eぶらあぼ 2015.4月号
203/219

246Catch Up4/16(木)~4/18(土) 東京芸術劇場プレイハウス ※公演・ワークショップの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 http://www.geigeki.jpDrumming 1998 ©Herman Sorgeloos池田扶美代 ©Akihiro Nakamura まるで伝説のように、その作品を観た感動が繰り返し語り継がれる特別な作品がある。ベルギーを代表するローザスの『ドラミング』もそんなマスターピースのひとつだ。1998年の初演以来、シンプルにして強靱、そして豊穣な本作は世界中で演じられてきた。日本では2001年以来の公演となる。ローザスの創設メンバーである池田扶美代は、この作品にクリエイションから関わっている。成長しつづける作品 「約30年間にわたるローザスの歴史の中で、これはひとつの区切りとなる作品、踊り継ぐべき作品としてローザスのツアー演目になっています。私は今回踊る若いダンサー達に作品を忠実に教える一方で、いまのダンサーの身体に合ったものにしていきたい。本質的な部分は変わりませんが、作品もまた成長し続けるものですからね」 本作では12人のダンサーがめまぐるしく入れ替わって踊る。制御の利いたダンスが、しだいに抑制を越えたドライブ感を生み出していくのが魅力だ。 作品タイトルはミニマル音楽の巨匠スティーヴ・ライヒの同名曲から。ローザスの作品にはやはりライヒの曲を使ったものもあり、縁が深い。巨匠ライヒの音楽 「ライヒの曲を分析すると、非常に数学的です。この作品を作った頃の私達は黄金律などに興味があり、ピタリとはまった。本作でもダンサーが1人、2人、3人、5人、8人…と登場するようにフィボナッチ数列(巻き貝の曲線など自然界に潜んでいる数列)を取りこんだりしていますしね(笑)」 ライヒも本作を高く評価しており、あるインタビューでは「曲の通りに展開するのではなく、ときに曲から離れてダンスを自由に楽しみ、また曲に寄り添ってくる…… それはこの曲の構造そのものだ」と語っていたという。本作は深い意味で「音楽の視覚化」が成功した作品ともいえるだろう。 今回の公演は今の観客にどんなアピールをするのだろう。 「一見カオス(混沌)に見えることの中に、美しい法則性がある…… というと難しそうですが、たとえば渋谷の交差点であれだけの数の人々がぶつかりもせずすれ違って渡っていきますよね。そこにも『混沌と法則性』は見いだせる。そうした私達の日常にある様々な感覚の美しさを見て欲しいですね」ワークショップも企画 今回は公演と関連して、『ドラミング』のフレーズを使ったワークショップも企画されているとか。かなり厳しそうだが…… 「フレーズは短いものですし、『螺旋に沿って歩く』など、ダンス未経験者にこそ受けてもらいたいクラスもありますから。怖がらないで参加してください(笑)!」 実は今回、池田はこの作品を初めて「客席から観る」ことになるそうだ。 「なぜなら初演以来、私はずっと出演者だったから。この20年間、怪我で交代、ということは一度もなかったんです。今回は、みっちり教え込んだ若い世代に任せます。照明も美しいらしいので、今から観るのが楽しみです(笑)」ローザス『ドラミング』池田扶美代、ローザスを語る美しい法則性をまとった、ダンスによる音楽の視覚化取材・文:乗越たかお(作家・ヤサぐれ舞踊評論家)Interview

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