eぶらあぼ 2015.3月号
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42ジェラール・コルステン(指揮) 読売日本交響楽団芳醇な薫りただよう、匠の技文:山崎浩太郎オーケストラ・アンサンブル金沢 東京公演不屈のシェフが紡ぐ渾身のサウンド文:笹田和人第546回 定期演奏会3/27(金)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp第31回 東京定期公演3/24(火)19:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960第363回 定期公演フィルハーモニー・シリーズ3/20(金) 19:00 石川県立音楽堂コンサートホール問 石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632 http://www.oek.jp 指揮者のジェラール・コルステンは南アフリカ生まれで、もとはヴァイオリニストで、カメラータ・ザルツブルクやヨーロッパ室内管弦楽団のコンサートマスターを歴任したひとである。指揮者としても、1999年から2005年までイタリアのカリアリの歌劇場の音楽監督をつとめるなど、すでに20年近いキャリアをもっている。コンサートマスターから指揮者に転じた音楽家というと、シャルル・ミュンシュやネヴィル・マリナーが先達としているが、コルステンの場合は、歌劇場での活動に重点をおいてきたことに特徴がある。モーツァルトやシューベルト、ドニゼッティなど19世紀前半までの作品を得意とする一方で、カリアリでは《エジプトのヘレナ》のイタリア初演を指揮するなど、R.シュトラウス作品への愛着も強く、レパートリーは幅広い。 読売日本交響楽団とは08年に初めて客演、続いて11年に細君のソプラノ歌手エヴァ・メイとともに再登場、その 今年のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)は、きっと、ひと味もふた味も違うはず。2013年に創立25周年という節目を迎えたOEKが、音楽監督の井上道義に率いられ、31回目となる東京定期公演に臨む(3/20には金沢で同プログラムの演奏会あり)。その井上は昨年10月、咽頭がんの治療から見事に復帰を果たしたばかり。そんな不屈のシェフと共に、四半世紀の時間をかけて磨き上げたハーモニーを披露する今回のステージ。いつにも増して、渾身のサウンドを紡ぎ上げる。 1988年に故・岩城宏之を初代音楽監督に、石川県と金沢市によって創設されたOEKは、多くの外国人奏者を擁する日本初の室内プロ・オーケストラ。地元・北陸にとどまらず、東名阪でも定期公演を行い、“歴戦”の音楽ファンをもうならせてきた。岩城の遺志を受け継いだ井上のもとでも、独創的なプログラミングやCD録音を活発化させる伴奏指揮を見事につとめて喝采を浴びた。今回の定期は、コルステンが愛するモーツァルトの歌劇《劇場支配人》序曲と交響曲第41番「ジュピター」、そしてR.シュトラウスの「英雄の生涯」からなる。じつは、このプログラム、11年3月14日に今回と同じサントリーホールで予定されていた演奏会と、まったく同じ演目となっている。つまり、その3日前におきた東日本大震災のために中止を余儀なくされた公演が、4年ぶりに実現するのだ。その意味をかみしめながら聴いてみたい。など、さらに先鋭的な演奏活動で、わが国の楽壇での存在感を増している。 今回メインに据えたのは、シューベルトの大作「グレイト」。井上のダイナミックな指揮ぶりと音楽創りが、いかにも相応しい。冒頭には、エストニアの名匠ペルトの作品の中でも、特に人気の高い「フラトレス」を置いた。元は古楽アンサンブルのために1977年に書き下ろされた本作は、後に様々な編成のためにもアレンジされている。今回はヴァイオリン・ソロと弦楽合奏、打楽器のための版(1992)で、繊細な響きを楽しむ。日本が誇る“ベートーヴェン弾き”である仲道郁代を迎えてのピアノ協奏曲第4番にも大いに期待したい。ジェラール・コルステン ©Marco Borgrreve井上道義仲道郁代 ©Kiyotaka Saito
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