eぶらあぼ 2015.8月号
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34東京都交響楽団 「作曲家の肖像」シリーズ Vol.104 イギリス期待の俊英が披露する自国の傑作文:オヤマダアツシ尾高忠明(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団記念イヤーに光を放つ絶妙なシベリウス・プログラム文:柴田克彦8/2(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp第291回 定期演奏会9/12(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp サイモン・ラトルやダニエル・ハーディングといった先例が物語るように、イギリスからは時おり20歳そこそこで注目を集め、キャリアを積み上げていくヤング・マエストロが出現する。1974年生まれのエドワード・ガードナーも、その列に名を連ねる一人だろう。2007年からイングリッシュ・ナショナル・オペラの音楽監督を務め、一方ではバーミンガム市交響楽団の首席客演指揮者として活躍。15年の秋からはアンドルー・リットンの後任としてベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団(ノルウェー)の首席指揮者に就任する俊英だ。11年には栄誉ある「プロムス・ラスト・ナイト」の指揮者として全世界に知られることとなり、近年はCHANDOSレーベルから次々にCDをリリースして日本でも知名度を上げている。 しかし来日は10年1月にN響へ客演したのみ。そのためイギリスの作曲家をテーマにした都響の「作曲家の肖 シベリウスの音楽には、誇張された表現や華美な音が似合わない独特の空気感がある。現在の日本で、そうした抑制の美学をもって雄弁に語り得る“シベリウス指揮者”の代表格といえば、尾高忠明であろう。それは東京でも聴かせた札響の交響曲シリーズ等で証明されている。 その尾高が、9月の東京シティ・フィル定期でシベリウスを指揮する。これは見どころの多い注目のコンサートだ。まずは、組曲「恋人たち」、ヴァイオリン協奏曲、交響詩「4つの伝説曲」という演目が、生誕150年の今年数多いシベリウス・プログラムの中でも稀少。「恋人たち」は、繊細な弦楽の調べによる切なくも美しい名品で、札響でも取り上げた尾高が、やはり十八番の英国音楽にも似た清澄な感銘を与えてくれる。民俗叙事詩「カレワラ」に基づく「4つの伝説曲」は、有名な「トゥオネラの白鳥」のイングリッシュ・ホルンを軸とした瞑想的な情趣、「レンミンカ像」は、貴重な来日公演となる。プログラムは彼がもっとも得意とする作曲家の一人、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」と、ホルストの名曲「惑星」。ガードナーを知る2曲であると同時にイギリス音楽入門にも最適な2曲イネンの帰郷」の弾んだリズムや迫力など、起伏に富んだ聴き応え充分の音楽。尾高は、2010年に札響、14年にN響でも取り上げて絶賛されただけに、自在の名演が期待される。稀代の名曲・ヴァイオリン協奏曲の独奏は、パリを拠点に活躍する韓国の名手、ドン=スク・カン。この共演は尾高の希望によっであり、さらには楽員のソロイスティックな妙技も含め、都響の機能的なアンサンブルを堪能できる2曲。同国には指揮の先達として「ガーディナー」がいるが、「ガードナー」の名前と音楽も、ぜひ覚えてください。て実現したというから、息の合った演奏が展開されること必至だ。 そして、高関健の常任指揮者就任披露の「わが祖国」で濃密な快演を聴かせるなど、シティ・フィルはいま意気軒昂。手の内に入った尾高と共に奏でるシベリウス傑作集は、記念イヤーにひと際輝く充実の公演となるに違いない。エドワード・ガードナー ©Benjamin Ealovegドン=スク・カン 尾高忠明 ©Martin Richardson

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