eぶらあぼ 2015.3月号
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30 メトロポリタン・オペラの最新公演を映画館で楽しむMETライブビューイングも9年目に入り、ますます好調。シーズン前半の5作は、人気スター、ネトレプコの悪女役が話題を呼んだ《マクベス》に始まり、大御所レヴァインと若手歌手のコラボが至福の音楽を作り出した現地のシーズンオープニング演目《フィガロの結婚》、そして《カルメン》《セヴィリャの理髪師》《ニュルンベルクのマイスタージンガー》と名作が続いた。これまた人気作の《メリー・ウィドウ》で幕を開ける後半の5作(2本立てを1作と数えた場合)は、定番に加えて冒険的な演目も登場。オペラファンの好みを押さえつつ“今”のテイストも取り入れるMETらしい公演が目白押しだ。《ホフマン物語》以外はすべて新制作(うちMET初演が2作!)と、フレッシュなプロダクションにいち早く触れられるのも嬉しい。 後半トップバッターの《メリー・ウィドウ》(2月)で、ヒロインを歌うのはMETの名花、フレミング。演出を手がけるストローマンはトニー賞を5度も受賞しているミュージカル界の大物。そんな彼はフレミングを「微笑むと瞳が輝く」と彼女の華やかさを絶賛している。ブロードウェイの人気スター、オハラも加わるゴージャスなキャスティングで、プロダクションも大がかりで華やか。 3月から4月にかけて配信される2本立ては、愛の光と影を描く対照的な2本だ。これがMET初演という《イオランタ》は、キャラクターも音楽もピュアで美しいチャイコフスキーのメルヘン・オペラ。盲目の王女が愛を知り光をとりもどす、というストーリー。本作の復活に貢献した指揮者ゲルギエフとネトレプコのゴールデン・コンビが体験できるのは幸運だ。対して《青話題作が続々登場、トップ歌手たちの饗宴も話題文:加藤浩子ひげ公の城》は、男女の心の奥底に迫った衝撃的な作品。輝く剣先のように心に刺さるバルトークの音楽を、最適のキャストが熱唱する。ヒッチコックに影響を受けたというトレリンスキの演出も見逃せない。 シーズン最後を飾るのは、イタリア・オペラの傑作2本立て《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》(5月)。大地に生きる男女の剥き出しの情熱を、甘美にして劇的な音楽で描いた名作だ。2作の主役を一度に歌うのはテノール歌手のひとつの夢だが、今回はMETでもおなじみの人気テノール、アルヴァレスが2役に挑む。前シーズンの《マリア・ストゥアルダ》でも絶賛されたマクヴィカーのプロダクションも楽しみだ。 イタリア・オペラといえば、今シーズンを通しての最大の話題のひとつがロッシーニのオペラ・セリア《湖上の美人》のMET初演だろう(4月)。喜劇の作曲家と見られていたロッシーニだが、ここ数十年で作曲家の再評価が進み、「ロッシーニ・ルネッサンス」と呼ばれるまでになった。まさにその象徴のような出来事だからだ。しかも歌手が凄い! フローレス、ディドナート、バルチェッローナら今を時めくロッシーニ歌手が総出演。ロッシーニの申し子マリオッティの指揮とともに繰り広げる声の饗宴は、この世を忘れさせてくれるはず。 再演とはいえ何度でも見たいのが、シャー演出の《ホフマン物語》(3月)。フェリーニの映画にヒントを得たというカラフルで幻想的なプロダクションは、現実と夢を行き来する主人公ホフマンの世界そのもの。4月に待望の初来日を果たす、声もヴィジュアルも飛び切りのイタリアン・テノール、グリゴーロの主役も必見だ。METライブビューイング2014-15 後半のみどころMETライブビューイング ※上映情報は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.shochiku.co.jp/met《ホフマン物語》 ©Marty Sohl/Metropolitan Opera

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