eぶらあぼ 2015.5月号
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59日本フィル・シリーズ再演企画第8弾 下野竜也(指揮) 日本フィル戦後日本で生まれた傑作&秘曲を集めて文:江藤光紀ミハイル・プレトニョフ(指揮) ロシア・ナショナル管弦楽団世界屈指のオーケストラで聴くロシア音楽の神髄文:飯尾洋一第670回 東京定期演奏会5/15(金)19:00、5/16(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター  03-5378-5911http://www.japanphil.or.jp7/7(火)19:00 文京シビックホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演6/28(日)奈良県文化会館、7/4(土)シンフォニア岩国、7/5(日)アルファあなぶきホール、7/8(水)サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)、7/11(土)愛知県芸術劇場コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 今をときめく世界中の指揮者たちが在京オーケストラに連日のようにやってくる素晴らしい時代だ。しかし邦人作品の演奏機会は、ひところに比べるとめっきり減ってしまった。外国人シェフは日本の作曲家のことをよく知らない場合が多く、グローバリゼーションは、その土地の文化を廃れさせる恐れがある。このままでは寂しいではないか…。 そんなリスナーの溜飲を下げてくれる企画を紹介しよう。日本フィルハーモニー交響楽団は創立時から気鋭の作曲家に新作を委嘱する『日本フィル・シリーズ』を継続してきた。委嘱を受けた作曲家たちはこぞって力作を提供し、戦後を代表する名曲が次々と生み出されたが、その後再演機会に恵まれず忘れ去られたものも少なくない。下野竜也がこの宝の山から埋もれていた名品を掘り起こし、大喝采を浴びたのは2012年7月の定期でのこと。そ 名ピアニストが指揮者としても活動する例は珍しくないが、ミハイル・プレトニョフのように自らのオーケストラを創設して率いる例はまれだろう。ピアニストはピアノを前に自分の思うがままに音楽を奏でることができる。しかし指揮者は自ら音を発することができない。常にオーケストラという集団との共同作業によってしか音楽を作ることができないのが指揮者の宿命。であれば、そのオーケストラさえも自ら作ってしまえばどうか。1990年に設立されたロシア・ナショナル管弦楽団は、そんな偉才の理想が形をとったオーケストラともいえる。 この7月、七夕の夜にプレトニョフとロシア・ナショナル管弦楽団が聴かせてくれるのは、ロシア音楽を代表する3人の作品。グリンカの《ルスランとリュドミラ》序曲は、オーケストラの高い技量を鮮やかにデモンストレーションする機会となるにちがいない。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番では、注目のピアニスト、牛田智大がソロの後も同団はこつこつと蘇演に取り組んできたが、この5月に「オール・日本フィル・シリーズ・プログラム」が再び実現する。指揮はもちろん下野だ。 黛敏郎の「フォノロジー・サンフォニック」はシリーズのスタート前年、1957年の同団第2回定期で演奏された、いわばシリーズの第0作ともいうべき作品で、反復される金管のモティーフを軸にオーケストラがダイナミックに爆発する。木管楽器に焦点を当てた林光「Winds」は24作目として1974年に初演。今回は82年の改訂版での演奏となる。「霧の果実」(第35作)は一昨年世を去った三善晃の晩年を代表する交響四部作の一つで、錯綜した音響世界が聴き手を精神の深みへと誘う。そして最後を飾るのはシリーズ第一作、矢代秋雄「交響曲」。フランス風の和声をがっちりとした構成が支える、邦人交響曲の金字塔だ。を務める。稀有な才能を持った天才少年としてセンセーションを巻き起こす牛田智大は、1999年生まれ。もうまもなく“少年”から“青年”と呼ぶのがふさわしい年齢になる。肉体的にも精神的にも、そして音楽的にも、目を見張るような成長を遂げつつあることだろう。メイン・プログラムはラフマニノフの交響曲第2番。ラフマニノフの管弦楽作品の代表作として、近年ますます演奏機会を増やしつつある下野竜也 ©Naoya Yamaguchi牛田智大©Ayako Yamamoto衣装提供 (株)オンワード樫山ミハイル・プレトニョフ名曲である。情感豊かでスケールの大きな演奏を堪能したい。

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