eぶらあぼ 2015.7月号
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43ダニール・トリフォノフ(ピアノ) 異次元に誘う独創的なピアニズム文:高坂はる香読響サマーフェスティバル2015 三大協奏曲話題の個性派が閃光を放つ、名協奏曲の熱き競演文:柴田克彦10/29(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 10/28(水)青山音楽記念館バロックザール(075-393-0011)8/21(金)18:30 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 今世界で注目を集める20代の若手ピアニストの中でも、一種独特の存在感を放っている、ダニール・トリフォノフ。音楽に没頭し自然発生的に生み出される演奏で、聴く者を“トリフォノフ・ワールド”に導く。過去の巨匠や同時代の名手など、彼を他の演奏家と比べることは無意味でしかない。そう感じさせる強い独創性を持つピアニストだ。 2011年のチャイコフスキー国際コンクール優勝から4年。多忙な演奏活動を続けるトリフォノフだが、来日の度にレパートリーを変え、新たな一面を見せてくれる。今年のプログラムは、バッハ、シューベルト、ブラームス、ラフマニノフ。これまで多く取り上げてきたショパンやリストは入っていない。 前半はバッハ=ブラームスの「左手のためのシャコンヌ」というチャレンジングな作品で冒頭を飾る。続くシューベルトのピアノ・ソナタ第18番「幻想」、ブラームスの「パガニーニの主題による 8月に見過ごせないのが、恒例の読響『三大協奏曲』。なぜなら今年のソリスト陣が、話題性抜群の注目株揃いだからだ。 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾くのは、1999年生まれの服部百音(もね)。10歳から数々の国際コンクールで優勝している彼女は、今年15歳でアシュケナージ指揮のEUユース管と共演した。これは演奏に感心したアシュケナージの招きによるもの。彼女は、イタリアで聴衆と楽団員全員の大喝采を浴び、スイスではスタンディング・オベーションを巻き起こした。メンデルスゾーンはその際の演目ゆえ、ここでぜひ生演奏に触れたい。 ドヴォルザークのチェロ協奏曲を弾くのは、87年デンマーク生まれのアンドレアス・ブランテリド。14歳で協奏曲デビューを果たした彼は、既にウィーン響やバーミンガム市響など多数の一流オーケストラと共演し、ムジークフェライン、カーネギー・ホールなどでリサイタルを開催。CDもリリースしている。変奏曲」第1巻では、自由で枠に捉われない想像力豊かな演奏になることだろう。 そして後半、彼が敬愛するラフマニノフの作品からピアノ・ソナタ第1番を披露。近年取り上げるピアニストが増えてはいるものの、その長さと技巧的な難しさにより生演奏を聴ける機会は多くない。しかし、作曲家の頭に渦巻くファンタジー、思想、そして祖国や音楽への愛情があふれ出さんばかこちらは一線級のキャリアを誇るだけに、その個性をじっくりと味わいたい。 そしてチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を弾くのがHJリム。韓国生まれの彼女は、You Tubeを発端に世界で旋風を巻き起こしている超個性派。パリ音楽院を首席卒業後、EMIと契約し、CDデビューとしては異例のベーりの名作だ。この作品を奏でるとき、おそらくトリフォノフに何かが“降臨”することになるのではないか…。そんな予感がする、必聴のプログラムだ。トーヴェンのソナタ全集で、さらに脚光を浴びた。日本でも皆を仰天させた彼女は、チャイコフスキーも弾いてはいるが、奔放でライヴ感満点だけに今度はどうなるのか? 実に楽しみだ。 バックは下野竜也指揮の読響だから超安心。あとは3人の妙技に興味深く浸ればいい。©Alexander IvanovHJリム ©Warner Classicsアンドレアス・ブランテリド ©Sussie Ahlburg服部百音
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