eぶらあぼ 2015.3月号
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252英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団『白鳥の湖』『シンデレラ』期待のソリストが魅せる2大名作文:石村紀子『白鳥の湖』4/25(土)~4/27(月) 『シンデレラ』5/1(金)~5/3(日・祝)東京文化会館 問 NBSチケットセンター 03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp『白鳥の湖』5/6(水・休)13:30 愛知県芸術劇場 問 052-241-8118『シンデレラ』5/9(土)14:00 兵庫県立芸術文化センター 問 0798-68-02553/12(木)~3/15(日) 東京芸術劇場シアターイースト 3/28(土)、3/29(日) 世田谷パブリックシアターシアタートラム 問 珍しいキノコ舞踊団090-4844-1515 http://www.strangekinoko.com 4年ぶりの来日となる英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団。英国ロイヤル・バレエ団の姉妹カンパニーである同団は、演劇の国らしく緻密に練られた物語と繊細な心理描写を得意としている。今回上演される『白鳥の湖』と『シンデレラ』も、そうした個性と伝統が随所に感じ取れる作品となっている。 『白鳥の湖』は長らく芸術監督を務めたピーター・ライトの手によるもの。冒頭で父王の葬列の場面を描くことで王子が結婚しなければならない状況を明示したり、従者ベンノを始めとする登場人物の設定に奥行きを与えることで、単なるおとぎ話以上のリアリティある物語に仕上がっている。古典作品としての様式や格を備えた踊りも実に優雅だ。 『シンデレラ』は現芸術監督であり、物語バレエの振付家として定評のあるデヴィッド・ビントリーの演出・振付。この版では亡き母の形見という意味付けがなされた「靴」が物語の核となっている。形見の靴を与えられた裸足の物乞いの老女は、実はシンデレラの母の心を宿した仙女であり、その靴に魔法をかけシンデレラを舞踏会へと送り出す。後に王子との愛を結実させる決め手となる靴は母から娘への贈り物だったというわけだ。こうした納得感の高いストーリー展開は英国バレエの大きな魅力。幻想的な衣裳・装置も必見だ。配役での注目はプリンシパルの平田桃子がシンデレラを踊ること。成長著しいソリスト、セリーヌ・ギッテンスの白鳥も見逃せない。珍しいキノコ舞踊団『珍しいキノコ御膳 美味しゅうございます。』何が起こるのかは、当日のお楽しみ文:乗越たかお(作家・ヤサぐれ舞踊評論家) えーっと、なんだろうこれは? というタイトルだが、中身もなかなかのものである。ポップでキュートなダンスが魅力のカンパニーの三本立て公演…。まずは主宰者の伊藤千枝作品(わかる)、そして舞踏の重鎮・大野慶人作品(まあわかる)、そして「バカドリル」「味写」などで知られる天久聖一作品(は?)という意外な組み合わせなのだ。 伊藤によると「舞踏には以前から興味があったけど、大野さんのワークショップが本当に感動的で。自分がいままで探ってきたことを再確認できた」という。彼女たちが外部から振り付けられるのも、大野が他人に振り付けるのも初挑戦なのだとか。 天久は漫画のイメージも強いが、PV制作や演出などもしている。今回は天久が『なんとなく風流』というタイトルの文章を書き、それをもとに伊藤が振付構成するそうだ。じつは大野作品もキノコのメンバーと一緒の創作で、大野自身が『僕は(振付家ではなく)水先案内人だから』と言っているという…… それは結局ぜんぶ伊藤が創っているのでは? 「その面はあります(笑)。ただずっと『大切なことは全て自分の中に持っている』と思ってきた私が、今回お二人との作業を通して、初めて自分やカンパニーの『外側』を意識することができた。大野・天久作品の要素が、私自身の作品にも強く影響を与えているんです」(伊藤) どうやらこれまでと違う要素が満載になりそうな「キノコ御膳」、楽しもうではないか。『白鳥の湖』 Photo:Roy Smiljanic『金色時間、フェスティバルの最中。』 ©片岡陽太『シンデレラ』 Photo:Bill Cooper
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