eぶらあぼ 2015.3月号
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61キット・アームストロング(ピアノ) ブレンデルが絶賛する希有な才能文:高坂はる香ムジカ・レアーレ(室内楽アンサンブル) 名門のエッセンスが詰まった美しき楽の音文:柴田克彦浜離宮ピアノ・セレクション ̶気鋭の『今』を聴く̶キット・アームストロング ピアノ・リサイタル3/5(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp4/27(月)19:00、4/30(木)13:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu “大変な才能らしい”という噂をあちこちで耳にするキット・アームストロング、日本初となるソロリサイタルがもうすぐ行われる。 13歳からの師であるアルフレッド・ブレンデルが「これまでに出会った中でも最も偉大な才能の持ち主」と絶賛する新鋭だ。ロサンゼルスで生まれ、カーティス音楽院とロンドン王立音楽院で学んだアームストロングは、現在22歳。作曲も手がけ、また音楽以外に数学の学位も持つという。 彼の卓越したセンスと知性は、プログラムからも見て取ることができる。前半は、バッハのオルガン曲である「コラール前奏曲」と「パルティータ第6番」の間に、自らの作曲による「バッハの名による幻想曲」を挟み、複数の視線をもってバッハの音楽に迫る。自身が作曲家であり演奏家であるという二面性を認識したうえでのアプローチは、聴く者に新しいバッハの姿を見せてくれる ロイヤル・コンセルトヘボウ管の、柔らかくブレンドされた芳醇な響きは、つとに名高い。それは、他の一流どころも叶わぬ、唯一無二の至福をもたらしてくれる。そしてその根底にあるのは、精妙な室内楽の如きアンサンブル力だ。「ムジカ・レアーレ」は、同楽団の現役メンバーで構成する室内楽企画。世界屈指の名門の精髄ともいえるアンサンブルである。 同グループは2006年に創設。イタリアのモンタルチーノで室内楽音楽祭を成功させ、高い評価を得た。大きな特徴は、曲目に応じて楽員の中から自在に演奏者を選び出し、質の高い演奏と幅広いレパートリーを実現している点。今回は、首席奏者を含むヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、クラリネットの7名が集い、波木井賢(首席ヴィオラ)、内藤淳子(ヴァイオリン)も参加する。なかでもチェロは人気ソリストのタチアナ・ヴァシリエヴァ。2014年から首席奏者に就任した彼女の存在が、ハイレベルの証明かもしれない。 後半はリスト「2つの伝説」から「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」、超絶技巧練習曲集より第10番、メフィスト・ワルツ第1番、バッハ「幻想曲とフーガ」のリスト編曲版という、これも深い思惑のありそうな選曲。一連の流れで、リストがバッハを敬愛していたこと、また両者の間にある優れた類似性を提示したい考えがあるそうだ。 恩師ブレンデルから学んだのは、音楽に向かう上での哲学だという。知性でもある。 演目も実に多彩。今回の来日では2つのプログラムを用意。フルート四重奏とクラリネット五重奏。前者はドヴィエンヌ(4/27)&フェスカ(4/30)という仏独の古典派作品が一般ファンに貴重な体験を与え、後者はウェーバー(4/27)&モーツァルト(4/30)の名作が耳を喜ばせる。各プログラム後半は派であるが、音楽づくりは自由でのびのびとしているし、圧倒的な技巧と繊細な表現力の持ち主でもある。この機会に、生の演奏を聴いておきたいピアニストだ。弦楽五重奏。ボヘミア風味が琴線を刺激するドヴォルザーク、同ジャンルの最高峰シューベルトの大作共に聴き応え十分だ。さらに1日目は、シュルホフによるフルート、ヴィオラ、コントラバスの珍しい三重奏もある。 ここはひとつ、最高級のアンサンブルが贈る極上の愉悦に、たっぷりと浸ろう!©Jason Alden©Seth Carnill

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