eぶらあぼ 2015.3月号
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166CDCDCDCD永遠のカノン/山岡重治&太田光子シューマン:リーダークライス,女の愛と生涯/セーナ・ユリナッチ平和への祈り~J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲/千住真理子皇帝&戴冠式/辻井伸行&オルフェウス室内管クヴァンツ:2本のリコーダーのための6つのデュエット 作品2(全曲)山岡重治、太田光子(リコーダー)シューマン:歌曲集「リーダークライス」、同「女の愛と生涯」レスピーギ:夕暮れセーナ・ユリナッチ(ソプラノ)フランツ・ホレチェク(ピアノ)バリリ四重奏団J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全6曲)千住真理子(ヴァイオリン)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」モーツァルト: ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」辻井伸行(ピアノ)オルフェウス室内管弦楽団マイスター・ミュージックMH-3040 ¥2816+税TOWER RECORDS/ユニバーサルミュージックPROC-1646 ¥1143+税ユニバーサルミュージックUCCY-1049(2枚組) ¥3500+税エイベックス・クラシックスAVCL-25867 ¥3000+税フリードリヒ大王の下で花開いた「ベルリン楽派」の中心人物で、名フルート奏者のヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ(1697〜1773)。作曲家としても膨大な作品を遺したが、ミニマムな編成ながら多大な演奏効果を上げるとして、「完全な楽曲」と自賛したのが、2本のリコーダーのための二重奏曲集だった。名手・山岡は自作の楽器で、同時期に書かれた名著「フルート奏法試論」も精査し、弟子の太田を伴って緻密にアプローチ。あえて低いフレンチ・ピッチを採用、フィンガリングにも工夫を施し、スコアが秘めたコントラストを浮き彫りに。そして何より、伸びやかな音色に耳奪われる。(寺西 肇)セーナ・ユリナッチ(1921〜2011)は旧ユーゴスラヴィア出身、第二次世界大戦後には長くウィーン国立歌劇場のプリマ・ドンナとして活躍したソプラノ。豊かな音楽性と知性をかねそなえた名歌手だった。メジャー・レーベルとの契約に恵まれなかったために、欧州に比べて日本ではあまり評価されていなかったかもしれない。ライヴを中心にしたオペラの録音は多数残されているが、ドイツ・リートの録音は少ないだけに、シューマンの2つの歌曲集のCD化は嬉しい。なかでも「女の愛と生涯」は、しっとりとした潤いと深みのある歌声で、感情の機微を細やかに表現した、見事なもの。(山崎浩太郎)今年でデビュー40周年を迎えた千住の記念盤第3弾は、20年ぶりとなるバッハの無伴奏作品の新録音。旧盤もモダン楽器ならではの骨太さが高い評価を受けたが、本録音はその後、折に触れてステージで積み重ねた「バッハとの時間」を色濃く反映。がっしりとした構築力はそのままに、隅々まで彫琢を施し、バッハが“暗示”した和声も掬い取って、より深化した快演を聴かせる。そして、作品への愛情と共に、聴き手に強く印象付けるのが、彼女が一弓一弓に込めた「祈り」の気持ち。「心の叫び」と題した、40周年記念第2弾のイザイの無伴奏ソナタのCDとも、木霊のように共鳴してゆく。(笹田和人)辻井伸行の演奏の魅力は、まず音色の美しさにある。あたたかさすら感じる彼の音楽は、ピアノと触れ合うことへの喜びにいつも溢れている。だからといって、決して甘さや感傷に溺れてしまうことはない。基本的に彼の演奏は全体を通してやや速めのテンポ設定であり、流れる様に音楽を紡ぎ出していくのである。その姿勢は、収録曲の優雅だが強い意志を持った性格と非常に相性が良い。「皇帝」は、高音域の響きが特に充実しており、きらめきのある音色を保ちながら、非常に爽やかな雰囲気を演出。「戴冠式」では、作品に潜む陰と陽のコントラストが絶妙である。(長井進之介)

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