eぶらあぼ 2015.6月号
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東京都交響楽団 「作曲家の肖像」シリーズ Vol.103「アメリカ」アメリカ音楽のエッセンスを!文:飯尾洋一ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団ブルックナーでも卓越した才能を発揮文:江藤光紀6/7(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp第631回 定期演奏会6/6(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp第90回 新潟定期演奏会6/7(日)17:00 新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ問 りゅーとぴあ025-224-5521 http://www.ryutopia.or.jp 東京都交響楽団による「作曲家の肖像」シリーズ第103回は、「アメリカ」をテーマに掲げる。一口にアメリカの音楽といっても、アカデミックなものから実験的なものまで幅広いが、ここで焦点が当てられるのはガーシュウィンやバーンスタインに代表される明快で華麗なアメリカ音楽の世界。オーケストラを聴く醍醐味にあふれた作品が並ぶ。 指揮はアメリカのアンドリュー・リットン。ノルウェーのベルゲン・フィル音楽監督、ミネソタ管弦楽団「ゾマーフェスト」(夏のフェスティヴァル)芸術監督、コロラド交響楽団芸術顧問他を務めており、BBCプロムスの常連でもある。ピアニストとしての力量にも定評があり、しばしばオーケストラの弾き振りや室内楽でも活躍しており、この日もガーシュウィンのピアノ協奏曲でソロを務める。 ジョナサン・ノットが東京交響楽団音楽監督に就任し2シーズン目に入った。6月のプログラムのメインは、ブルックナーの交響曲の中でも伸びやかな表現で人気の第7番が取り上げられる。聴きどころをまとめてみよう。 まず、ノットはバンベルク響という中欧の上質なオーケストラで音楽監督を プログラムは聴きどころに事欠かない。バーバーがカーティス音楽院の卒業作品として書いた序曲「悪口学校」、ジャズを背景としながらもオリジナリティにあふれたガーシュウィンのピアノ協奏曲ヘ調、夜の大都市の情景を洗練された筆致で切り取ったコープランドの「静かな都会」(トランペット:高橋敦、イングリッシュホルン:南方総子)、そしてバーンスタインの多彩な音楽語法が生かされた「ディヴェルティメント」と、いずれも興味深い作品ばかり。とりわけバーンスタイン作品のおもちゃ箱をひっくり返したかのような混沌とした楽しさは、大いに会場をわかせるにちがいない。長く務め、近年では同団とのルツェルン音楽祭での《指環》全曲上演などで大きな成果を上げている。現代もので知られるノットだが、独墺のがっちりとした演目にも躍進が目覚ましい。一方、東響も中欧のオーケストラを思わせる、落ち着いた色合いのふっくらとしたサウンドに特徴がある。緊張感を保ちながらも爽やかで口当たりがいい演奏が期待できそうだ。 2つめのポイントは、ブルックナーとワーグナーの絆を想起させる選曲。ノットはすでに東響と昨年12月に、ワーグナーに捧げられたブルックナーの交響曲第3番を取り上げている。今回演奏する第7番のアダージョでは、作アンドリュー・リットン ©Danny Turnerジョナサン・ノット ©K.Miura曲時に逝去したワーグナーへの葬送行進曲が鳴り響くのだ。 最後のポイントは、東響の新旧両音楽監督の個性の違いを確認できる点だ。ブルックナーは前任の音楽監督ユベール・スダーンも得意とし、特に第7番はこのコンビでの録音が発売されている。 今回のプログラムでもう一点見逃せないのが、R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」だ。第2次大戦によって焼野原になったドイツに向けられた哀惜の思いが、ソリスティックに動く23人の弦楽奏者たちによって精緻に織られていく。東響弦セクションの美音に加え、複雑なテクスチャを明晰に聴かせるノットの本領も発揮されるはずだ。46

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