eぶらあぼ 2015.5月号
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52タチアナ・ヴァシリエヴァ ©Sasha Gusov尾高忠明(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団イギリス音楽のフルコース文:オヤマダアツシクシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団キーワードは“祖国”文:山田治生#541 定期演奏会5/22(金)19:15、5/23(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp第86回 東京オペラシティシリーズ5/23(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp5/24(日)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp 「3月で札幌交響楽団の任期が終わりますけれど、その後はご無沙汰しているオーケストラへ呼んでいただけるので楽しみにしているんです」。昨年末にインタビューをした際、2015年の抱負をそう語ってくれた尾高忠明。その言葉通り、さっそく新日本フィルの5月定期演奏会に登場する。プログラムはお得意のイギリス音楽。それも、あちこちのオーケストラで指揮を重ねてきた、まさに十八番と言える4曲の固め打ちだ。 2つの弦楽グループが、ルネサンスの教会音楽のように交唱するヴォーン=ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」(イングランド風ノスタルジー)。結ばれない運命の2人が自分たちだけの理想郷を求めて歩む、ディーリアスの「楽園への道」(後期ロマン派音楽のハンパない陶酔感)。閉鎖的な“村社会”の中でのアウトローを主人公としたブリテンのオペラ《ピー LAフィルのドゥダメル(1981年生)やボストン響のネルソンス(78年)など、近年、若手指揮者の活躍が著しい。日本の楽団も、都響がフルシャ(81年)を、日本フィルがインキネン(80年)を、東京フィルがバッティストーニ(87年)を首席客演指揮者に迎えるなど、次代を担う若い才能の獲得に積極的になっている。2013年から東響の首席客演指揮者を務めるクシシュトフ・ウルバンスキ(82年生)も、インディアナポリス響とトロンへイム響のシェフを兼務し、昨年はベルリン・フィルにデビューするなど、世界が注目する若きマエストロである。 本番だけでなくリハーサルも暗譜で指揮する驚異の記憶力や伝統にとらわれない斬新な解釈が話題のウルバンスキが、最も日本の聴衆に紹介したいと語っていたのは、祖国ポーランドの音楽。ルトスワフスキはその筆頭で、昨年も管弦楽のための協奏曲を取り上げた。今回の交響曲第4番は、作曲ター・グライムズ》から、人間たちにメッセージを送る海の情景をつなげた「4つの海の間奏曲」(約15分のミニ交響曲)。そして尾高が繰り返し取り上げ、日本中にこの曲の素晴らしさを知らしめたと言っていいエルガーの交響曲第1番。情に流され過ぎることがない、堅牢で威厳に満ちたカテドラルを思わせる尾高のエルガーは、完全に手の内へ入った領域にあり、未体験の方にはぜひ聴いていただきたい1曲だ。 ハーディングやメッツマッハーほか多彩な指揮者とサウンドを作り上げてきた、新日本フィルの演奏にも期待大!者最晩年の傑作。鬼才のタクトが冴えることだろう。そのほかスメタナの連作交響詩「わが祖国」より前半3曲を演奏。09年の東響との初共演時に「新世界」交響曲で成功を収めるなど、彼は東欧音楽を得意とする。 ドヴォルザークのチェロ協奏曲ではタチアナ・ヴァシリエヴァが独奏を務める。ロストロポーヴィチ・コンクール優勝後、国際的に活躍し、現在は、ロイヤル・コンセルトヘボウ管の首席奏者も務める。音楽家としての幅をますます広げつつある彼女の演奏も大いに楽しみだ。尾高忠明 ©Martin Richardsonクシシュトフ・ウルバンスキ ©Fred Jonny

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