eぶらあぼ 2015.6月号
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41カリン・K・ナガノ©Stéphane Michaux尾高忠明(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団円熟のマエストロが聴かせる2つのラスト・シンフォニー文:山崎浩太郎新日本フィルハーモニー交響楽団 #47 新・クラシックへの扉未知なる指揮者への期待文:オヤマダアツシ第866回 オーチャード定期演奏会7/12(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール第95回 東京オペラシティ定期シリーズ7/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第867回 サントリー定期シリーズ7/17(金)19:00 サントリーホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp6/26(金)14:00、6/27(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp 尾高忠明がチャイコフスキーとマーラー、2人の作曲家が完成した最後の交響曲をメインとする2種のプログラムで、東京フィルの定期を指揮する。 この春まで尾高は、1998年より常任指揮者、ついで音楽監督として札幌交響楽団で充実の歳月を過ごしてきた。そして、この4月からは札響の名誉音楽監督に就任。今後は、様々なオーケストラで今まで以上に尾高の音楽作りを聴くことができるので、楽しみにしている方も多いだろう。 チャイコフスキーの「悲愴」(7/12)は、最後にアダージョ~アンダンテという遅い楽章がおかれ、詠嘆的に終るという異例の構成をもつ作品。マーラーはこの曲にヒントを得て、第9番(7/16,7/17)の終楽章にアダージョをおいたのではないかといわれている。緻密な構成力で知られる尾高が、ともに減衰して終わる2曲に、どのような関連性を聴かせてくれるかが聴きどころになるだろう。 7月12日公演の前半には、《後宮か 多彩な曲が並ぶ定期演奏会と並行し、名曲シリーズでありながらもひと捻りした選曲と注目すべき指揮者のラインナップで行われている、新日本フィルの『新・クラシックへの扉』シリーズ。特に先シーズンおよび今シーズンは、「エル・システマ」(ベネズエラ)出身の若手を起用するなどオリジナリティに富んでおり、未知の指揮者を聴きたいという音楽ファンであれば、ぜひチェックしておきたい逸材も登場する。 6月に指揮台へ上がるナビル・シェハタも、間違いなくそうした一人だろう。ドイツとエジプトの血を受け継いだ彼はドイツでコントラバスを学び、20代前半でベルリン国立歌劇場、さらにはベルリン・フィルの首席奏者に。最高峰のオーケストラにあって充実した音楽生活を送りながら指揮にも意欲を燃やし、バレンボイムやティーレマンら、客演もしているマエストロたちにテクらの逃走》序曲と「2台のピアノのための協奏曲」というモーツァルト青年時代の作品をとりあげる。協奏曲に登場する1998年生まれの若いカリン・K・ナガノは、指揮者ケント・ナガノとピアニストの児玉麻里夫妻の娘。児玉桃は麻里の妹なので、叔母と姪の共演というニックを伝授されている。 その彼が新日本フィルと共に演奏するのは、ドヴォルザークの名曲「新世界より」。ドイツ仕込みの正統的な音楽になるか、個性的な表現になるかは聴いてのお楽しみだが、未知の指揮者だからこそ味わえる期待感が湧き上がるだろう。しかしさらに注目すべきは、ソリストとしての顔だ。コンサートの前半にはコントラバスの弾き振り(!)により、セルゲイ・クーセヴィツキーが1902年に作曲した協奏曲を演奏。シェハタだからこそのプログラムであり、注目すべき2日間になるだろう。尾高忠明 ©Martin Richardsonナビル・シェハタ児玉 桃 ©Marco Borggreveことになる。麻里と桃の姉妹デュオは息のあった共演ぶりでおなじみだが、今度は桃がリードする新たな組み合わせ。20歳前後の若きモーツァルトが、姉ナンネルと合奏するために書いたともいわれるこの協奏曲にふさわしい、清新で爽やかな演奏を期待したい。
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