eぶらあぼ 2015.3月号
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68紀尾井 明日への扉 8 牧野葵美(ヴィオラ)3/23(月)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp牧野葵きみ美(ヴィオラ)“歌うように弾く”ことが今回の挑戦です取材・文:宮本 明Interview 紀尾井ホールの新進演奏家シリーズ『明日への扉』にヴィオラ奏者の牧野葵美が登場する。大阪出身。3歳からヴァイオリンを学び、大学卒業と同時に、高校時代から並行して弾いていたヴィオラに転向した。 「相愛(高校・大学)のオーケストラでは、ヴァイオリン専攻生は全員ヴィオラも弾くことになっていて、学校のヴィオラを借りて始めました。それまでに知っていた交響曲が今までと違う視点で見えて、とても興味深く感じました」 その後ジュネーヴ高等音楽院で今井信子に学び、現在はマンチェスターのノーザン音楽大学でガース・ノックスに師事しながら活躍の場を広げている。 「大阪で開かれたヴィオラスペースで信子先生に出会い、絶対にこの先生だ、いま行かなければ後悔すると直感しました。スイスとイギリスとでは、学校の様子も生活もずいぶんと違いますね。マンチェスターのほうが授業の出席も厳しくて、日本の学校のイメージに近いです。ジュネーヴはかなり自由で、生徒はみな自分のしたいことを自分勝手にやっていました。挨拶も、ジュネーヴでは頬と頬を合わせてキスするフランス式で、たとえば相手のシャンプーや香水の匂いだとか、たばこの好きな人、コーヒーをいつも飲んでいる人がすぐわかります。イギリスでは握手なので、ちょっと物足りなく感じるときもあります」 リサイタルではフランク・ブリッジとブリテンの近現代英国作品、コンクールの課題曲だった細川俊夫の「哀歌」、そしてシューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」、ジンバリスト「サラサーテアーナ」を弾く。ピアノの共演は有吉亮治。 「聴く人がヴィオラの新しい魅力を発見できるような、そしてまた私自身も若い今だからこそ挑戦できる、少し変わったプログラムにしようと思いました。器楽奏者にとって、“声で歌うように弾く”ことは、最も難しいことのひとつだと思います。それぞれの歌をどうやって一本のヴィオラで表現できるかが私の今回のリサイタルでの挑戦です」 紀尾井ホールは、2012年の東京国際ヴィオラコンクールで第3位に入賞した、彼女にとって特別な場所だ。 「留学を決めた頃は、そのあとすぐにオーケストラ奏者になるのだと思い込んでいました。それが紀尾井ホールでソロ・リサイタルの機会をいただけるなんて夢にも思っていませんでした。これからも未来は予想できませんが、自分の可能性を低く見積もることなく、また極端に高く見積もって虚勢をはることなく、等身大の自分を見失わずに活動できたら理想的です」3/17(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 170 佐藤淳一(サクソフォン)サクソフォンの魅力をトータルに引き出す文:江藤光紀©Shigeto Imura 頼もしい若手が現れた。クラシックにおけるサクソフォンはまだまだ未開拓の領野を残しているが、佐藤淳一はこのフロンティアに大胆に挑んでいる。演奏はもちろんのこと、ベリオに焦点を当てたリサイタル・シリーズの企画や、それと平行した論文で東京芸大の博士号も取得。教育・執筆などの啓蒙活動も行い、まさに楽器の魅力をトータルに引き出すことに尽力しているのだ。 東京オペラシティ『B→C』シリーズでも、佐藤はサクソフォンの多面性を映したプログラムを提示している。前半はバッハ(チェロ組曲第2番)、ブラームス(クラリネット・ソナタ第2番)といった古典の編曲ものに、サクソフォンがサウンドトラック(エレクトロニクス:有馬純寿)と絡むアヴァン・ポップの作曲家フェルドハウスの「ザ・ガーデン・オブ・ラブ」を挟む。後半はブリテン(オウィディウスによる6つの変容)、ベリオ(セクエンツァⅦb)、そして佐藤が日本初演したブーレーズ「二重の影の対話」サクソフォン版と近現代の大家が並ぶ。ソプラノ、アルト、バリトンと3種類のサクソフォンを持ち変える、凝縮されたリサイタルになりそうだ。

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