eぶらあぼ 2015.8月号
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142SACDSACDCDCDバッハのオルガン万華鏡/椎名雄一郎リスト:ピアノ作品集/若林 顕郭元:室内楽作品集/アンサンブル・ノマドウィーンの薫り~フルート・ソナタ集/工藤重典&工藤セシリアJ.S.バッハ:前奏曲とフーガBWV541・BWV545、〈いと高きところにいます神にのみ栄光あれ〉BWV711・BWV715、小フーガ ト短調、〈おお、汝まことの神よ〉BWV767、トリオ・ソナタ第3番椎名雄一郎(オルガン)リスト:ハンガリー狂詩曲第2番、コンソレーション第3番、オーベルマンの谷、メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」、愛の夢第3番、スペイン狂詩曲/ワーグナー(リスト編):イゾルデの愛の死 他若林 顕(ピアノ)郭元:顫(ふる)える響きⅡ、聖なる鳥を創る眼、ゆりかごの曲、靄(もや)、滲(にじむ)Ⅱ、滲(にじむ)Ⅲアンサンブル・ノマドクレメンティ:ソナタ ト長調/モーツァルト:ソナタ ヘ長調K.376(374d)/シューベルト:ソナチネ第1番/ツェルニー:デュオ・コンチェルタント ト長調/ドップラー:ハンガリー田園幻想曲工藤重典(フルート)工藤セシリア(ピアノ)コジマ録音ALCD-1151 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCT-00114 ¥3200+税コジマ録音ALCD-107 ¥2800+税ソニー・ミュージックダイレクトMECO-1029 ¥3000+税7/22(水)発売今年5月には10年を費やしたバッハのオルガン作品全曲演奏を完遂、『パイプオルガン入門』(春秋社)を出版するなど、啓蒙活動にも力を注ぐ実力派奏者。北ドイツのバロック期の銘器を使っての録音第2弾では、ハ長調とト長調、ふたつの「前奏曲とフーガ」を大枠に。有名な小フーガやコラールに基づく3曲、器楽的な発想を移殖したトリオ・ソナタを配し、万華鏡のように変幻自在なバッハのオルガン作品の世界を俯瞰する。椎名のプレイには、作品と楽器へきっちり対峙する真摯さと、聴く者に想像力を与える愉悦とが同居。1台のオルガンが構築する、広大な宇宙への扉を開け放つ。(寺西 肇)自身が卓越したピアニストだったこともあり、編曲作品を含む多様な傑作を残したリスト。今年50歳を迎える若林が発表した最新盤のオール・リスト作品集には、その魅力がみごとに凝縮されている。「ハンガリー狂詩曲第2番」で見せるラッサンとフリスカの鮮やかなコントラスト。「コンソレーション第3番」や「愛の夢第3番」で際立つ静謐な円熟味。そして、「メフィスト・ワルツ第1番」やワーグナー「愛の死」の緻密さと豊かなスケール。いずれも日本ピアノ界を代表するヴィルトゥオーゾらしい演奏で、立体的で深みのある表現力と、絶妙なバランス感覚が光る。(渡辺謙太郎)郭元は東京芸大で作曲を学んだ後、中国で創作活動を行っている。2009年から12年に書かれた6作の室内楽作品を収録。これらの多くは水墨画などの中国の芸術からインスピレーションを受けているが、アジアの楽器を用いているのは「靄」のみ(チベットの真鍮鉢)で、サクソフォン四重奏から目くるめく響きを引き出した「聖なる鳥を創る眼」をはじめ、イメージを大胆に展開する腕前に熟練の技が見られる。「顫える響きⅡ」のピアノとクラリネットや「滲Ⅱ」の十三絃箏のデュオも、旋律と伴奏の関係を超えたアクロバティックな交感へと発展。「ゆりかごの曲」ではソプラノとヴィオラがパフォーマティヴに交差する。(江藤光紀)フルート界の重鎮・工藤重典が、その楽器の音色に魅せられて50年が経った。節目の年を記念し、昨年デビューした愛娘のピアニスト、工藤セシリアとのデュオ・アルバムを完成させた。細部まで完成度を極めたエレガントなデュオが“ウィーンの風”を届ける。モーツァルトがウィーンで活動し始めた年に書いた「ソナタ ヘ長調」、シューベルトの「ソナチネ第1番」は、いずれもヴァイオリンのための作品を工藤自身がアレンジしたフルート版。ツェルニーの「デュオ・コンチェルタント」は、2つの楽器が伸びやかで技巧的なパッセージを呼応させていく様が圧巻だ。(飯田有抄)

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