eぶらあぼ 2015.9月号
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17811月の見もの・聴きもの2015年11月の曽そし雌裕ひろかず一 編〔Ⅰ〕オーストリアウィーン国立歌劇場11月1(16:00)日 モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ 指/A.フィッシャー、演出/J.L.マルティノーティ、出/M.クヴィエチェン、M.レベカ、B.ブルンス、J.バンゼ11月2(19:00)、5(19:30)日 チャイコフスキー:エフゲニー・オネーギン 指/P.ランゲ、演出/F.リヒター、出/A.ネトレプコ、C.マルトマン、D.コルチャク、F.フルラネット11月7(19:00)、9(19:00)、12(19:00)、15(19:00)日 プッチーニ:ラ・ボエーム 指/M.アルミリアート、演出/F.ゼッフィレッリ、出/P.プレッティ、M.ソルベリ、A.アルドゥイーニ、A.ガリフッリーナ11月11(19:00)、14(19:30)、16(19:30)、20(19:30)日 マスネ:ウェルテル 指/F.シャスラン、演出/A.シェルバン、出/M.ポレンツァーニ、M.アイヒェ、E.ガランチャ◎11月13(19:30)、17(19:30)、21(19:30)、25(20:00)日 R.シュトラウス:エレクトラ 指/P.シュナイダー、演出/U.E.ラウフェンベルク、出/A.ラーション、N.シュテンメ、G.B.バークミン/R.ハンクラー(25日)、H.リッパート、M.ゲルネ/I.パターソン(25日)★◎11月19(19:00)、22(19:00)、26(19:00)、29(19:00)日 フンパーディンク:ヘンゼルとグレーテル[プレミエ] 指/C.ティーレマン、演出/A.ノーブル、出/A.エレート、J.ベヒレ、D.シンドラム、M.シュスター11月24(20:00)日 F.フルラネットBs シューベルト:冬の旅 共/I.チェツエフp11月27(19:00)、30(19:00)日 モーツァルト:フィガロの結婚 指/J.ガフィガン、演出/J.L.マルティノーティ、出/A.プラチェトカ、O.ベズスメルトナ、A.ガリフッリーナウィーン・フォルクスオーパー11月1(17:00)、10(19:00)、15(16:30)、23(19:30)、28(19:30)日 M.リー:ラマンチャの男(ミュージカル)[15年10月プレミエ] 演出/O.タンボシ11月4(19:00)、12(19:00)日 ヨハン・シュトラウス:こうもり 演出/R.ヘルツル、新校訂演出/H.ツェドニク11月5(19:00)、9(19:30)、16(19:00)、19(19:00)、21(19:00)、26(19:00)日 ベナツキー:白馬亭にて[15年9月プレミエ] 演出/J.E.ケプリンガー 11月6(19:00)日 レハール:メリー・ウィドー演出/M.A.マレッリ11月8(19:00)日 ビゼー:カルメン 演出/G.ヨーステン★◎11月14(19:00)、20(19:00)、22(19:00)、24(19:00)、27(19:00)日 モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ[プレミエ] 演出/A.フライヤー11月29(15:00)日 H.アーレン:オズの魔法使い(ミュージカル) 演出/H.メイソン アン・デア・ウィーン劇場★◎11月12(19:00)、14(19:00)、17(19:00)、19(19:00)、22(19:00)、24(19:00)日ワーグナー:さまよえるオランダ人[プレミエ]指/M.ミンコフスキ、演出/O.ピィ、出/S.ヨン、I.ブリンベリ、L.ヴォルト、B.リヒター、M.ギュンター、演奏/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル◎11月15(19:00)日 F.B.コンティ:シエラ・モレナのドン・キホーテ(演奏会形式) 指/R.ヤーコプス、出/S.ドゥグー、M.フィンク、S.カルトホイザー、C.デュモー、L.ザッゾ、演奏/ブロック管(B'Rock Orchestra)◎11月18(19:30)日 M.ハーゼルベック指揮ウィーン・アカデミー管 ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、第5番「運命」ウィーン・フィル[会場:無印=ムジークフェライン(ウィーン)、(KH)=コンツェルトハウス(ウィーン)]◎11月15(11:00)(KH)、16(19:30)(KH)日D.バレンボイム指揮 マーラー:交響曲第9番◎11月22(11:00)、23(19:30)日 F.ウェルザー=メスト指揮 ハイドン:交響曲第39番、アイネム:フィラデルフィア交響曲、R.シュトラウス:家庭交響曲◎11月28(15:30)、29(11:00)、30(19:30)日M.