eぶらあぼ 2015.4月号
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80王子ホール G Lounge #20 波多野睦美、バルバラを歌うシャンソンの“ことば”を伝える文:宮本 明4/17(金)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター  03-3567-9990 http://www.ojihall.jp 古楽からスタートして、現代音楽などでも広くその美しく澄んだ歌声を聴かせている波多野睦美。『波多野睦美、バルバラを歌う』と題したコンサートではフランスのシャンソンに挑む。 バルバラ(1930~97)はフランスの伝説的なシャンソン歌手。ユダヤ人の一家に生まれ、ナチ占領下のフランスを転々と逃亡、父親との複雑な関係にも苦しみながら1970~80年代のシャンソン界に君臨した女王だ。絶筆となった自伝『一台の黒いピアノ…』は日本でも出版されているので、事前に目を通しておくとコンサートがより楽しめるのでは。 バルバラの歌のほとんどは自身の作詞作曲だ。特にその歌詞の文学的価値は高く評価されていて、歌詞単独で詩歌作品としても出版されているほど。シャンソンはことばがいのち。音楽をジャンルの垣根で分けて考えることが無意味なことをいつも教えてくれる波多野だが、この企画には少し迷いもあったのだとか。しかし、音楽作品はもちろん、最近ではナレーションの分野でもダイレクトに「ことば」と取り組んでいる彼女。バルバラの美しいことばからも、多様な情感を引き出してくれるはず。今回の歌詞は、新たにおこした日本語訳(藤本優子訳)。バンドネオンに北村聡、ピアノ・編曲に山田武彦と腕利きの共演陣を迎え、注目の演出家・田尾下哲が構成・演出を担当しているのも興味津々。聴き手を春の宵の銀座へ誘ってくれる。波多野睦美 ©河野俊之アナと室内楽の名手たち ~チュマチェンコ女史とともに世代を超えての“奏でる”喜び文:笹田和人4/27(月)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp アナ・チュマチェンコと言えば、ソロや室内楽で秀演を重ねて来た名ヴァイオリニストであり、今や楽壇の未来を担う第一線の奏者たちを次々に世に送り出して来た名教師でもある。その芸術に魅了され、その温かな人柄を慕う室内楽の名手たちが、開館20周年を迎えた紀尾井ホールに集結。彼女を囲んで、親密で上質なアンサンブルを紡ぎ上げる。 イタリア・パドヴァでウクライナ人の両親のもとに生まれ、レオポルド・アウアーの高弟だった父親から、ヴァイオリンの手ほどきを受けたチュマチェンコ。ヨーゼフ・シゲティやユーディ・メニューインらの薫陶を受け、カール・フレッシュ・コンクールを制したのをはじめ、数々の登竜門で実績を残した。 ソリストのほか、ミュンヘン弦楽トリオのメンバーとしても活躍。1990年からはミュンヘン音楽・演劇大学の教授に就任。ユリア・フィッシャーやアラベラ・美歩・シュタインバッハ―、玉井菜採ら一線で活躍するヴァイオリニストを育て上げ、エリザベート王妃国際音楽コンクールなどの審査員も務めている。 “アナと名手たち”のステージでは、まず菊池洋子(ピアノ)や鈴木学(ヴィオラ)、中木健二(チェロ)と共に、モーツァルトのピアノ四重奏曲第2番を。そして、鈴木と中木に、池松宏(コントラバス)、齋藤雄介(クラリネット)、福士マリ子(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)が加わり、ベートーヴェンの七重奏曲を披露する。美しい音色と緻密なアンサンブルのみならず、“奏でる喜び”も存分に味わえよう。アナ・チュマチェンコ菊池洋子 ©Marco Borggreve鈴木 学中木健二 ©Mirco Magliocca池松 宏

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