eぶらあぼ 2015.3月号
73/211
70完全版『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』スクリーンで甦る絶頂期のカラスの名唱文:東端哲也ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲全曲演奏会2014-2018古典四重奏団 ショスタコーヴィチの自画像Ⅱ20世紀の大作曲家の素顔に迫る文:林 昌英3/21(土・祝)~ 渋谷・シネマライズ、3/28(土)~ 名古屋・名演小劇場4/18(土)~福岡・中洲大洋映画劇場、5/9(土)~大阪・テアトル梅田問 樂画会(がくがかい)チケットデスク0120-954-618 http://callas1958.com3/15(日)15:00 松明堂音楽ホール(発売中)6/17(水)19:15 近江楽堂(東京オペラシティ3F) 4/8(水)発売問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 http://www.gregorio.jp/qc 53歳の早すぎる死から37年を経てもなお、オペラ・ファンの心を捉えて離さない不世出のソプラノ、マリア・カラス。2014年も、正規のスタジオ録音盤全てのリマスター販売や日本単独で代表的名盤のSACD盤リリースなどの新企画が話題を呼び、その人気が未だ健在であることを示したが、今年はあの伝説のパリ・オペラ座ライブが、全国主要都市のスクリーンで上映される。 実に世界初の劇場公開となる本作は、1958年にカラスが満を持してパリ・デビューを飾ったガラ・コンサートの模様を、序曲演奏なども含めて完全収録したもの。前半はベッリーニの《ノ 弦楽四重奏という形態の限界を追求し続ける古典四重奏団が、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏全15曲の高ルマ》やヴェルディの《イル・トロヴァトーレ》、ロッシーニの《セビリャの理髪師》など、彼女が得意とするアリアが盛り沢山の鉄板プログラム。そして後半には最高の当たり役として各国の歌劇場で絶賛されていたプッチーニの《トスカ》から、ドラマティックな第2幕を名バリトンのティト・ゴッビらの豪華共演で舞台上演したものが登場。つまりこれは、伝説のディーヴァ最盛期の10年間が凝縮された、歌と演技の峰に挑む『ショスタコーヴィチの自画像』シリーズ。2014年から18年まで、毎年番号順に3曲ずつ丹念に取り組むことで20世紀の大作曲家の素顔に迫ろうというプロジェクトで、第2回の今年は第4番~第6番を取り上げる。 今回の3曲は作曲者43歳~50歳の時期の作品で、情感豊かな旋律にユダヤ音楽の響きが絡む第4番、シンフォニックで劇的な大作の第5番、アルカイックで清澄な美しさが際立つ第6番と、各曲個性的な名品ぞろい。いずれも古典的な枠組みを持ち、最後はモレンド(だんだん遅く、消え入るように)の指示で静かに終わるという共通点がある。また、3曲セットの流れも面白く、明朗なニ長調で始まる第4番から緊張全てを現代に伝える極めて貴重な映像に他ならない。しかも客席にはブリジット・バルドーやイブ・モンタン、そしてチャーリー・チャップリンら錚々たるセレブが列席。カラスが身につけるヴァン・クリーフ&アーペル提供のネックレスや、当時のガルニエ宮を飾っていた初代の天上画「夜と朝の女神たち」など思わぬ見どころも満載。映画館でゴージャスなオペラ体験ができる夢のひとときを!感あふれる第5番を経ることで、第6番の最後にたどりつくト長調の和音はより深く感動的に響くはず。 古典四重奏団といえば、どんな複雑な作品でも暗譜で演奏することで知られるが、その高い集中力で、隙のないアンサンブル、完璧なハーモニーを実現し、作品の本質をつかみ出していく。20世紀作品も驚異的な水準の演奏で成功を収めてきた彼らは、過去にもショスタコーヴィチ作品をとりあげているが、本シリーズは5年もの時間をかけて演奏会を毎年2回ずつ行い、全曲CDも完成させる予定で、その意気込みは推して知るべし。室内楽とショスタコーヴィチを愛好する人であれば、その場に立ち会わない手はない。マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ ©ina©F.Fujimoto
元のページ