアター京都 メインホール問 ロームシアター京都 開設準備室075-746-3355 http://rohmtheatrekyoto.jp※その他全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://arstokyo.co.jp/general/2015/vaganovaロームシアター京都オープニング事業 ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー『くるみ割り人形』京都に誕生する新劇場で伝統の「くるみ」を堪能文:渡辺真弓 創立277年、ロシア最古の歴史を誇る名門バレエ学校、ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーが2016年の新春に来日し、東京はじめ全国各地で公演する。なかでも京都公演は、1月10日に京都・岡崎にリニューアル・オープンするロームシアター京都(旧京都会館)のオープニング事業として最初のバレエ公演となり、舞台機能の向上した劇場で、創立60周年の京都市交響楽団との初共演が実現するのも話題だ。指揮は同バレエ・アカデミー音楽監督のワレリー・オフシャニコフ。 ワガノワ・バレエ・アカデミーは、1992年に初来日して以来、過去6回来日。今回は2008年以来久々となる。帝政ロシア時代の1738年にサンクトペテルブルクに、帝室バレエ学校として創立。1917年のロシア革命後、優れた指導者のアグリッピナ・ワガノワによってメソードが体系化され、この学校の基盤は揺るぎないものとなった。その偉業を讃え、学校の名称にはワガノワの名が冠されている。パヴロワ、ニジンスキー、ヌレエフ、バリシニコフ・・・この名門校が輩出した伝説のスターたちは枚挙にいとまがない。今回の演目は、“ワガノワ十八番”として定評のあるチャイコフスキーの名作『くるみ割り人形』全3幕。1892年、マリインスキー劇場で初演され、その後、主役の少女マーシャ(クララ)の現実と夢の世界をはっきり分けたワイノーネン版が決定版として定着。本家本元の伝統を受け継ぐ名版が見られるのは貴重だ。 2013年から元ボリショイ・バレエのスター、ニコライ・ツィスカリーゼが校長に就任。今回は新体制での初めての来日となるが、つねにこのアカデミーが「スターの宝庫」であることに変わりはないだろう。 ロームシアター京都では、京都バレエ、桧垣バレエ、深川秀夫版『白鳥の湖』などの公演も今後予定されており、関西のバレエ公演の重要な発信地となっていくことが期待される。10/10(土)~10/12(月・祝) 横浜・HONMOKU AREA-2(旧マイカル本牧の映画館跡)8/23(日)発売 問 横浜アーツフェスティバル実行委員会事務局045-663-1365『JUDAS, CHRIST WITH SOY ~太宰治「駈込み訴え」より~』躍進著しいダンサーの現在文:乗越たかおPhoto:Yoav Barel このところ森山未來のガチなダンサーぶりが、凄まじい。世界の一流振付家と数々の共同作業を重ね、一年間イスラエルでダンス修行してきた。本公演は今年7月に愛媛県に100年続く歌舞伎劇場・内子座でのレジデンス後に公演されたものの再演だ。 変わったタイトルだが、原作は太宰治の短編小説『駈込み訴え』である。ユダがイエスを裏切ってローマ軍に売り渡す際にかき口説く文句を独白の形で小説にした。イエスに対するユダの愛憎相半ばするあまり、入り混じって反転しまくって、もはや告発しているんだか愛の渇望を吐露しているんだかわからない心情が揺れる。時々入る森山の関西弁が実にいいリズムを生んでいた。 演出・美術・振付のエラ・ホチルドはインバル・ピントのカンパニーでも活躍している。複雑なコンタクトから多彩なダンスが展開され、音楽の吉井盛悟も時にダンスにかかわり、シンプルにしてジンワリくる様々な仕掛けが満載だ。自分の気持ちに翻弄され混乱する様は悲劇だが、外から見ると喜劇である。深く、熱く、そして温かい視線が全体を包んでいる。

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