eぶらあぼ 2015.4月号
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70ミハイル・プレトニョフ ©上野隆文ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団絆を深めた名コンビがおくる、感動の冒険物語文:柴田克彦アリス=紗良・オット(ピアノ)さらなる進化をとげるアリスを聴く文:飯田有抄第862回 オーチャード定期演奏会 4/19(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第863回 サントリー定期シリーズ 4/20(月)19:00 サントリーホール第93回 東京オペラシティ定期シリーズ4/22(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス  03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp5/19(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演5/11(月) iichiko総合文化センターグランシアタ、5/13(水) いずみホール、5/14(木) 東京文化会館、5/16(土) 所沢市民文化センターミューズ アークホール、5/17(日) 軽井沢大賀ホール、5/20(水) 前橋市民文化会館、5/23(土)びわ湖ホール、5/24(日) 霧島国際音楽ホール みやまコンセール、5/25(月) 佐賀市文化会館※全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.japanarts.co.jp 清々しい「朝」、烈しい「山の魔王の宮殿にて」、切ない「ソルヴェイグの歌」…。これらは何度も耳にしながら、5幕の劇付随音楽全体を生で聴く機会などまずないのが、グリーグの「ペール・ギュント」。だが4月の東京フィル定期でそれが叶う。態勢も万全。ミハイル・プレトニョフの指揮に、ソルヴェイグ&ペール スタイリッシュに、闊達に、自由に。アリス=紗良・オットのピアニストとしての活動は、デビュー以来着実に輝きを増している。昨年はフランチェスコ・トリスターノとのデュオで、バレエ・リュス役の歌手(ベリト・ゾルセット、大久保光哉)と新国立劇場合唱団が加わり、人気俳優の石丸幹二が語りを務める。 名ピアニストにしてロシア・ナショナル管を率いる名指揮者プレトニョフと、東京フィルの相性は抜群。2003年以来定期的に共演を重ね、幾多の名演を披露してきた。その演奏は、引き締まっていてドラマティック。東京フィルの俊敏な対応と相まって、常に耳を惹き付ける。それあって彼は4月から同フィルの特別客演指揮者に就任。本演目で就任初公演&新シーズンの開幕を飾る。しかも定期シリーズ3会場の全てで演奏するのだから、意気込みも半端ではない。 プレトニョフは、ボリショイ・オペラの日本公演で、迫真の《スペードの女王》を聴かせ、昨年10月の東京フィルとのをテーマとしたアルバム『スキャンダル』をリリースし、世界中に鮮烈な印象を刻み付けたアリスだが、今年のリサイタルのプログラムからは、自身の原点を見つめ、深化させ、さらなる驚きをファンに与えようと目論んでいるかのような、静かな意気込みを感じさせる。 幕開けに選曲したのはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」だ。2010年に「ワルトシュタイン」を含むソナタ・アルバムをリリースし、きめ細かく活き活きとしたベートーヴェン解釈を示したアリス。激しさとロマンティシズムに満ちた「テンペスト」には、どんな勢いとドラマを与えるのだろうか。続く作品はJ.S.バッハの「幻想曲とフーガ」だ。意味ありげなアルペジオにいざなわれ、素早く音型が動き続けるフーガを、アリスの芯のある細やかなタッチが技巧的に描き出してくれるだろう。そして同じくバッハによる「シャコンヌ」(ブゾーニ編)へとつなぐ。後半は得意のリストだ。名曲「愛の夢」は第2番と第3番を。そしてパガニーニ大練習曲で締めくくる。第3番「ラ・カンパネラ」はデビューアルバムの最終曲に置いた作品だ。全6曲の流れの中で聴くライヴで、あらためてアリスの成長ぶりを実感できるに違いない。共演では、スクリャービンの交響曲第1番(声楽付きの6楽章の大作)で構築性の高さを示すなど、長尺ものも巧い。イプセン作の物語「ペール・ギュント」は「伝説の放蕩児ペールが、様々な土地を渡り歩き、次々と娘に恋をし、財を成しても詐欺や難破に遭う。しかし清純なソルヴェイグはけなげに帰りを待つ…」といった波瀾万丈の冒険譚。その展開も楽しみだし、進行に即して聴けば周知の曲も耳新しいに違いない。あらゆる点で期待が膨らむ公演だ。©Marie Staggat/DG

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