eぶらあぼ 2015.6月号
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174CDCDCDCDチャイコフスキー:交響曲第4番/井上道義&大阪フィルモーツァルトを弾く Vol.3/山根弥生子NO MAN’S LAND Masanori Oishi plays JacobTV/大石将紀モーツァルト:フォルテピアノとヴァイオリンのためのソナタ/ブンディース&高田泰治チャイコフスキー:交響曲第4番ショスタコーヴィチ:ロシアとキルギスの主題による序曲井上道義(指揮)大阪フィルハーモニー交響楽団モーツァルト:ピアノ・ソナタK.332・K.330・K.333、クラリネット五重奏曲の主題による6つの変奏曲 イ長調、アダージョ ロ短調山根弥生子(ピアノ)JacobTV:THE BODY OF YOUR DREAMS、THE GARDEN OF LOVE、SHO-MYO、SYRACUSE BLUES、BROODJE SPECULAAS MET KARNEMELK/dj Sniff 他大石将紀(サクソフォン)dj Sni(DJ)モーツァルト:フォルテピアノとヴァイオリンのためのソナタK.6・K.304・K.379・K.454ウッラ・ブンディース(ヴァイオリン)高田泰治(フォルテピアノ)収録:2014年10月23日・24日、フェスティバルホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00563 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9150 ¥2800+税ジパングプロダクツZIP-0053 ¥2300+税ナミ・レコードWWCC-7783 ¥2500+税「チャイ4」の陰鬱さ、沈滞感、のしかかって来るような重さを実に上手く表現した演奏。第1楽章の主部はかなりゆっくりとしたテンポを採り、激情する箇所でもどこか倦怠感が漂う。力感を思い切り開放せずに抑制が貫かれているのだが、これがいかにもこの楽章の諦観に相応しい。第2楽章では引きずるような表情付けが秀逸。スケルツォですらどこか淀んでいるのだが、終楽章に至って今度は逆に早いテンポと開放的な響きに一転、その効果的なコントラスト。見事。ショスタコーヴィチでは明快な表現の中にアイロニカルな響きをも聴き手に感知させ、この辺りは井上の面目躍如。(藤原 聡)モーツァルトの作品を演奏することは、演奏者の技術や音楽性が全て露わになるのと同時に、弾き手がどれだけ音楽を愛しているか、ということも見えてきてしまう。山根弥生子の演奏は、冒頭のK.332の第1音からすぐ、モーツァルトの作品は勿論のこと、音楽に対する強い愛情を感じさせてくれる。柔らかく、豊かに響く音色は、旋律を美しく歌い上げるだけでなく、旋律同士を美しくつなげ、次から次に展開する楽想を魅力的に彩っているし、和声変化への敏感な対応は、作品に多彩な変化を与えるのと同時に、オペラの登場人物を描写するかのような表現力も見せてくれる。(長井進之介)テレビから流れる宣伝文句、囚人のスピーチ、声明…。異色のオランダ人作曲家JacobTVは日常の何気ない素材をサンプリング&カットアップし、反復してみせる。そこから生まれる独特なリズムやグルーヴ感にサックスが縦横無尽に切り込む。ビートは生気を帯び、音楽は歌に替わる。デジタルとアナログの融合は、ポップスの世界では大分以前から起こっていた。緻密な構成と洗練によって世界的に高い評価を受けるJacobTVのアヴァン・ポップな世界が、サックスというジャンル越境的な楽器と、大石将紀の柔らかな感性によって、ようやく私たちの眼前に開けてきた。予兆めいた一枚だ。(江藤光紀)バロック・ヴァイオリンの“女王”ブンディースと若き鍵盤楽器の名手・高田泰治。この2人のデュオ、既にドイツで活躍中というが、聴いた後の充足感は半端でない。持前の高度な技術(俊敏で自在な音の運びに唖然!)と瑞々しい音色を駆使して、モーツァルトの底知れぬ深い世界を表現してゆく。転調の際の繊細なニュアンスと陰影感、絶妙なテンポ設定も特筆もの。K.304やK.454といった名曲の他、神童時代に書かれたこの分野の処女作K.6や、序奏がト長調ながら主部が激しいト短調のアレグロという特異な楽章を持つK.379も入れるなど選曲も凝っている。(城間 勉)
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