eぶらあぼ 2015.8月号
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2198/28(金)~8/30 (日) シアタートラム問 ダンスインディード090-4429-5747SePT独舞vol.22 黒沢美香ソロダンス特集『この島でうまれたひと』次世代のダンサーと身体でつなぎ、伝える文:乗越たかお黒沢美香『Wave』(1985年) 撮影:スタッフ・テス 少し意外な気がした。 世田谷パブリックシアターの『SePT独舞』シリーズは、期待の新人の登竜門的なイメージがあったからだ。しかし今回登場するのは30年以上トップランナーであり続けている黒沢美香なのである。今回は3本立てだが、これがなかなか意義深い組み合わせになっているのだ。 というのも3作品のうち、ふたつは「1985年に初演された作品」なのである。まさにコンテンポラリー・ダンスの黎明期だ。なんと黒沢のソロデビュー作『Wave』が本人によって甦る。また『6:30AM』は「ラジオ体操第二」をモティーフにした作品で、オーディションで選んだ5人のダンサーが出演する。 コンテンポラリー・ダンスも今や次の世代に「踊り継ぐ」時期に来ているが、『SePT独舞』も、そういう時代に沿った使命を果たそうとしているようだ。いずれも30年という時を超えた作品が、現代のダンサーと観客にどう伝わっていくのかが見所である。 そして3本目にはバルトークの曲による黒沢自身のソロ『この島でうまれたひと』。これは新作で、他の2本との比較も面白いだろう。 離れた時空をダンサーの身体でつなぎ、伝えていく公演になりそうだ。8/21(金)~8/23(日) 新国立劇場(中)問 小林紀子バレエ・シアター03-3987-3648 http://www.nkbt-tokyo.com小林紀子バレエ・シアター『ミックス・プログラム』『グローリア』日本初演含む魅惑的な3作文:石村紀子『グローリア』 Photograph by Leslie E.Spatt 英国バレエと縁が深い小林紀子バレエ・シアター。次回公演はマクミラン作品2演目を含んだトリプルビルで、非常に魅力的な内容となっている。注目は日本初演となる『グローリア』。第一次世界大戦で散った若き戦士たちを弔う名作である。戦争によって青春を奪われてしまった若者の悲劇をマクミランらしい雄弁な振付で描き出す。胸が詰まる作品だ。一転して『ソワレ・ミュージカル』は、祝祭ムード溢れる華やかな作品。音楽はロッシーニによる原曲をブリテンが編曲したものが使用され、流麗なパ・ド・ドゥやダイナミックなパ・ド・カトルなど、多様な踊りで見応えがある。軽快なリズムに気分が高揚する作品だ。そして最後は古典の名作『ライモンダ』より第3幕の抜粋。異国情緒溢れる重厚で典雅な踊りがクラシックバレエの真髄を感じさせてくれる。ゲストはロマン・ラツィック(ウィーン国立歌劇場バレエ)、エステバン・ベルランガ(スペイン国立ダンスカンパニー)。9/8(火)13:00 サントリーホール問 サントリーホールチケットセンター  0570-55-0017http://www.suntory.co.jp/suntoryhall日本フィル&サントリーホール とっておきアフタヌーン Vol.2 『歌舞伎 × オーケストラ』「春の祭典」と歌舞伎との出会い文:高橋彩子尾上右近 様々なコラボレーションによって、平日の午後にクラシック・コンサートの新たな楽しみを提供する「日本フィル&サントリーホール とっておきアフタヌーン」シリーズ。今年5月の第1回は、竹本泰蔵の指揮で、ミュージカルで活躍する田代万里生、春野寿美礼、濱田めぐみが歌ったが、第2回の今回は、ストラヴィンスキー「春の祭典」を、日本フィル正指揮者・山田和樹のタクトのもと、歌舞伎俳優・尾上右近が舞う。右近にとってオーケストラと踊るのは初めての経験だ。 この選曲は、山田によるもの。“歌舞伎俳優が一人でオーケストラと舞う”という企画を提案された時、直感的に「春の祭典」が浮かんだという。拍子といいリズムといい、日本舞踊で通常用いられる音楽とは異なる難曲だが、幼い頃から気合に満ちた踊りで客席を沸かせ、近年は端正な踊りを披露している右近だけに、渾身の舞で観客を魅了することだろう。右近23歳、山田36歳と、若さ溢れる二人の化学反応にも期待したい。ほかにチャイコフスキー「くるみ割り人形」より「花のワルツ」と幻想序曲「ロメオとジュリエット」を演奏。

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