eぶらあぼ 2015.7月号
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34沼尻竜典 歌劇《竹取物語》 日本初・舞台上演日本発オペラに新たな名作が誕生文:宮本 明都響スペシャル 「名曲の夏」珠玉の小品集に全力投球文:飯尾洋一8/8(土)14:00、8/9(日)14:00 びわ湖ホール(中)問 びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp7/19(日)14:00、7/20(月・祝)14:00 サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp 沼尻竜典が、芸術監督を務めるびわ湖ホールで自作のオペラ《竹取物語》を振る。指揮と並行して桐朋学園で三善晃に作曲を学んだ沼尻は、指揮者として本格的なキャリアを歩み出す以前にすでに合唱曲の楽譜も出版していた。オペラ《竹取物語》の原作は、もちろんあの「かぐや姫」の物語。三善門下の兄弟子に当たる池辺晋一郎が館長を務める横浜みなとみらいホールの委嘱作品で、2014年1月に同ホールにおいて演奏会形式で初演された。当初から、横浜のパートナー都市であるベトナム・ハノイのオペラハウスでの舞 これは「ありそうでなかった」プログラムではないだろうか。7月19日と20日の2日間連続で開催される小泉和裕指揮都響スペシャル「名曲の夏」は、いわゆる「珠玉の小品」と呼ばれる名曲を集めている。2日間の公演内容はそれぞれ異なり、両日をセット券(2割引)で聴くこともできれば、一公演のみを聴くこともできる。 19日は、ワーグナー楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》前奏曲、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」、スッペ喜歌劇《軽騎兵》序曲、リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」他。20日は、J.シュトラウスⅡ喜歌劇《こうもり》序曲、ヴォルフ=フェラーリ歌劇《マドンナの宝石》間奏曲第1番、リスト「ハンガリー狂詩曲」第2番、チャイコフスキー序曲「1812年」他。いずれもしばしば演奏される有名曲だが、こうして2日間続けて集中的に演奏さ台上演を想定したプロジェクトで、ハノイでの舞台形式初演も今年2月、本名徹次の指揮、日本・ベトナム合同キャストにより行なわれて成功を収めた。栗山昌良の演出で新たに制作される今回のプロダクションが、日本で初めての舞台上演ということになる。出演は、主役かぐや姫を横浜とハノイでも歌った幸田浩子が演じるほか、翁に清水良一、媼に永井和子、帝に与那城敬ら、今回からの新たなキャストも加わる。れるとなると、よくある名曲コンサートとはずいぶん違った印象を受けるだろう。マーラーやブルックナーといった大曲を得意とする都響が、あえて小品集に全力投球をするといったニュアンスが浮かんでくる。あたかも「小品を軽んじるなよ」といったメッセージが込められているかのよう。 指揮の小泉和裕はかつて名指揮者カラヤンの薫陶を受けているが、そういえばこれら小品はカラヤン得意のレパートリーでもあった。終身 沼尻は「昭和の歌謡曲のスタイルを意識して作曲した」と述べている。「歌謡曲風」かどうかはともかく、はっきりとしたメロディと親しみやすいハーモニーに彩られた、大人から子供まで楽しめる音楽だ。全5景構成の台本は沼尻自身の書き下ろし。作曲の事情に合わせて手直しできるという利点があったからかもしれないが、テキストもとても聴き取りやすい。夏休みの週末、家族でオペラを楽しみに出かけるのも素敵だ。名誉指揮者を務める長年のパートナー都響とともに、作品の真価を知らしめてくれることだろう。小泉和裕 ©Prague Spring/Ivan Malý左より:沼尻竜典 ©RYOICHI ARATANI/幸田浩子/永井和子/清水良一 ©篠原栄治/与那城 敬 ©Kei Uesugi

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