eぶらあぼ 2015.3月号
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33マックス・ポンマー(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団花開くバッハへの愛と美学文:オヤマダアツシマレク・ヤノフスキ(指揮) ベルリン放送交響楽団今回はさらに“一歩踏み込んだ”選曲で文:江藤光紀#538定期演奏会 3/27(金)19:15、3/28(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp第90回 多摩定期 3/29(日)15:00 パルテノン多摩問 チケットパルテノン042-376-8181 http://www.parthenon.or.jp3/16(月)19:00、3/18(水)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演3/15(日)ハーモニーホールふくい(0776-38-8282)、3/20(金)静岡グランシップ(054-289-9000)、3/21(土・祝)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、3/22(日)周南市文化会館(0834-22-8787)、3/23(月)・3/24(火)武蔵野市民文化会館(0422-54-2011) 素材の旨さを生かして本質的な味を追求する料理人のよう。そうした最高級の評価を与える聴き手もいるほど日本の音楽シーンでも注目を集めているのが、ドイツのライプツィヒに生まれた79歳のベテラン指揮者、マックス・ポンマーだ。近年に注目された指揮者の中では、チェコ出身のラドミル・エリシュカ同様に「こんなマエストロがいたのか」と驚きをもって迎えられ、その評判は口コミやインターネットで広がってきた。この4月からは札幌交響楽団の首席指揮者に就任し、日本との結びつきが深まるマエストロである。 そのポンマーが新日本フィルの定期演奏会に初登場。取り上げるのは故郷ライプツィヒゆかりの作曲家であるJ.S.バッハの「管弦楽組曲」全4曲だ。20世紀の後半より、小編成の室内アンサンブルもしくは時代楽器オーケストラ 音楽本位で堅実にスコアに向かい、オーケストラから職人気質の芯の通った響きをつかみ出す——ヤノフスキはドイツではかねてから評価の高い指揮者だった。そのサウンドは細部まで彫琢されて引き締まり、流れに無駄がない。その上、音楽が自然に呼吸しているから、コンサートだけではなくオペラも振れる。 そんなヤノフスキの実力が、日本でもようやく知られるようになってきた。登板の機会も増え、至芸の精髄が明らかになりつつある。しかしその全貌を一望したいなら、彼が鍛えてきたオーケストラ、ベルリン放送響との共演を聴くのが近道だ。2002年から始まった“ヤノフスキ時代”にアンサンブルはいっそう鍛えこまれ、その精神はいまや楽団員の血肉となっている。 11年の来日時に披露した、コンパクトにまとまりながらも力強さをうちに秘めたベートーヴェンは、彼らの蜜月を聴くものに実感させた。今回は巨匠の万全な統率のもと、一歩踏み込んだ選曲になっているのが頼もしい。3月16日はブラームスの交響曲第1番を軸に、のフィールドへと引っ越ししてしまった感があるこの作品。オーケストラの定期演奏会で、しかも全4曲が演奏されることは本当に珍しい。ポンマーが醸成してきたバッハへの愛と美学、そしてドイツの伝統を継承する音楽が、新日本フィルと共にどう花開くのか。これはもう時代の証言を体験するような、価値あるコンサートになるのかもしれない。第2番におけるフルート・ソロを演奏するのは首席奏者の白尾彰。単独で頻繁に演奏される「アリア」(エア/通称「G線上のアリア」)が、第3番の中の1曲となってどう聞こえるのかも興味深い。ウェーバー《オベロン》序曲とシベリウスのヴァイオリン協奏曲が並ぶ。フランク・ペーター・ツィンマーマンもキレのいい独奏を聴かせてくれるはずだ。 18日はブルックナーの交響曲第8番。誰しもが納得するブルックナーを創るのは、本当に難しい。そこには経験に裏打ちされた合理的な解釈と、それを実現できる力をもったオーケストラとの緊密な意志疎通、そして長丁場を乗り切る体力や緊張感が必要となるからだ。最高の状態にある両者が、満を持して披露する一本勝負に期待したい。マックス・ポンマーマレク・ヤノフスキ ©Felix Broede

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