eぶらあぼ 2015.6月号
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38Libera Opera Series 13 《ランメルモールのルチア》大ベテランならではの“狂乱の場”に期待文:宮本 明アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団20世紀のロシア音楽の傑作を集めて文:山崎浩太郎6/22(月)18:30 紀尾井ホール問 〈友〉音楽工房03-5155-3281第308回 横浜定期演奏会6/6(土)18:00 横浜みなとみらいホール特別演奏会6/7(日)14:30 東京オペラシティコンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 「Libera Opera Series」第13回公演《ルチア》(字幕なしの原語上演)。最小限の演出と室内楽編成の伴奏というシンプルな上演形態で、「歌」そのもののクオリティを追求しているシリーズだ。 なんといっても注目は当シリーズの歌姫・関定子の歌う題名役だろう。どちらかというとドラマティックな声の役を歌う印象が強いが(たとえばこのシリーズでも2年前にはトゥーランドットを歌っている)、もともと「ドラマティック・コロラトゥーラ」という、高音域の繊細な技巧と力強い声の表現とを併せ持った歌手なのだ。 とはいえ今年70歳という大ベテラン。年齢を重ねれば誰でも声は必ず衰えるのだけれど、同時に人生経験も重ねて音楽性は拡がっているわけで、 2008年秋から日本フィルの首席指揮者として、お国もののロシア音楽で熱演をきかせてくれるアレクサンドル・ラザレフ。進行中の『ラザレフが刻むロシアの魂』シリーズでは、ショスタコーヴィチの交響曲が取りあげられている。昨年10月の第4番、今年3月の第11番「1905年」では、長時間ゆるむことのない集中と緊張を保って、作曲家の苦渋と葛藤を描きだし、素晴らしい成果をあげた。その指揮に応えた楽員も見事で、コンビの充実が実感できるものだった。6月の東京定期で予定されている交響曲第8番も傑作だけに大いに期待できるが、それに先立って横浜と東京で行なわれる演奏会では、同じ20世紀のロシア音楽の違った一面を愉しむことができる。 組曲「馬あぶ」は、ショスタコーヴィチが書いた映画音楽の組曲。19世紀半ば、イタリアでの独立闘争の英雄を主人公にした劇映画で、わかりやすく軽快で美しい、作曲家が交響曲とは別の顔を見せた音楽だ。ヴァイオリンが甘美な旋律を奏でる〈ロマンス〉がききもの。続くラフマニノフの「パガニーそれを表現するのに必要な声を維持しているのは素晴らしいことだと思う。数あるコロラトゥーラ・ソプラノの役の中でも屈指の難しさで知られるルチアでどんな歌を聴かせてくれるのか、実に興味深い。 ヒロイックなテノールの田中誠のエドガルド、芸達者で演技にも定評ある森口賢二のエンリーコはじめ、各キャストにも実力派が揃う。 なお写真は、ヴェルディの故郷ブッセートのヴェルディ劇場で関が昨年行なったコンサートのときのもの。耳の肥えた地元の人々も絶讃。なかには、30数年前にここで行なわれた「ヴェルディの声」コンクールで彼女が第2位に入賞した時に審査員だったという老人もいたとか。いい話だ。ニの主題による狂詩曲」は、パガニーニの「カプリース第24番」の有名な旋律を用いた変奏曲。独奏ピアノは伊藤恵。息のあったスリリングな共演に期待したい。 後半に置かれたストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲(1945年版)は、バレエ・リュスのパリ公演のために書かれたバレエ音楽の組曲。豪華な色彩感、幻想的でエキゾチックな旋律美を、オーケストラのパワー全開で聴かせてくれるだろう。関 定子 伊藤 恵 ©武藤 章アレクサンドル・ラザレフ ©山口 敦

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