eぶらあぼ 2015.5月号
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43ホールAで満喫するオーケストラの“パシオン” 東京の有料公演は、東京国際フォーラム内とよみうりホールの8ヵ所が会場となる。なかでも5000人を収容するホールAでは、3日間フルにオーケストラを楽しめる。今年メインで登場するオーケストラは、ワルシャワを本拠地とするシンフォニア・ヴァルソヴィアとLFJ初登場のドイツの老舗楽団、デュッセルドルフ交響楽団だ。指揮は若手の二人。今後の活躍が大いに期待されているロベルト・トレヴィーノが前者を、新進気鋭のアジス・ショハキモフが後者を3日間振り続ける。 初日の5月2日は朝イチで「0歳からのコンサート」(公演番号111)。演目はなんとベルリオーズの幻想交響曲(抜粋版)。男の恋心が生んだ激しい妄想劇の音楽だが、大迫力のオーケストラが家族連れのテンションを上げてくれそうだ。同曲はこの日の最終公演(116)でも全曲しっかり堪能できる。大人の道ならぬ恋を描いたドヴォルザークの最高傑作、交響詩「野鳩」(112)や、 プッチーニやヴェルディの有名オペラ・アリアが取り上げられる「ル・ク・ド・クール(ハート直撃コンサート)」(114)も胸を熱くしてくれるに違いない。 2日目の5月3日は協奏曲が充実。ボリス・ベレゾフスキーがラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(214)を、オーギュスタン・デュメイがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を(213)、そして日本の人気若手ピアニスト・小林愛実がショパンのピアノ協奏曲第1番(215)を披露する。夜はぜひともバッハの傑作「ヨハネ受難曲」を(216)。巨匠ミシェル・コルボ率いるローザンヌ声楽・器楽アンサンブルが深い感動を与えてくれることだろう。 最終日の4日は、デジュー・ラーンキ一家3人による、バッハの3台のピアノのための協奏曲に注目したい(315)。コンチェルト・ブダペストとの端正なアンサンブルに期待が高まる。そして最後は5000人で迎える大団円「パシオンの饗宴」(316)で締めくくろう。2010年のショパン・コンクールの優勝者、ユリアンナ・アヴデーエワによるグリーグのピアノ協奏曲や、マルケスのダンソン第2番で大いに盛り上がること請け合いだ。充実の古楽アンサンブル、「受難」&「熱情」の聴き比べ、新音楽体験も! 今年は優れた古楽アンサンブルの公演が充実している。イタリアのラ・ヴェネクシアーナによるルネサンスの歌曲(226)や、カルロス・メナのカウンターテナーの美声とリチェルカール・コンソートによるヴィヴァルディの宗教曲(141)はぜひともチェックしたい。歌詞の一つひとつの言葉や音型に命が宿るのを感じられることだろう。また、エストニアの合唱団ヴォックス・クラマンティスの澄み切ったハーモニーが、リストの「十字架への道」を聴かせる(126、322)。彼らのアンサンブルを聴くと、耳が洗練されていくような感覚を覚える。 同じ作品を、違う楽器編成や違う奏者で味わうことができるのもLFJならではの楽しみだ。今年はイエス・キリストの受難の物語を扱ったハイドンの「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」をケラー弦楽四重奏団による弦楽四重奏版(173)、ジャン=クロード・ペヌティエのピアノ版(252)などで聴くことができる。また、ベートーヴェンの「熱情」ソナタをアンドレイ・コロベイニコフ、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、児玉麻里、シャニ・ディリュカの4人のピアニストが取り上げる。3日間でこれだけ「熱情」を聴き比べできる機会はまたとないだろう。 今年は、とびきりクールでノリノリの室内楽を聴かせてくれるSPARKの公演にも飛び込もう(171、272)! 弦楽器やピアノに加え、リコーダーや鍵盤ハーモニカなど親しみのある楽器で、まさかの華麗なテクニックが炸裂する。今回日本のファンを獲得するに違いないドイツのグループだ。また、ギターが独特の哀愁を響かせるポルトガルの民族歌謡ファドをベースに、官能的で美しい歌声を聴かせるアントニオ・ザンブージョのコンサート(274、374)も、きっと新しい音楽体験を与えてくれるだろう。 宗教的な祈り、恋いこがれる想い、生命力みなぎる躍動――音楽を通じてさまざまな形の「パシオン」を発見するゴールデンウィーク。あなたの胸には、どんなパシオンの光が灯るだろうか。5/2(土)~5/4(月・祝) 東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町エリア 問 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭事務局03-5221-9100 http://www.lfj.jp東京・金沢・びわ湖・新潟4つのLFJガイド 2015文: 飯田有抄
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