eぶらあぼ 2015.6月号
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42Photo:T.Shiroma/Tokyo MDEアンサンブル・ウィーン=ベルリン7/5(日)神奈川県立音楽堂(チケットかながわ0570-015-415)、7/7(火)福岡シンフォニーホール(グリーンコンサート092-711-8868)、7/8(水)浜離宮朝日ホール(ヒラサ・オフィス03-5429-2399)、7/9(木)いずみホール(06-6944-1188)、7/10(金)広島国際会議場フェニックスホール(グリーンコンサート082-241-8868)、7/11(土)彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール(0570-064-939)、7/12(日)三鷹市芸術文化センター風のホール(0422-47-5122) ※プログラムは公演により異なります。アンドレアス・オッテンザマー(クラリネット/アンサンブル・ウィーン=ベルリン)スーパー集団で魅せるクラリネットのプリンス取材・文:柴田克彦Interview ベルリン・フィルの首席クラリネット奏者、アンドレアス・オッテンザマーは、1989年ウィーン生まれで、父と兄がウィーン・フィルの首席クラリネット奏者。しかも「ピアノとチェロの勉強後、12歳から自然にこの楽器を始め、21歳で現職に就いた」というから驚きだ。 彼はこのほど、ウィーン&ベルリン・フィルのトップ奏者を主体にした世界最高峰の木管五重奏団、「アンサンブル・ウィーン=ベルリン」に加入した。カール=ハインツ・シュッツ(フルート/ウィーン)や、シュテファン・ドール(ホルン/ベルリン)ら5人の豪華メンバーで7月に日本公演を行う。 「このアンサンブルのメンバーになるのは大変な名誉です。また、世界的な著名楽団の優秀な奏者が集って一つの音楽を作るのは、とても興味深いこと。メンバーは各楽器の大家で、異なる個性と考えをもっていますが、そうであればあるほど多様なアプローチが可能になります。それにメンバーが替わって新たな挑戦を始めた時期に訪日し、意欲漲る演奏を聴いていただけることを嬉しく思っています」 ウィーンからベルリンに移った彼の経歴も、このアンサンブルに相応しい。 「楽団自体の個性は非常に違いますが、ベルリン・フィルのもう一人の首席奏者ヴェンツェル・フックスも私もオーストリア人。共にウィーンのスタイルで演奏して上手くいっています。その点は当アンサンブルでも生かせるでしょう」 木管五重奏への期待も大きい。 「伝統ある編成ですし、新しいレパートリーを演奏できるのが楽しみです。木管五重奏は、全員が常に吹き続けている点が難しくもあり、妙味でもあります。つまり室内楽の王者たる弦楽四重奏の管楽器版ともいえますね」 今回のプログラムは、バーバーの「夏の音楽」、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」を軸にしながら、ドヴォルザークの「アメリカ」、ガーシュウィンの《ポーギーとベス》を各プログラムのメインに据えた魅力的な内容だ。 「今回は、訪日する時期に合わせて“夏”をテーマに定め、ヴィルトゥオーゾ的な妙技と様々な音色をお聴かせします」 来年2月には、父兄とのトリオ「クラリノッツ」*でも来日する。「一家ですから、これほど親密なアンサンブルはないでしょう(笑)。ソロ、デュオ、トリオにピアノを交えながら、バス・クラリネットやバセットホルン等も用いて、モーツァルトやバッハから、ジャズ、ボサノヴァ、委嘱作まで、多彩なレパートリーを披露します」 クラリネットの魅力を「全ての楽器の中で最も人間の声に近い自然な音。非常になめらかで、無の状態からスムーズに音を出せますし、音域も広大です」と語るオッテンザマー。その魅惑の音、そしてアンサンブルでの清新な表現を、ぜひ味わいたい。7/3(金)19:00すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター 03-5608-1212http://www.triphony.comセルゲイ・ナカリャコフ(トランペット/フリューゲルホルン)この夏、稀有の天才の進化を知る文:柴田克彦©Thierry Cohen 何と10年ぶり! あのセルゲイ・ナカリャコフの東京でのトランペット・リサイタルが、かくも久々とは驚きだ。彼は、昨年札幌のPMFでヴィトマンの超難曲を日本初演しているし、近年は別府アルゲリッチ音楽祭でも来日している。だが2005年を最後に首都でリサイタルはなく、協奏曲を含めても登場自体が久方ぶり。まさしく“待望の”公演と言うほかない。むろん彼は、驚愕の超絶技巧、循環呼吸による切れ目のないフレージング、フリューゲル・ホルンでの柔らかな歌い回し等で、10代から圧倒的支持を得ている人気奏者。ヴァイオリン他の協奏曲にも挑むなど未踏の地を歩んできた。 今回は、フリューゲル・ホルンとトランペットの2本立て。前者ではシューマンやバルトークなどの別楽器用の作品(主にチェロのレパートリー)で深くなめらかな歌を、後者では超絶的なアーバンの作品などでヴィルトゥオジティの極致とブリリアントな響きを聴かせる。これは、10年の渇きを癒すと同時に、30代後半に達した天才奏者の熟成&深化を知り得る、万人注目の公演だ。*本人によると「クラリノッティ」ではなく、「クラリノッツ」が正しい名称とのこと。

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