ヤンソンス指揮 ストラヴィンスキー:詩編交響曲、ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ウィーン響[会場:(MV)=ムジークフェライン(ウィーン)、(KH)=コンツェルトハウス(ウィーン)、(BP)=フランツ・リスト音楽院(ブダペスト)、(LJU)=カンカリエフ・ドーム(リュブリャナ)、(U)=テアトロ・ヌオーヴォ・ジョヴァンニ・ダ・ウディーネ(ウディーネ/イタリア)](主要公演のみ)11月4(19:30)(MV)、5(19:30)(MV)、6(19:30)(MV)、8(19:30)(BP)、9(20:00)(LJU)、10(20:45)(U)日 C.デュトワ指揮プロコフィエフ:ロメオとジュリエット(抜粋/C.デュトワ編)、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、ムソルグスキー(ラヴェル編曲):展覧会の絵11月21(19:30)(KH)、22(19:30)(KH)日D.ハーディング指揮 シューマン:ゲーテの「ファウスト」からの情景 独/C.ゲルハーヘルBr、C.カルクS、A.マイルズBs、C.ランズハマーS、G.ロンベルガーMs、F.J.ゼリッヒBs11月28(19:30)(MV)、29(19:30)(MV)日A.フィッシャー指揮 モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番、マーラー:交響曲第7番 独/J.スタンクルp【本文中の記号】★=プレミエ[新演出]公演、◎=注目公演 今年のバイロイト音楽祭で最も注目を浴びたカタリーナ・ワーグナー演出、ティーレマン指揮の「トリスタンとイゾルデ」は、現地の新聞評によると、演出に関しては大方の予想ないし期待に反して、前回演出の「マイスタージンガー」のような破天荒でスキャンダラスな舞台ではなかったようだ。ただ、マルケ王に刃物を持たせて最初からトリスタンの殺害意図を匂わせるというような、これまでなかった心理的な分析を試みているほか、イゾルデとブランゲーネの女性2人から見た物語という視座に立った演出であることを演出家本人が語っているという。今後どのような演奏評が出てくるのか楽しみだ。 さて、この「トリスタン」を振ったティーレマンは、11月にはウィーン国立歌劇場でフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」のプレミエを振る。この曲、日本では子ども向けの、ややグレードの低い作品と思われがちだが、ヨーロッパの劇場ではその劇場のシェフ自ら指揮台に立つことも珍しいことではない。ティーレマンもおそらくこの曲に愛着を抱いて引き受けたのではなかろうか。 同じウィーンのアン・デア・ウィーン劇場の11月は、ミンコフスキ指揮のワーグナー「さまよえるオランダ人」という注目企画。ミンコフスキの「オランダ人」公演は、数年前から各地で行われているので、必ずしも新味のあるものではないが、このウィーンの小さな劇場で聴ける公演は魅力的。また、この劇場では、他にもヤーコプス指揮のコンティの珍しいオペラ公演とか、ウィーン・アカデミー管のベートーヴェンなどもあり、相変わらず聴きごたえある出し物が続いている。 劇場的な話題といえば、ケルン歌劇場のリニューアルオープン。2010年以来の改装作業が終了し、この11月に晴れて再開場となる。その上演第1作がベルリオーズの「ベンヴェヌート・チェルリーニ」。なぜこの曲を?実は、フランス人のフランソワ=グザヴィエ・ロトがこの9月からこの劇場の新音楽監督に就任したため、自らのアイデンティティーを表明する意味での選曲でもあったに違いない。 そのプレミエ初日の11月7日。同じケルンのフィルハーモニーでは、サロネン指揮のバイエルン放送響がラヴェルの「子供と魔法」を演奏する。これもまた魅力的な公演で、同じ日にどちらを聴くのか迷ってしまうケルンの聴衆が羨ましい。ちなみに同公演は、5日・6日に、まずミュンヘンで行われる。 ケルンのフィルハーモニーでは、11月3日のヘンゲルブロック指揮バルタザール・ノイマン合唱団のアカペラ合唱演奏会も重要な公演。優れた合唱団は世界に多いが、この合唱団も、ソリストとしても通用するハイレベルな歌手を集めて、唖然とするほど美しい響きを紡ぎ出す。ヘンゲルブロックの実力が今ひとつわからない、と思いになっていらっしゃる方もこの合唱をお聴きになれば全て納得。機会があれば是非お聴きいただきたい(1日にはバーデン・バーデンでの公演もあり)。なお、ヘンゲルブロックは、ハンブルク北ドイツ放送響を指揮してシューマンの「ゲーテの『ファウスト』からの情景」を演奏する。やや地味な曲ではあるが、これも注目。 その他、ラトル=ベルリン・フィルは、ベルリン、ウィーン、ニューヨークでベートーヴェン・ツィクルスを敢行中。ルツェルンのピアノ・フェスティバルはいつもながら豪華な出演陣。80歳を迎えたラッヘンマンの企画公演がhr響、シュトゥットガルト放送響を中心に行われるのも見逃せない。ちなみに、これらの公演でピアノを弾かれる菅原幸子さんはラッヘンマン夫人。大野和士指揮東京都交響楽団のヨーロッパ公演も注目公演の一つ。(曽雌裕一・そしひろかず)(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)
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