eぶらあぼ 2015.5月号
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66N響ゴールデン・クラシックス 5/4(月・祝)14:30 東京文化会館問 キョードー東京0570-550-799/ローソンチケット0570-000-407http://kyodotokyo.comヴァハン・マルディロシアン(指揮)“指揮者”としての活動にも注目!取材・文:宮本 明Interview NHK交響楽団による名曲コンサート『N響ゴールデン・クラシックス』の指揮者に抜擢されたのが、1975年アルメニア生まれのヴァハン・マルディロシアン。イヴリー・ギトリスをはじめとする、室内楽のピアニストとしてはもう10回以上来日しているが、アルメニア国立室内管弦楽団音楽監督やフランスのカーン管弦楽団首席指揮者を務めるなど、指揮者としても実績を重ねている人だ。 「もともと指揮者になりたくて7歳の時にピアノを始めました。9ヶ月後にリサイタルを開き、翌年8歳でアルメニア国立室内管弦楽団とハイドンの協奏曲を弾くことができました」 早熟なピアノの才能を示しながらも、14歳でオーケストラを組織して音楽監督に就くなど、指揮への情熱が冷めることはなかった。しかし1992年、17歳でパリ音楽院に入学、ジャック・ルヴィエのピアノのクラスで学んだ。 「その年にアルメニアとフランスが国交を樹立して、初めて赴任したフランス大使が僕のピアノを聴いて誘ってくれました。指揮ではなくピアノを選んだのは、それまで数年間指揮をしてみて、自分の音楽がまだまだ未熟だとわかったからです。まずピアノで“音楽”を勉強しようと思いました」 卒業後もピアニストとして活動し始めたのは自分でも予想外だったという。指揮を再開したのは、フランス国立管弦楽団で共演したクルト・マズアに、自らの指揮への思いを語ったのがきっかけだった。2006年、ニューヨークのマズアの指揮マスタークラスに招かれた。 「『才能がなかったら途中で帰ってもらうぞ』と言われました。でも結局、選ばれて修了公演でモーツァルトの交響曲第40番を指揮することができました。しかもモーツァルトの誕生日に!」 現在は9対1の割合で指揮活動がメインだが、ピアノをやめるつもりはないという。 「スコアを理解するのにも、歌手やソリストとリハーサルするのにも役立ちます。自分の部屋にオーケストラは呼ぶことはできませんよね? それに、やっぱりピアノを愛しています」 今回の曲目は村治奏一を迎えての「アランフェス協奏曲」やベートーヴェンの「運命」など。 「日本のオーケストラはファンタスティック。プロ意識が高いし、手の動きだけですべてを理解してくれるから言葉が要りません。世界でもトップ5に入る実力のオーケストラだと思っているので、N響を指揮するのが大きな責任のある仕事だということはわかっています」 作曲もこなす才人。繊細なピアノ演奏からも豊かな音楽性は明らかだ。指揮者としての飛翔もまもなくだろう。5/16(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net第一生命ホール 音楽のある週末 第24回 戸田弥生(ヴァイオリン)& アブデル・ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)息の合った名コンビによる快演に期待文:宮本 明右:アブデル・ラーマン・エル=バシャ ©Alix Laveau左:戸田弥生 ©Kinoshita Akira 戸田弥生とアブデル・ラーマン・エル=バシャは、ともにエリーザベト国際コンクールの優勝者同士。もう15年も共演を重ねてきたという二人は、昨年満を持して、フランクとシューマンのヴァイオリン・ソナタ(シューマンは第2番)からなる初の共演CD(オクタヴィア・レコード)をリリースした。研ぎ澄まされた集中力と豊かな歌心から、生き生きした音楽を繰り出す戸田と、エル=バシャの美しい音が、ロマン派を代表する2曲のソナタを情熱的に聴かせているCDだ。録音なので、あとで編集することも可能だが、エル=バシャの提案で部分的に録り直すことはせず、コンサートと同じように全部通しでの演奏を繰り返したそう。音楽の自然な流れに対するこだわりはもちろん、疲労も伴う繰り返しを厭わない、二人の息の合ったコンビぶりも伝わってくる。コンサートでも、もちろんその2曲のソナタを披露。さらに戸田が「何百回も弾いてきた」と語るベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」を弾く。

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