eぶらあぼ 2015.8月号
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144SACDCDCDCDモーツァルト・アルバム/高田泰治シューマン:ピアノ五重奏曲&ピアノ四重奏曲/カテーナ&サヴィニオ弦楽四重奏団ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」/インバル&都響オード・トゥー・ジョイ~歓喜の歌/昭和サクソフォーン・オーケストラモーツァルト:ロンドK.485、アダージョK.540、ソナタ第3番K.281・第14番K.457、幻想曲K.475高田泰治(フォルテピアノ)シューマン:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)サヴィニオ弦楽四重奏団ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ノヴァーク版第2稿)エリアフ・インバル(指揮)東京都交響楽団ラヴェル(長生淳編):ラ・ヴァルス/長生淳:フォー・フレンズ、パガニーニ・ロスト/ベートーヴェン(長生淳/福本信太郎編):歓喜の歌~交響曲第9番より第4楽章 他野原武伸、福本信太郎、榮村正吾、有村純親(以上指揮)昭和音楽大学 昭和サクソフォーン・オーケストラナミ・レコードWWCC-7788 ¥2500+税カメラータ・トウキョウCMCD-28320 ¥2800+税収録:2015.3/18、東京文化会館(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00565 ¥3200+税マイスター・ミュージックMM-3052 ¥2816+税まずアルバム冒頭の「ロンド ニ長調K.485」、そして初期のソナタ第3番の涼やかで活き活きとした響きに惹き込まれる。モーツァルト時代のフォルテピアノで語るように演奏するのは、チェンバロ&フォルテピアノ奏者として注目されている高田泰治。日本のみならずドイツでも高い評価を得ている実力派だ。アルバム後半に収録された「幻想曲 ハ短調K.475」では、鮮烈な間の取り方と陰影を含む音色使いに驚かされる。続くソナタ第14番ではさらに悲劇的な色合いを増す。モーツァルトの鍵盤音楽がもつ明暗または静動の豊かなコントラストを存分に味わえる一枚。(飯田有抄)ライナーノートでも指摘されているが、ドイツ生まれのシューマンが幼少期からイタリアに憧れていたことに改めて納得させられた。イタリア気鋭の名手たちがシューマンの室内楽を演奏すると、随所に思わぬ歌心が滲んでいて、心がほっこりさせられる。上下に往来する音階が歯切れよく弾かれることが多いピアノ五重奏曲のスケルツォが、優雅な運びになっているのはその好例だ。また、当盤はしなやかで凛としたピアノと弦の音色も聴きどころ。中でも、ピアノ四重奏曲の郷愁あふれるアンダンテ・カンタービレが温かく典雅に綴られているのは、実に感動的だ。(渡辺謙太郎)インバル&都響のブルックナー・シリーズ第7弾。まさに“インバル節”全開の豪演だ。ほぼ60分という短い演奏時間がそれを物語っているが、フレージングや音量バランス、テンポの変化が細部に至るまで徹底的に突き詰められており曖昧に流す箇所は皆無。例えば第1楽章コーダのトゥッティとホルンのバランス、あるいは終楽章コーダでの弦楽器によるトレモロのアクセント。これはそれ単体で聴くと奇異に映るかも知れないが、楽曲の構造を分りやすく抽出せんとする指揮者の美意識のなせる業で、全曲にちりばめられたこういう工夫には大いに納得させられる。都響の演奏力は万全という他ない。(藤原 聡)昭和音楽大学・短大のサクソフォーン専攻生約100人による大アンサンブルが紡ぐ迫力、そして表現の繊細さに、この楽器に対するイメージ自体が覆るはず。ベートーヴェン「第九」の最終楽章に材を得た表題作は、はじめのうちこそ原曲に沿うものの、バリトン・ソロ部分になると、しなやかな重奏に。ジャズの感覚も採り込みつつ、グルーヴ感も豊かに音楽の愉悦を謳い上げる。あるいは、ラヴェル「ラ・ヴァルス」も、混沌とした冒頭部やきらびやかなコーダ部など、「本当はこの楽器のための作品では…」と錯覚するほど。管弦楽のフルオーケストラを凌駕するほどの、瑞々しい響きで魅せる。(笹田和人)

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