eぶらあぼ 2015.7月号
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170CDCDCDCD道行く人よ、道はない 高橋悠治ギター作品集/笹久保 伸セル・コンダクツ・ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団THE テーマ/シエナ・ウインド・オーケストラモーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番・第13番・第17番 他/カシオーリ高橋悠治:〈柳蛙(りゅうあ)五句〉、〈安戸麦打唄(秩父民謡=高橋悠治)〉、〈ギター〉、〈道行く人よ、道はない〉、〈しばられた手の祈り〉、〈ジョン・ダウランド帰る〉、〈メタテーシス2〉 他笹久保伸(ギター、歌、朗読)ティモシー・ハリス(朗読)メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」より/モーツァルト:交響曲第34番/ベートーヴェン:交響曲第5番/シベリウス:交響曲第2番/ブラームス:交響曲第3番/ドヴォルザーク:交響曲第8番 他ジョージ・セル(指揮)ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ロッキーのテーマ/ジェームズ・ボンドのテーマ/荒野の七人/日曜洋画劇場オープニング/火曜サスペンス劇場 フラッシュバックテーマ/タモリ倶楽部/アメリカ横断ウルトラクイズ/半沢直樹 メインタイトル/炎のファイター~INOKI BOM-BA-YE~ 他松元宏康(指揮) シエナ・ウインド・オーケストラ 他モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番K.310・第13番K.333・第17番K.570、前奏曲とフーガK.394ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)コジマ録音ALCD-104 ¥2800+税TOWER RECORDS/ユニバーサルミュージックPROC-1691/3(3枚組) ¥2286+税エイベックス・クラシックスAVCL-25872 ¥3000+税ユニバーサルミュージックUCCG-1701 ¥2600+税現在までの高橋悠治のギター作品を、近作から順にさかのぼって収録した。最後から逆順に聴いていくと、その作風の変遷が分かる。クセナキスの影響下にある抽象的な「メタテーシス2」。「ジョン・ダウランド帰る」はこのルネサンス期の作曲家の“嘆き”を大胆に変容させる。意外なまでに素直で反戦フォークソングのような「しばられた手の祈り」を経て、笹久保伸のギターを想定した最近作では、農民蜂起の咎で潜伏の人生を送った男の句に音をあしらい(柳蛙五句)、表題作では謎めいた音の泡が飛び散る。闘い続ける孤高の作曲家が到達した“枯れ”を、笹久保の指がヴィヴィッドに紡ぎだしている。(江藤光紀)名指揮者ジョージ・セルの優れた手腕と、名門コンセルトヘボウ管(RCO)の高い能力に、改めて驚かされる名演集。強靱で引き締まった響き、艶っぽい旋律の歌い回し、思い切った金管の強奏、ヴィオラはじめ内声の卓越した扱い等々、手兵クリーヴランド管との録音と共通するセルならではの特徴に、RCOのしなやかな音色の魅力が加わり、思わず聴き惚れてしまう。なかでも得意のメンデルスゾーンとモーツァルトは文句なしの決定的名演で、細かい音の完璧な統一感や、緩徐楽章での陰りある儚い美しさはため息もの。約50〜60年前の録音集ながら、20世紀オーケストラ演奏芸術の粋のひとつが体験できる。(林 昌英)テレビの前でワクワクしながら放映を待った、『日曜洋画劇場』をはじめとする映画番組のオープニング、参加者たちの熱戦を思い起こさせる『アメリカ横断ウルトラクイズ』の音楽、映画『ロッキー』のテーマ、そして『タモリ倶楽部』のオープニングや『半沢直樹』のメインタイトル…。そんな人気番組の音楽や誰でも知っている映画のテーマ曲など、昨今の“テーマ”31曲をシエナ・ウインド・オーケストラがダイナミックなサウンドで再現。特に40代以上のリスナーには、懐かしくてたまらない選曲となっており、記憶の隅で少し錆びかけていたかもしれないメロディが鮮烈に甦ってくる。(大塚正昭)いま主流の「軽やかで流麗」なスタイルとは一線を画すモーツァルト。作曲家的な独自の視点に立脚した内省的な演奏と言えばいいだろうか。とくにK.333で顕著だが、カシオーリはテンポを遅めに設定し、譜面に書かれた音のすべてを慈しむように、きわめて表情豊かにつむいでゆく。音楽が停滞しないのは、絶妙なフレージングと、音のキレが良いからで、こうした点にも彼の音楽家としての成熟を感じる。旋律だけでなく、細かい音階や伴奏音型も実に意味深く、結果としてすこぶる立体的な表現となっているのも特筆される。かのグールドも愛したK.394のフーガも聴きごたえ十分。(城間 勉)

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