eぶらあぼ 2015.6月号
52/213

49フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) 読売日本交響楽団話題の鬼才が描く、現代と古典の神秘文:柴田克彦ハーゲン・クァルテット常に新たなチャレンジとして作品に立ち向かう文:飯尾洋一第550回 定期演奏会7/1(水)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-000-4390 http://yomikyo.or.jp9/26(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演9/27(日)青山音楽記念館バロックザール(075-393-0011)、9/28(月)武蔵野市民文化会館(0422-54-2011)、9/30(水)いずみホール(06-6944-1188)、10/1(木)~10/4(日)トッパンホール(03-5840-2222) 最注目の指揮者の登場だ。7月の読響定期で、フランソワ=グザヴィエ・ロトが同楽団を初めて指揮する。 彼は今ヨーロッパで熱視線を浴びる、1971年パリ生まれの鬼才。自身が創設した「レ・シエクル」における近現代曲のピリオド楽器演奏、中でもレコード・アカデミー賞大賞に輝いた「春の祭典」のCDで、大ブレイクを果たした。同時に、2011年から南西ドイツ放送響の首席指揮者を務め、15年9月からケルン市の音楽監督に就任。ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管、アンサンブル・アンテルコンタンポランなど、モダン・オーケストラでの実績も光る。 その独自の解釈と洗練された音楽は、南西ドイツ放送響の来日公演やN響「第九」でも衝撃を与えたが、元来のゴージャスな響きにカンブルランが精緻な彫琢を付与した今の読響は、ロトの持ち味発揮に相応しく、共演への期待は限りなく大きい。 1992年以来、ザルツブルク市と友好都市提携を結ぶ川崎市。その川崎の音楽的なシンボルともいえるミューザ川崎シンフォニーホールに、楽都ザルツブルクが生んだハーゲン・クァルテットが登場する。 ザルツブルクのハーゲン家の4人の兄弟姉妹によって結成されたハーゲン・クァルテットは、その後第2ヴァイオリンを交替させたが、全員がザルツブルク・モーツァルテウム・アカデミーで学んだ同じ背景を共有する奏者たちである。 今回の来日では、川崎公演のために組んだプログラムが披露される。曲はハイドンの弦楽四重奏曲第58番、モーツァルトの弦楽四重奏曲第21番「プロシア王第1番」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番の3曲。 2013年に聴かせてくれたベートーヴェンの四重奏曲ツィクルスが記憶に新しいハーゲン・クァルテットだが、今 “清澄な神秘性”に貫かれたプログラムも興味を倍加させる。まずブーレーズの「ノタシオン」(第1・7・4・3・2番)は、次のベルクに似た音響的妙味充分の作品。ロトの鋭敏な感覚が示される。ベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」は、早世した女性のためのレクイエム。ロトの音作りと共に、今年22歳ながら深い内面性と表現意欲をもつ郷古廉のソロが聴きものだ。 後半のハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(管弦楽版)は、信者の瞑想用に書かれた、遅い楽章が連続する作品だが、音楽は情感豊かでドラマティック。ここはロトの生み出すテンションと音の綾が耳を奪うに違いない。ともかくロトの演奏は発見の連続。足を運ぶ甲斐は必ずある。回のプログラムはその外伝となる古典派プログラムとでもいえるだろうか。後期ベートーヴェンの玄妙な世界を軸に、同じく後期の作品にあたるモーツァルトと、機知に富んだハイドンの作品が加わる。 ハーゲン・クァルテットは世界的な名声を築きながらも、決して立ち止まることのない四重奏団である。名曲を「得意のレパートリー」のパッケージに包んでくりかえし提供するのではなく、常に新たなチャレンジとして作品に立ち向かい、ときには大胆な解釈を辞さない。発見にあふれた公演になるにちがいない。フランソワ=グザヴィエ・ロト ©Marco Borggreve©Harald Homann

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です