eぶらあぼ 2015.3月号
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40エサ=ペッカ・サロネン(指揮) フィルハーモニア管弦楽団3/4(水)19:00、3/6(金)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp3/8(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh共演ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン) 3/4,3/8イェフィム・ブロンフマン(ピアノ) 3/6他公演3/1(日) 兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、3/3(火) 愛知県芸術劇場コンサートホール(中京テレビ事業チケットセンター052-320-9933)、3/5(木) 川口リリアホール(048-254-9900)、3/7(土) 東京芸術劇場コンサートホール(0570-010-296)※公演によりプログラムとソリストは異なります。 フィンランドの名匠エサ=ペッカ・サロネンが、首席指揮者を務めるイギリスの名門フィルハーモニア管弦楽団を率いて来日し、交響曲第2番や第5番などシベリウスを軸としたプログラムを披露する。 かつては自国を代表する作曲家の存在について「圧迫感を感じていた」と吐露する。 「彼のどんな音符を見ても息が詰まり、私の音楽家としての可能性を締め付けるような感じもしました。そこで、“シベリウスのない国”に行こうと、イタリアへ留学し、平和な心持ちで(笑)、勉強に没頭していました」 そんなある日、ミラノの骨董市で、何気なくシベリウスの交響曲第7番の古いポケットスコアを手に入れる。 「帰りのバスでそのスコアを見ていると、その時初めて、シベリウスが用いる和声や、語りの手法を“楽しい”と感じました」 では、サロネンはシベリウスを今はどのように捉えているのだろうか。 「彼はフィンランドの民族性を熟知した優れた作曲家というのみならず、世界に通用する存在なのです。彼の傑作は、フィンランド出身者に限らず、過去を含めた他国の偉大な芸術家たちの感性を通した名演奏によって、広く世界へ通用する、更なる傑作へと変容を遂げてゆく。そのことを再発見したのです。今思えば、いったん自身の伝統的な要素から離れ、遠くから見直すという段階が必要だったのかもしれません。自国の伝統を自由に“選ぶ”ことができれば、それで良いのです」受け継がれる“フィルハーモニア・スピリット” フィルハーモニア管というオーケストラについては「考え方がオープンで柔軟。一方で、音楽性の芯と言える“音”、いわゆる『フィルハーモニア・スピリット』が幾つもの世代を超えて受け継がれています。これがどのようになされてきたのか、実に不思議ですね。この楽団には、そんな音の個性が、しっかり根づいています」と太鼓判を押す。 来日公演では、ヴァイオリンのヒラリー・ハーンを迎えてブラームス、ピアノのイェフィム・ブロンフマンと共にチャイコフスキーの第1番、2つの名協奏曲も披露する。 「何度も共演し、心から尊敬できる2人。ツアーをご一緒できるのは、心地よく、まさに夢のようです」 指揮と作曲の両輪で活躍の幅をさらに広げている。 「周囲の人たちと音楽を作ることが、今、とても楽しいです。この充実感は、以前より増してきています。経験の持つ意味は、大きいですね。冷静な優しさを持ち、そして笑顔で、共同作業に取り組む。そうすることで、自分自身も大きな喜びを得られるのです。指揮者として、その姿勢を保っていきたいです。また作曲家としても、本当に幸福です。この充実感を失わずに、さらに集中して今後10年のうちに、ぜひ自分の最高傑作と呼べる作品を仕上げたいですね」エサ=ペッカ・サロネン ©Katja Tähjäヒラリー・ハーン ©Mathias Bothor/DGイェフィム・ブロンフマン ©Dario Acostaエサ=ペッカ・サロネン(指揮)海外に出てはじめてシベリウスの偉大な独創性を発見したのです構成・文:寺西 肇Interview
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