eぶらあぼ 2015.7月号
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─ まずは開始の経緯とコンセプトを。福田:Hakuju Hallが完成してすぐに何度か演奏し、ギターにピッタリなホールだと思っていました。そこに何か企画を…とのお話をいただき、大先輩の荘村さんにお声をかけて、2006年にこのフェスタを始めました。荘村:福田さんは20年来の飲み友達(笑)。なのにジョイントの会は一度もやったことがなかった。ですから喜んで参加させていただきました。福田:一つの楽器に特化した、今井信子さんが主宰する「ヴィオラスペース」をイメージし、初回の06年は没後10年の武満徹をテーマに開催しました。以降も地域やジャンルなどのテーマを設け、2人のデュオ、ギター以外の演奏家や歌手の招聘、新人ギタリストの紹介、作品の委嘱─デュオの曲が原則─を毎回行っています。1公演を複数のテーマに分割するアイディアも最初から継続していますね。─ これまでの9回で思い出に残る出来事は?荘村:第1回のテーマが現代音楽の作曲家にもかかわらず、3日とも超満員になったこと。これでやれるという確信を持ちました。福田:毎年の委嘱作品が、完成時期も含めてどうなるかわからない。特に久石譲さんの曲は難しくて大変でした。でもファジル・サイの曲など、その後も国内外で演奏されている作品も生まれています。荘村:Hakuju Hallさんの多大なご協力も10年続いた大きな要因ですね。それにここは、奏者の様々なニュアンスが100パーセント伝わる、ギターにとって最高のホールです。─ 今年の見どころは?福田:「Viva!エスパーニャ2」と題して、第2回以来のスペインがテーマ。第2回に出演時には若い芽ながら、今やフラメンコ・ギターのスター奏者となった沖仁さんの出演は、大きな話題です。それから小林沙羅さんのスペイン歌曲。彼女も注目の才能で次代のスターです。あとはフランシスコ・ベルニエール。彼は今セビリア王立音楽院の教授で、スペインの若い世代を牽引しているギタリストです。また今回委嘱作品を作曲したアントン・ガルシア・アブリルさんは、ロドリーゴの後、スペインで一番名のある作曲家で、ヴァイオリニストのヒラリー・ハーンにも曲を書いています。曲は「ヒラルダへの讃歌」と題したセビリアへのオマージュ。既に楽譜は届きましたが、技術的にも音楽的にも大変な難曲です。日本のギター界を牽引し続けている荘村清志と福田進一がプロデュースする『Hakuju ギター・フェスタ』が、今夏で10周年を迎える。荘村:でも、我々の長年の経験を生かして、良い演奏にします。あと最終日は、松尾俊介さんと朴葵姫さんも出演します。2人とも以前新人紹介の公演に出ましたが、今や有名になりました。今回はファジル・サイの曲などを演奏し、我々とのデュオの後、ベルニエールさんも加わってクインテットで終わる形。面白い演奏会になりますね。─ 6月には、お二人のデュオCDもリリースされますね。荘村:実は私、デュオの録音は初めて。まずはギター・フェスタの委嘱作から、久石譲、ファジル・サイ、ディアンスの曲を選び、映画音楽の「ニュー・シネマ・パラダイス」、「ディア・ハンター」のカヴァティーナ、中間的なファリャやグラナドスなどを加えました。3ブロックに分けられますが、一環したトーンがあって、分け隔てを感じないと思います。おそらくそれは、お互いの気持ちがわかり合えるようになった長い歴史の賜物。いい仕事ができたという充実感があります。福田:私と荘村さんは、左手の指遣いもタッチも、楽器のタイプも全然違う。でもギターのデュオで大事な、6本の弦×2台の音のブレンドが上手くいきました。これは2人が音響をよく知るHakuju Hallで録音した点も大きい。別々の長い録音キャリアで培ったノウハウが、ホールのおかげで自然にブレンドされたとの感触があります。荘村:録音の1ヵ月前に、ホールで4日間綿密に練習して臨んだ点も、これまでとは違いますね。福田:おなじみの映画音楽も、我々との共演回数が一番多いギタリスト、鈴木大介さんにアレンジを頼みましたので、それぞれの音色が想定されています。あと私がプーランク、荘村さんがグラナドスと、留学した国の音楽を編曲しているのも聴きどころです。─ 最後にお互いへの思いを。荘村:福田さんは尊敬する素晴らしい演奏家。我々はまだ山をどんどん登っていこうとしていますが、その意味でも凄い。新しいCDを聴くと、また一歩上に昇り詰めていった感じがします。福田:荘村さんは、僕がギタリストを目指した14歳のときにはもうテレビに出ていた方。大先輩であり、回りの人が皆好きになってしまう、根っからのスターです。なので既にパートナーがいても良かったのに、時が私を待っていた。これには本当に感謝しています。福田進一/大阪生まれ。1981年パリ国際ギターコンクール優勝。ソロ活動、室内楽、N響をはじめとする内外のオーケストラとの共演などで国際的な評価を得る。今世紀に入り、既に世界20ヵ国以上でリサイタルを開催。平成19年度外務大臣表彰を受賞、平成23年度第62回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。発表したCDはすでに80枚に及び、2014年にはナクソスレコードより『武満徹作品集』がワールドワイドでリリースされた。現在、上海音楽院、大阪音楽大学客員教授。Prole荘村清志/実力、人気ともに日本を代表するギター奏者として、ソロ活動に加えて、フルート、ピアノ、声楽などとの共演にも積極的に取り組み、ギターの魅力を様々な形で伝えている。2007年にはNHK教育テレビ「趣味悠々」に講師として出演。09年ビルバオ交響楽団と共演したCD『アランフェス協奏曲』をリリース、日本ツアーも行い好評を博した。14年デビュー45周年を記念して東京にて協奏曲3曲のコンサートほか、各地でリサイタルを行い円熟した演奏を聴かせた。現在、東京音楽大学客員教授。取材・文:柴田克彦 写真:中村風詩人荘村清志 ×福田進一Kiyoshi Shomura/ギター Shin-ichi Fukuda/ギター interview 30
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