eぶらあぼ 2015.8月号
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36マティアス・ゲルネ ©Marco Borggreveヴィルジニー・ヴェレーズジャン=フランソワ・ボラスファビオ・ルイジ ©BALU Photography小澤征爾 ©Shintaro Shiratori8/9(日)~9/15(火) キッセイ文化ホール、まつもと市民芸術館、松本ザ・ハーモニーホール、あがたの森文化会館講堂 他問 セイジ・オザワ松本フェスティバル実行委員会0263-39-0001http://www.ozawa-festival.comセイジ・オザワ 松本フェスティバル名実ともに巨匠・小澤の音楽祭がいよいよ始動!文:山田治生 「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」は、今年から「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」に名称を変更した。“新フェスティバル”のメインは、2年ぶりに総監督・小澤征爾がオペラの指揮を執る、ベルリオーズの《ベアトリスとベネディクト》に他ならない。シェイクスピアの『空騒ぎ』を原作とする喜劇的なオペラで、ベルリオーズを得意とする小澤は、サンフランシスコ響やボストン響の音楽監督を務めていた時代から本作を取り上げてきた。ベアトリスを歌うヴィルジニー・ヴェレーズは、フランス出身の新進気鋭のメゾソプラノ。ベネディクトは、2014年にヨナス・カウフマンの代役でウェルテルを歌ってメトロポリタン・オペラにデビューしたジャン=フランソワ・ボラスが演じる。巨匠・小澤と才能ある若い歌手たちとのコラボレーションが本当に楽しみだ。また、2012年の《火刑台上のジャンヌ・ダルク》を手掛けたフランスの若手演出家コム・ドゥ・ベルシーズが洒落た舞台を見せてくれることだろう。 オーケストラ・コンサートでは、小澤はブラームスの交響曲第4番を振る。サイトウ・キネン・オーケストラとは1989年のヨーロッパ・ツアー以来の演奏。マエストロの円熟の至芸を聴くには最適の作品といえよう。演奏会前半にはロバート・スパーノ指揮でバルトークの「管弦楽のための協奏曲」もある。また、昨年の《ファルスタッフ》で好評を博したファビオ・ルイジが再登場し、今年はオーケストラ・コンサートでハイドンの交響曲第82番「熊」とマーラーの交響曲第5番を振る。 しかし、今年のハイライトは、9月1日の『マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート』に違いない。マルタ・アルゲリッチ、ナタリー・シュトゥッツマン、マティアス・ゲルネ、ジェームス・テイラー(!)ら豪華ゲストが総監督・小澤征爾の80回目の誕生日を祝い、マエストロ自身も指揮台に立つという。 また、小澤が指導に情熱を傾ける2つの室内楽アカデミー(小澤国際室内楽アカデミー奥志賀と小澤征爾スイス国際アカデミー)によるジョイント・コンサートにも注目。次代を担う若き弦楽器奏者たちのアンサンブルが聴ける。そのほか、マティアス・ゲルネのリサイタル、OMFファミリー・オペラでのナタリー・シュトゥッツマン指揮小澤征爾音楽塾オーケストラによる《子供と魔法》なども楽しみだ。 名実ともに小澤征爾の音楽祭となったフェスティバル、一層の充実が期待される。7/26(日)19:00 東京オペラシティ3F 近江楽堂問 秩父ギター教室080-5080-7399笹久保 伸(ギター) 道行く人よ、道はない~高橋悠治ギター作品集CD発売記念リサイタルギターで邂逅する作曲者と奏者のベクトル文:江藤光紀 先だってコジマ録音からリリースされた『道行く人よ、道はない 高橋悠治ギター作品集』(ALCD-104)は、“闘う作曲家”高橋悠治のギター作品を初期から集めたものだ。数理的思考から音楽による社会的アンガージュマンを経て、枯淡の境地を思わせる最近作まで、その歩みが伝わってくる一枚だが、ここで鮮やかな演奏を聴かせる笹久保伸も、ユニークな経歴の持ち主。クラシック・ギターを学んだ後、ペルー・アンデス音楽の精神を現地で身に付けた。帰国後は故郷・秩父を拠点に「秩父前衛派」を名乗って、活動をアート、映画などにも広げている。自然の息吹を歌へと変えつつ、現代日本社会に鋭い問いを発する、いまどき珍しい気骨の人だ。高橋作品の解釈者として実にふさわしい。 その笹久保が7月末に東京オペラシティにある近江楽堂でCD発売記念リサイタルを開く。プログラムは高橋の作品をメインにしつつ、笹久保のもう一つの柱である南米のギター音楽も配されている。“プリペアドギター”による笹久保の自作も面白そうだ。

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