eぶらあぼ 2015.5月号
71/225
68J.S.バッハ オルガン全曲演奏会 2005-2015第12回 「クラヴィーア練習曲集 第3部」5/31(日)14:30 東京芸術劇場コンサートホール問 アレグロミュージック03-5216-7131 http://www.allegromusic.co.jp椎名雄一郎(オルガン)バッハのオルガン作品の全曲演奏シリーズが遂に完結取材・文:寺西 肇Interview 国際的にも熱い注目を集める名手・椎名雄一郎が、2005年から毎年続けて来たバッハのオルガン作品の全曲演奏シリーズ。今年5月に開く第12回で、いよいよ完結を迎える。日本初の偉業を前に「バッハの音楽経験を追体験できたと同時に、彼のオルガン音楽をより多角的に捉えられた」と椎名。 「実際にバッハの作品を弾いていると、『この部分は、パッヘルベルのこの曲を模範に…』『この箇所は、ベームのこの音型の影響だな』などと、他の作曲家との関係を感じることができ、逆に、ブクステフーデの作品を弾くと、『この部分に、バッハは感動したのだろう』などと、その想いが分かるようになりました。バッハはもちろん天才的な音楽家ですが、その音楽は様々な影響を受けていることを再発見できました」 最終回で取り上げるのは、オルガン作品ではバッハ最初の出版作品である「クラヴィーア練習曲集第3部」。 「バッハのオルガン作品の集大成と考えられる曲集。彼は明らかに、この作品集を『後世へ残そう』と考えていて、出版時には、緻密に校正を行っています。また、バッハは演奏会の際、最初に前奏曲、その後にコラール編曲を演奏し、最後にフーガを弾いたそうです。そして、この構成がこの曲集でも採用されています」 当シリーズは、カザルスホールでスタートしたが、第9回からは東京芸術劇場へ移動。これに伴い、オルガンもドイツのユルゲン・アーレントから、フランスのマルク・ガルニエ製作のものへと変更になった。 「同じバロックタイプでも、印象が大きく異なり、前者は室内楽的な響きを持ち、初期や中期の作品にぴったり。後者はダイナミックな音色で、中期から後期向き。『トッカータとフーガ』の回から移動したのは音楽上、とても良かったです」 ヨーロッパのように教会ではなく、日本では主にコンサートホールでオルガンが聴かれる現状を「新たなオルガン文化が育まれる、ひとつのチャンス」と位置付ける。4月には、構造や歴史、内外の名器など楽器の魅力を凝縮した著書『パイプオルガン入門』(春秋社)も出版。「これまでクラシックは聴いたものの、『オルガンはちょっと…』と言う方に向けての鑑賞ガイドを目指した」と話す。 「オルガニストは自分の楽器を決して持ち歩けないが、1台1台異なる楽器との出会いこそが喜び。同じ作品でも楽器が違えば表現も変化する。その可能性を追求するのが最大の魅力です。オルガンを弾き始めて四半世紀ですが、一度たりとも飽きたことはありません。様々な方々にオルガンの魅力を伝えるのが、私の使命。ピアノと同じように、楽しんでいただけるのが夢です」6/19(金)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター 03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp第15回 Hakuju Hall ワンダフル one アワー N響精鋭メンバーによる管楽アンサンブルふくよかで鮮やかなモーツァルトの調べ文:柴田克彦 昨年聴いたベートーヴェンの交響曲第7番は、今も耳に残るほど新鮮だった。それはHakuju HallでのN響メンバーによる管楽アンサンブルの公演。再登場の今年はモーツァルトが演奏される。こうした「ハルモニームジーク」は、市民が身近に楽しめることで、18世紀後半に大人気を博し、今回と同じ9名の編成は、豊かな表現力と柔軟性から特に好まれた。本公演では、その響きをN響精鋭の豪華な布陣で体感できる。メンバーは、オーボエの青山聖樹&和久井仁、クラリネットの伊藤圭&加藤明久、ホルンの福川伸陽&勝俣泰、ファゴットの水谷上総&森田格という、首席(または首席代行)&パートナーのコンビにコントラバス首席の吉田秀が加わる。音色や奏法が揃い、音作りも互いに熟知した名手たちが、精緻なアンサンブルを聴かせる。曲は、管楽合奏の定番たるセレナード第11&12番(短調の12番は特に注目!)に《フィガロの結婚》(抜粋)を加えた、楽しく深く柔らかく歯切れ良い名作集。この顔ぶれでこの曲なら、愉悦のひとときを過ごせること間違いなし!青山聖樹福川伸陽伊藤 圭水谷上総和久井 仁勝俣 泰加藤明久森田 格吉田 秀
元のページ