eぶらあぼ 2015.7月号
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174SACDCDCDCDクルト・ヴァイル Berlin‒Paris‒New York/奈良ゆみファンタジー/清水真弓美しいアップライトピアノ~連弾の悦び~/浜松市楽器博物館コレクションシリーズ53マイコ・ミュラー プレイズ J.S.バッハ Vol.5クルト・ヴァイル:水に溺れた娘のバラード、赤いローザ、モリタート、『マリー・ギャラント』より、セーヌ哀歌、ナナの歌、スピーク・ロウ、愚かな心、星空に消えて 他奈良ゆみ(ソプラノ)寺嶋陸也(ピアノ)ボザ:バラード/ピースリー:アロウズ・オブ・タイム/サン=サーンス:カヴァティーナ/ヒンデミット:トロンボーン・ソナタ/シューマン:幻想小曲集/ヨルゲンセン:ロマンス 他清水真弓(トロンボーン)フランソワ・キリアン(ピアノ)ドビュッシー:小組曲/フォーレ:組曲「ドリー」/プーランク:4手のためのソナタ/フランセ:ルノワールによる15人の子供の肖像/ラヴェル:マ・メール・ロワ 他小倉貴久子、羽賀美歩(ピアノ)J.S.バッハ:フランス組曲第4番、半音階的幻想曲とフーガ、カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」、イギリス組曲第3番 他マイコ・ミュラー(チェンバロ)コジマ録音「レコーディング&リハーサル・ショットDVD」付(初回限定特典)ALCD-7189/7190(2枚組) ¥3400+税オクタヴィア・レコードOVCC-00115 ¥3200+税コジマ録音LMCD-2032 ¥2900+税ナミ・レコードWWCC-7786 ¥2500+税現代作品やフランス音楽での際立った活動で自身の確固たる世界を築いている奈良ゆみのヴァイル集。代表曲を散りばめつつ、アメリカでの晩年の作品までを年代を追って収録しているので、作曲家の変化も、逆に変わらない味も見渡すことができる。パリ時代のミュージカル『マリー・ギャラント』から7曲が選ばれているのは特徴的。演劇的な語りのニュアンスも効果的に生かしつつの声楽的なアプローチ。ジャンルを超えたさまざまな歌手たちの個性的なヴァイルの中では正統派に位置付けられるだろう。収録の様子を収めたボーナスDVDからも彼女の思いが伝わる。(宮本 明)慶應義塾大学を出ながら、リンツ・ブルックナー管を経て南西ドイツ放送響の首席奏者を務める、異色の女性トロンボーン奏者の初CD。同楽器の定番曲中心で、むろんテクニックも申し分ないが、何より感心したのは音楽的な訴求力の高さ。全体に自然かつ巧みなフレージングが光っており、その表現はデビュー盤とは思えないほど豊かだ。唯一のアレンジ作品であるシューマンのスムーズな運びは明快な例だし、ヨルゲンセンが爽やかな聴後感をもたらしてくれるのも印象的。管楽器の伴奏には例がないほど雄弁なキリアンのピアノも佳き効果を上げる。愛好家以外も一聴に値する。(柴田克彦)アップライトピアノがもたらす私的な美的空間を届けるアルバムだ。小倉貴久子と羽賀美歩が連弾するのは、浜松楽器博物館所蔵の19世紀のエラール、ギルソンのアップライト。軽やかで、甘く濁ったり口ごもったりする音色が、19世紀のブルジョワ家庭のお嬢さんたちによる連弾風景を想わせる。ドビュッシーやフォーレの4手用作品の他、1971年出版のJ.フランセ「ルノワールによる15人の子どもの肖像」は懐古的で切なくなるような美しさ。ハープに似た形状のジラフ・ピアノによる「マ・メール・ロワ」は、響きの独特な混ざりが未知の“悦び”を与えてくれる。(飯田有抄)「楽譜を記号群として捉え、ただ正しい音を出す事に腐心すると、音楽がどう響けば美しく、また楽しめるかという最終目標を見失ってしまう」とミュラーは言う。東京に生まれ、ドイツで学び、国際的に活躍する名手が取り組む、バッハ作品集の第5弾。今回も、ジャーマンの銘器ミートケを伸びやかに鳴らし切る。例えば、テンポひとつでも、組曲へ短調冒頭のプレリュードは、典雅で自然なルバートと共に。逆に、ルバート過多に演奏されがちな半音階的幻想曲はあえて禁欲的に、余り揺らさずに。彼女が真摯に作品へ対峙し、書かれた「音楽に導かれ」て紡ぎ出した答えが聴いて取れる。(寺西 肇)

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