eぶらあぼ 2015.8月号
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44紀尾井 明日への扉 9 阪田知樹(ピアノ)ホールの響きを活かした絶妙な選曲文:高坂はる香第36回 草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルシューベルトとドビュッシーの魅惑文:宮本 明9/25(金)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp8/16(日)~8/30(日) 草津音楽の森国際コンサートホール 他問 草津アカデミー・チケットサービス0120-949-932/0279-82-5663 http://kusa2.jp 紀尾井ホールが、今後の活躍に期待する才能を招いて旬の演奏を聴く『紀尾井 明日への扉』。第9回に登場するのは、東京芸術大学からドイツのハノーファー音楽大学に留学して研鑽を積む、ピアニストの阪田知樹だ。彼は最近こうした気鋭の若手を紹介する企画に引っ張りだこ。そのスケールの大きな演奏に、音楽ファンや業界が熱い期待を寄せていることがよくわかる。 彼が一躍注目を集めたのは、2013年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで最年少ファイナリストとなった19歳のとき。コンクールという場でもこだわりの選曲で聴衆を魅了したが、今回もまた、紀尾井ホールの響きを考慮したオリジナリティあるプログラムで、独特の感性を披露する。 このホールの響きは特にバロック作品との相性がよいと感じていたという 国内外から招聘される一流音楽家による講習と演奏会から成る草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル(音楽監督・西村朗)。36年目を迎える、日本の夏の音楽祭の老舗だ。豪華講師陣のレッスンも、実は私たち聴く側のファンにとっても示唆に富む内容だが、やはり気になるのは連日の演奏会。今年は「1815年ウィーン、ビーダーマイヤー時代、1915年ドビュッシーと20世紀の音楽」をテーマに、シューベルトとドビュッシーを中心に据えつつ、広範なレパートリーのプログラムが組まれている。 シューベルトでは、最晩年の傑作「ミ阪田は、前半にバッハから「マルチェッロのアダージョ」とフランス組曲第5番を置く。留学先で古楽器を学び、バロック音楽への興味が増しているというから、持ち前の粒立ちの良い音もますます磨かれていることだろう。そして得意とするリストから、「詩的で宗教的な調べ」より第3曲「孤独の中の神の祝福」。紀尾井ホールならではの「丸みのある響きで聴いてほしい」と意欲を示す。ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番では彼の豊かで生命力のある音を堪能サ曲第6番」(8/23)が楽しみ。毎年音楽祭の中日に置かれる、特別編成の合唱とオーケストラによる大規模コンサートだ。ウィーン・フィル勢が名を連ねるウィーン音楽プログラム(8/27)も見逃せない。ここでは昨年逝去した前音楽監督・遠山一行氏に捧げる西村朗の新曲も初演される(故人が愛したフォーレの「レクイエム」が引用される八重奏曲とのこと)。8/24にも遠山氏追悼コンサートと「偲ぶ会」がある。 ドビュッシーでは、名手ブルーノ・カできそうだ。 豊かな音楽性で、幅広い時代の多岐にわたる作品を着実に描き分ける。さらなる飛躍を目前に、軽やかなステップで前進する阪田の今を聴いておこう。ニーノと高橋アキによる2台ピアノ「白と黒で」を含む8/19公演や、ウェルナー・ヒンク、タマーシュ・ヴァルガ、遠山慶子が出演し、晩年のヴァイオリン・ソナタとチェロ・ソナタの両方が聴ける8/22公演が注目。 コンサートは毎日夕方16~18時なので、車はもちろん鉄道とバス利用でも日帰りが可能だが、そこは天下に名高い草津の湯。ぜひ一泊して、情緒豊かな温泉街の名湯もあわせて楽しみたい。©Ellen Appel-Mike Moreland/The Cliburnウェルナー・ヒンクタマーシュ・ヴァルガ遠山慶子ブルーノ・カニーノ高橋アキ

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