eぶらあぼ 2015.9月号
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162SACDCDCDCD辻井伸行 印象派コレクションサンバ協奏曲~ギター・トリオ&デュオ作品集/福田進一&ピノ・エテルナリスト/反田恭平高橋アキ プレイズ エリック・サティ 2辻井伸行:『美の巨人たち』オープニング&エンディング・テーマ(ピアノ・ソロ,ピアノ&オーケストラ版)/ドビュッシー:アラベスク第1番・第2番、月の光、夢、喜びの島/ラヴェル:ソナチネ、水の戯れ、亡き王女のためのパヴァーヌ辻井伸行(ピアノ) 他ヴューストホフ:サンバ協奏曲/カウフマン:2つのギターのための組曲/サイアル:雨が降る/ピアソラ:タンゴ組曲、来たるべきもの福田進一(ギター)ピノ・エテルナ[エリカ・シュトローブル&松永一文](ギター・デュオ)リスト:ラ・カンパネラ、「愛の夢」第3番、スペイン狂詩曲、コンソレーション第3番、タランテラ、超絶技巧練習曲第10番・第4番、水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ/ビゼー(ホロヴィッツ編):カルメン幻想曲反田恭平(ピアノ)サティ:ノクチュルヌ、嫌らしい気取り屋の3つの高雅なワルツ、世紀ごとの時間と瞬間の時間、乾からびた胎児、官僚的なソナチネ、スポーツと気晴らし 他高橋アキ(ピアノ)エイベックス・クラシックスAVCL-25875 ¥2500+税マイスター・ミュージックMM-3055 ¥2816+税日本コロムビアCOGQ-78 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCMCD-28322 ¥2800+税アルバムの冒頭と終わりに自作曲を置いて、その間にドビュッシーとラヴェルの代表作を並べる。作曲と演奏の双方で活躍する辻井ならではの1枚だ。芸術家の人生や作品のイメージを音に託したというテレビ東京の番組『美の巨人たち』のテーマは、印象派の作風にも通じる優美な佳曲。今回はピアノ・ソロとオーケストラ伴奏付きの2種類が収録されており、作品が湛える豊かな色彩感がいっそう際立っている。また、ドビュッシー「喜びの島」やラヴェル「水の戯れ」といった難曲では、明るく透明なタッチとペダリングで、辻井ならではのカラフルなファンタジーを紡ぎ上げている。(渡辺謙太郎)ダイナミックで推進力があふれつつも、ギターの透明な音色は、いささかも損なわれることがない。それが不思議な魅力となって、聴く者の心を捉える。「福田進一プロデュース・シリーズ」中でも、特に好評を博した1枚がリマスタリングされて17年ぶりに復活。共にオスカル・ギリアに学んだ福田の盟友である、夫婦ギター・デュオ「ピノ・エテルナ」を迎えて、二・三重奏曲の佳品を聴かせている。特に、福田が参加しての標題作には、友人同士の寛いだ雰囲気と、名手が対峙しての丁々発止のやり取りが同居。真剣な取り組みだからこそ、真の愉悦が生まれることを再確認させる。(寺西 肇)ピアノ愛好家のみならず、クラシックに馴染みのない一般聴衆も熱狂させる逸材として、昨年から急激に注目を集めている反田恭平のデビュー盤。現在モスクワ音楽院在学中の21歳。ホロヴィッツが愛用した1912年製のスタインウェイCD75を使用し、リストの超絶技巧作品や甘い旋律を、独自の感性で弾く。豪快なフォルテで鳴らす音のインパクトは絶大で、繊細なレガートで奏される部分とのコントラストも鮮やか。「スペイン狂詩曲」や「タランテラ」では卓越したリズム感の持ち主であることがわかる。端整に編み上げた音楽の中に感情を素直にぶつけるような、音楽性とエンタテインメント性を併せ持つアルバムだ。(高坂はる香)ライフワークとしてサティに取り組んできた高橋アキ。その新録音第2弾がリリースされた。1913年から19年の間に書かれた小品ばかり、実に54曲。後続の芸術家たちに様々なインスピレーションを与えたこの異端の作曲家は、華麗さ、壮大さ、ドラマ性などとはおよそ無縁の音楽を作った。ぼそぼそとつぶやくように、奇天烈な妄想をもてあそぶように、そして時にはおなじみのメロディをパロってみせたり――そうやって紡がれていく音の身振りに、高橋は実直に向かっている。サティの人柄までもが滲み出るような演奏だ。かつて高橋とともにサティの紹介に尽力した音楽評論家・秋山邦晴の解説も味わい深い。(江藤光紀)

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