eぶらあぼ 2015.6月号
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36左より:長木誠司/ベルント・アロイス・ツィンマーマン ©Schott Promotion/カールハインツ・シュトックハウゼン ©Rolando Paolo Guerzoniハインツ・ホリガー ©Priska Ketterer/酒井健治 ©Philippe Stirnweiss/大野和士 ©Haruki長木誠司がひらく8/23(日)18:00 大ホール 「レクイエム」 8/29(土)19:00 ブルーローズ 「シュティムング」テーマ作曲家〈ハインツ・ホリガー〉8/22(土)16:00 ブルーローズ 「室内楽」 8/27(木)19:00 大ホール 「管弦楽」TRANSMUSIC 特別公演 音楽のエッセンツィア“現代音楽の楽しみ方”8/26(水)19:00 ブルーローズ第25回 芥川作曲賞選考演奏会8/30(日)15:00 大ホール 会場:サントリーホール 大ホール&ブルーローズ(小)問 東京コンサーツ03-3226-9755 http://suntory.jp/summerサントリー芸術財団 サマーフェスティバル2015コンテンポラリー・ミュージックの最前線文:江藤光紀 毎年夏の終わりにコアな企画で愛好家たちをうならせてきた現代音楽祭、サントリー芸術財団『サマーフェスティバル』。今年も興味深いプログラム満載で、コンテンポラリーの最前線をたっぷりと味わわせてくれる。 まず、一人のプロデューサーがその関心や経験に沿ってプログラムを選定するザ・プロデューサー・シリーズ。今年は近現代音楽ファンなら誰もがその名を知る音楽学者・長木誠司が登場する。今回彼がスポットを当てるのは、60年代末のドイツ。学生運動などの波が世界的に広がり、社会が熱を帯びていた時代だ。当然、芸術の前衛的な姿勢も熱く、いまとは比較にならないくらい尖っていた。そんな時代の息吹を孕んだ2つの大作を聴く。 一つ目は壮絶な生涯の末、1970年に命を絶った作曲家ベルント・アロイス・ツィンマーマンの「ある若き詩人のためのレクイエム」。オペラ《兵士たち》をはじめ、近年その作品が日本でも次々と紹介されているが、「ある若き~」は管弦楽と合唱、テープ音楽、ジャズ・コンボなどが絡まる音のるつぼに、政治的な言説や詩人たちの警句までもが投げ込まれる最大規模の作品だ。巨大な音の迷宮を大野和士指揮都響らがどう解きほぐすか。 二つ目はカールハインツ・シュトックハウゼンの「シュティムング」。徹底した論理性の追及によって戦後前衛音楽の寵児として名を馳せたシュトックハウゼンは、60年代後半には奏者の体と心を厳しく統御することで独自の表現を追求していく。「シュティムング」も高度な声の倍音コントロールが必要になるが、今回は作曲家本人の薫陶を受けたアーティストも加わっている。ホリガーの多面的な才能に迫る 国際作曲委嘱シリーズにはテーマ作曲家としてハインツ・ホリガーが登場する。もともとオーボイストとして名高かったホリガーだが、近年新日本フィルや水戸室内管への客演で指揮者・作曲家としても知られるようになった。もちろん欧州では、そちらの方面でもウィーン・フィルやベルリン・フィルと共演するなど超一流。ホリガー自身の指揮・演奏で新作初演を含む管弦楽曲2曲、室内楽曲5曲が上演されるほか、ホリガーが注目する若手作曲家グザビエ・ダイエの作品も取り上げられる。 今を生き、同時代の日本の空気を吸っている作曲家たちの創作も気になるところだ。「TRANSMUSIC 音楽のエッセンツィア」は演奏技術的に平易な小品を内包する管弦楽曲を毎年一作ずつ上演するという大阪で行われている企画。今回は過去5年間に作曲された西村朗、伊左治直、三輪眞弘、中川俊郎、野平一郎の諸作が一挙に再演される。プレコンサートでは内包曲のお披露目もある。 最終日の30日は芥川作曲賞選考演奏会。先日候補作が発表されたが、今年は3作とも20代の若手、新しい世代が育っているのが頼もしい。このコンクールは公開で選考会を行うが、今年は審査員も池辺晋一郎、山本裕之、山根明季子と世代がくっきりと分かれており、選考も面白くなりそう。また、一昨年の覇者、酒井健治の受賞記念委嘱作「ヴァイオリン協奏曲〈G線上で〉」が成田達輝をソロに迎え披露される。2012年のエリザベート王妃コンクールにおいて成田が演奏した酒井作品は語り草になっているので、手に汗握るあの名演を上回る興奮を期待したい。

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