eぶらあぼ 2015.3月号
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170CDCDCDCDベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番・第16番/クァルテット・エクセルシオアニメッシ~天空の城ラピュタ ほか/ジョバンニ・ミラバッシマエストロ!辻井伸行 with オーケストラ自作集歌うサクバット モンテヴェルディ愛の歌/宮下宣子ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番・第16番クァルテット・エクセルシオ久石譲:君をのせて、人生のメリーゴーランド、風の伝説/菅野よう子:クラッチ、グラヴィティ/大野雄二:炎のたからもの 他ジョバンニ・ミラバッシ(ピアノ)ローラン・ヴェルネレイ(ベース)ピエール・フランソワ・デュフォー(ドラムス)辻井伸行:いま日本は、マエストロ!、川のささやき、神様のカルテ、風の家、いつか王子様が、星に願いを 他山下康介、金聖響、岩村力 (指揮)オーケストラ・アンサンブル金沢新日本フィルハーモニー交響楽団 他モンテヴェルディ:アリアンナの嘆き、私は悲しい、いと甘き苦悩よ、素敵な羊飼い、西風はめぐりて、ニンファの嘆き、死んでしまいたい 他宮下宣子(サクバット)濱田芳通(コルネット)西山まりえ(オルガン)ナミ・レコードWWCC-7771 ¥2500+税日本コロムビアCOCB-54140 ¥2500+税エイベックス・クラシックスAVCL-25864 ¥3000+税OMFKCD-2044 ¥2500+税桐朋学園の同窓生によって1994年に結成されたクァルテット・エクセルシオは、昨年の活動20周年を機に本格的なCD録音を開始した。本作はその第2弾。ベートーヴェンの後期に挑む意気込みは、第12番の第1楽章をはじめ、十分に感じられる。しかし本作の魅力は、これらを難物とせず、親和性をもった美しい音楽として提示したことにあるだろう。第12番は第2楽章の温かな幸福感や第4楽章の豊潤な音色が光るし、第16番は冒頭の応答でことさら声を荒げず、全曲を通して爽快かつ引き締まった演奏が展開される。ベートーヴェン後期の厳しさが苦手な方もご一聴を。(柴田克彦)抒情的な美旋律を伴ったパッショネートな表現で多くのファンを持つイタリア屈指のジャズ・ピアニスト、ジョバンニ・ミラバッシは、一方でジブリをはじめとする日本アニメの熱烈な信者でもある。本作はそんな彼が全編アニソンのカヴァーで作り上げたアルバム。厳しい審美眼で選りすぐられたであろう楽曲が素晴らしいのはもちろんだが、注目すべきは彼が元曲の良さに寄りかかるのではなく、ジャズの本道に則って真摯かつ大胆に素材に対峙している点。その演奏はきわめて美しくはあるが、微塵の安易さもない。親しみ易さと芸術性を見事に共存させた第一級の作品。(藤本史昭)近年は作曲家としても活躍する辻井の自作自演集。表題作や「神様のカルテ」はピアノ・ソロとピアノ&管弦楽の2種類が収録されており、聴き比べができるのも嬉しい。それにしても辻井のピアノは、冒頭の「いま日本は」で顕著なように、澄み切った音色と爽快なフレージングが秀逸だ。ボーナストラックにはハーライン「星に願いを」など、辻井自ら編曲した3つの名曲を収録。シンプルな曲想に優しさや郷愁が程よく滲むのは、彼の人生が充実し、確かな成熟を重ねている証なのかもしれない。演奏、作曲、編曲と、ボーダーレスな才能が存分に発揮されたディスクだ。(渡辺謙太郎)本当に歌っている。まるで、そこに言葉が存在するかのように。国内楽団で初の女性金管楽器奏者として新日本フィルに入団して活躍中の一方、古い金管楽器を駆使した演奏活動にも力を注ぐトロンボーン奏者の宮下宣子。今回はルネサンス・バロック期のトロンボーンの前身・サクバットを使い、マドリガルなどモンテヴェルディの歌の旋律に挑んだ。しなやかなプレイと自在なニュアンス、時にコケティッシュ、時にコミカルで、本当の人の声のよう。そして、実に饒舌だ。濱田のコルネットとの二重奏は、あたかも愛の語らい。西山のオルガンの音色も、2人を月の光のごとく優しく照らす。(寺西 肇)

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