eぶらあぼ 2015.8月号
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146SACDCDCDCDべートーヴェン:チェロ・ソナタ全集/フルニエ&ケンプモーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」&第27番/アファナシエフ春の夜~ドイツ・ロマン派名曲集/クリッヒェルヴァイオリン音楽の泉~18世紀イタリアの名手たち/大江戸バロックベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番~第5番、「マカベウスのユダ」の主題による12の変奏曲、《魔笛》の主題による7つの変奏曲、《魔笛》の主題による12の変奏曲ピエール・フルニエ(チェロ)ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」・第27番ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)円光寺雅彦(指揮)読売日本交響楽団シューマン(リスト編):春の夜/メンデルスゾーン:「無言歌集」より、厳格な変奏曲/メンデルスゾーン(リスト編):歌の翼に/シューベルト(リスト編):ます、魔王 他アレクサンダー・クリッヒェル(ピアノ)ボンポルティ:インヴェンション第4番エックレス:ソナタ第11番ヴェラチーニ:12のアカデミック・ソナタop.2より第7番・第8番・第11番・第12番大江戸バロック[桐山建志(バロック・ヴァイオリン)&大塚直哉(チェンバロ)]収録:1965.2、パリ サル・プレイエル(ライヴ)TOWER RECORDS/ユニバーサルミュージックPROC-1721/2(2枚組) ¥1714+税収録:2014.6/20、サントリーホール(ライヴ)日本コロムビアCOGQ-76 ¥3000+税ソニーミュージックSICC-30226 ¥2600+税コジマ録音ALCD-1152 ¥2800+税20世紀を代表するふたりの巨匠による名盤中の名盤。パリでのライヴ録音だが、改めて聴いても驚異的な水準の名演だ。フルニエは常に穏やかな表情で力みは皆無ながら、完璧な技巧とフレージングを聴かせ、なんといっても唯一無二のノーブルな音色の魅力が格別。チェロ演奏のひとつの理想型だろう。ケンプのピアノも、彼の特長である卓越した和声感と深い落ち着きのある美音がすばらしく、チェロと親密に語り合い、万全なサポートで融合していく。これほど品格ある音楽の志向性が一致したデュオは滅多になく、幸福感あふれるベートーヴェンを堪能できる。今こそじっくり味わいたい至高のアルバムだ。(林 昌英)以前よりも常識的な演奏になってきた、という声も聞こえるアファナシエフだが、これは依然として比類なく破格である。一つひとつの音に鉛をぶら下げたような、重く貫通力のある粒立ちと鋼のごとき硬質のタッチが、“軽やかな身体性”“自由闊達さ”などのモーツァルトのイメージを完膚なきまでに破壊。カントやヘーゲルの書物を朗読する哲学者のごとき語り口で、大地を踏みしめるように悠然と進んでいく。ブルックナーの先駆者かと思えてくるほどに、モーツァルトが宇宙的規模に拡大され、その美が思弁的に解明されるのである。そこにアファナシエフならではの、唯一無二の衝撃力がある。(江藤光紀)輸入盤では先に発売されていた当盤、来日に合わせて国内盤発売。一聴すれば分かるように、録音時弱冠23歳のクリッヒェルの力量には端倪すべからざるものがある。響きの美しさとセンス満点で趣味の良い“歌わせ方”は天性のものだろうが、これがシューベルトらの歌曲のリストによるロマンティックな編曲が多数収録されている当盤では最大の武器となる。しかし、「魔王」では凄まじいまでの爆発力をも見せつけ、その表現レンジの幅広さにも驚嘆。さらに、「厳格な変奏曲」では明快な構築力もさりげなく見せつける。クリッヒェル、将来大成は間違いないのではないか。(藤原 聡)ヴァイオリン学習者にとってはなじみ深い、「エックレスのソナタ」。その第2楽章が、実は18世紀イタリアの作曲家ボンポルティの「インヴェンション第4番」からの“パクリ”であることは、知る人ぞ知る事実だ。しかし、この2曲を併せて録音したのは、当盤が世界初だろう。しかも、桐山は前者でイギリス風、後者ではイタリア風を意識した装飾やテンポ取りを選択しているのも凄い。後半でも、やはりなじみ深いヴェラチーニのニ短調ソナタ終楽章を核に、収録された曲集全体を俯瞰。「スズキの教則本」を出発点としつつ、プロならではの技が、未知の世界へと誘ってくれる。(寺西 肇)

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